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第3章
第445話 ルーデンス王太子vsオフィーリア③
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「これは大お祖母様にいただいたのですわ。
わたくしを酷く心配してくださって……。
まあ、こういうことがないとも限りませんものね。安全な学園内と言えども。」
「お、大お祖母様が……!?」
オフィーリアが大お祖母様と言っているのは、国王の祖母。ルーデンスの曾祖母だ。
国王を早くに亡くしたことで、一時期は政務の大半を握っていた女帝。その殆どを孫であるルーデンスの父親に譲りはしたものの、未だに発言力のある存在だ。
可愛がっていると聞いたことはあるが、まさか王家の影を2人もつけるほどだとは思っていなかったルーデンスは驚いた。
実際には、自分はだいじょうぶなので、自分の護衛と監視をやめて、今はオフィーリア嬢を守ることに専念するよう言われたレンジア──コバルトと、もともとの護衛のマリンがついているのだが。
当然ルーデンスはそのことを知らない。傍流のオフィーリアに王家の影がついていたことにも驚きだが、それが大祖母の影であり、かつ2人ということに驚きを隠せなかった。
『大お祖母さまは、まさか王太子である私よりも、この娘のほうを大切になさっているというのか?降嫁した王女のほうを、先代王よりも可愛がっていらしたとは聞いていたが、その孫娘であるこの娘のことも……?』
ルーデンスはひたすら困惑していた。
傍流の娘であるオフィーリアが、王位につくことなどありえないが、これが息子であればわからなかった。
ルーデンスは自分の立場を脅かす存在として、なおいっそうオフィーリアを激しく憎んだことだろう。
コバルトが暗器で護衛をする中、マリンが床に転がった腕輪を拾って、オフィーリアにこちらを、と差し出した。
「王家所有の隷属の腕輪のようです。」
「隷属の腕輪……。聞いたことがありますわね。本人の意思を無視して、奴隷のように従わせることの出来る腕輪だとか。」
オフィーリアの首であれば、首輪にでも出来そうなくらい太くて大きい銀色の腕輪は、飾り細工の施された美しい姿で、一見そんな恐ろしい効果を持つ物だとはわからない。
葉と花のような模様の先に、実がなったかのように、ところどころに真珠らしきものと何がしかの宝石が埋め込まれている。
こんな風に無理やりはめようとされたのでなければ、知らない女性であれば、受け取って自らその腕にはめてしまうであろう。
だが王太子との婚約を断るほど、元婚約者であるアレックスを愛しているオフィーリアは、決して王太子からの贈り物を受け取らないだろうと、ルーデンスは考えた。
その結果、無理やり腕を掴んで、はめてしまおうという短絡的な行動に出たのだった。
オフィーリア1人であったのなら、男の力にかなわず、そうすることが出来たあろう。
だがオフィーリアには王家の影がついていた。ルーデンス同様、ルカリア学園に王宮を通じて許可を取っている筈だ。
王族と言えども、ルカリア学園に護衛の入校は禁じられている。護衛をつけられない生徒たちが、恐れをなして近付けず、学園内の空気が悪いものになる、というのが理由だ。
だが王家の影は全員隠密のスキルを所持しており、姿を隠すだけでなく、その気配も、少しも気取られずに存在することが出来る。
それゆえ代々王家の影だけは、王族の護衛としてルカリア学園に連れて来ることが可能となっている。ただし連れて来るには、学園側の許可が必要となる。
わざわざ学園に言わなくとも、姿を現さなければ気付かれることはないが、万が一姿を表すことになった場合、学園側の対処が遅れる為、というのがその理由だ。
連れて来るのがわかっていれば、教師たちが動揺することなく、王家の影が姿を現さなくてはならないほどの事態が起きても、冷静に対処することが可能だからだ。
つまり大祖母が、オフィーリアの為に、学園に許可を求めたことになる。
ルーデンスは、自分にはいつもそっけない大祖母の表情を思い出していた。
「国宝をこのように持ち出して、わたくしに害をなそうとなさっていらしたのですね。
見損ないましたわ、ルーデンス殿下。」
冷淡にそう告げるオフィーリアに、ルーデンスは苛立ちをつのらせた。証拠の国宝を取られてしまったことも、こちらの意図をオフィーリアに掴まれたことにも。
そう指摘されたルーデンスが、もはやいつものように微笑むことも出来ずに、眉間にシワを寄せる。貴族令嬢1人ものの数ではないとして、いつもの配下候補の貴族令息たちを連れて来なかったのは失敗だった。
いや、連れて来ていたとて、王家の影が2人もいては、力では叶わなかっただろうが、少なくとも証拠の腕輪をむざむざと取られてしまうことはなかったかも知れない。
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わたくしを酷く心配してくださって……。
まあ、こういうことがないとも限りませんものね。安全な学園内と言えども。」
「お、大お祖母様が……!?」
オフィーリアが大お祖母様と言っているのは、国王の祖母。ルーデンスの曾祖母だ。
国王を早くに亡くしたことで、一時期は政務の大半を握っていた女帝。その殆どを孫であるルーデンスの父親に譲りはしたものの、未だに発言力のある存在だ。
可愛がっていると聞いたことはあるが、まさか王家の影を2人もつけるほどだとは思っていなかったルーデンスは驚いた。
実際には、自分はだいじょうぶなので、自分の護衛と監視をやめて、今はオフィーリア嬢を守ることに専念するよう言われたレンジア──コバルトと、もともとの護衛のマリンがついているのだが。
当然ルーデンスはそのことを知らない。傍流のオフィーリアに王家の影がついていたことにも驚きだが、それが大祖母の影であり、かつ2人ということに驚きを隠せなかった。
『大お祖母さまは、まさか王太子である私よりも、この娘のほうを大切になさっているというのか?降嫁した王女のほうを、先代王よりも可愛がっていらしたとは聞いていたが、その孫娘であるこの娘のことも……?』
ルーデンスはひたすら困惑していた。
傍流の娘であるオフィーリアが、王位につくことなどありえないが、これが息子であればわからなかった。
ルーデンスは自分の立場を脅かす存在として、なおいっそうオフィーリアを激しく憎んだことだろう。
コバルトが暗器で護衛をする中、マリンが床に転がった腕輪を拾って、オフィーリアにこちらを、と差し出した。
「王家所有の隷属の腕輪のようです。」
「隷属の腕輪……。聞いたことがありますわね。本人の意思を無視して、奴隷のように従わせることの出来る腕輪だとか。」
オフィーリアの首であれば、首輪にでも出来そうなくらい太くて大きい銀色の腕輪は、飾り細工の施された美しい姿で、一見そんな恐ろしい効果を持つ物だとはわからない。
葉と花のような模様の先に、実がなったかのように、ところどころに真珠らしきものと何がしかの宝石が埋め込まれている。
こんな風に無理やりはめようとされたのでなければ、知らない女性であれば、受け取って自らその腕にはめてしまうであろう。
だが王太子との婚約を断るほど、元婚約者であるアレックスを愛しているオフィーリアは、決して王太子からの贈り物を受け取らないだろうと、ルーデンスは考えた。
その結果、無理やり腕を掴んで、はめてしまおうという短絡的な行動に出たのだった。
オフィーリア1人であったのなら、男の力にかなわず、そうすることが出来たあろう。
だがオフィーリアには王家の影がついていた。ルーデンス同様、ルカリア学園に王宮を通じて許可を取っている筈だ。
王族と言えども、ルカリア学園に護衛の入校は禁じられている。護衛をつけられない生徒たちが、恐れをなして近付けず、学園内の空気が悪いものになる、というのが理由だ。
だが王家の影は全員隠密のスキルを所持しており、姿を隠すだけでなく、その気配も、少しも気取られずに存在することが出来る。
それゆえ代々王家の影だけは、王族の護衛としてルカリア学園に連れて来ることが可能となっている。ただし連れて来るには、学園側の許可が必要となる。
わざわざ学園に言わなくとも、姿を現さなければ気付かれることはないが、万が一姿を表すことになった場合、学園側の対処が遅れる為、というのがその理由だ。
連れて来るのがわかっていれば、教師たちが動揺することなく、王家の影が姿を現さなくてはならないほどの事態が起きても、冷静に対処することが可能だからだ。
つまり大祖母が、オフィーリアの為に、学園に許可を求めたことになる。
ルーデンスは、自分にはいつもそっけない大祖母の表情を思い出していた。
「国宝をこのように持ち出して、わたくしに害をなそうとなさっていらしたのですね。
見損ないましたわ、ルーデンス殿下。」
冷淡にそう告げるオフィーリアに、ルーデンスは苛立ちをつのらせた。証拠の国宝を取られてしまったことも、こちらの意図をオフィーリアに掴まれたことにも。
そう指摘されたルーデンスが、もはやいつものように微笑むことも出来ずに、眉間にシワを寄せる。貴族令嬢1人ものの数ではないとして、いつもの配下候補の貴族令息たちを連れて来なかったのは失敗だった。
いや、連れて来ていたとて、王家の影が2人もいては、力では叶わなかっただろうが、少なくとも証拠の腕輪をむざむざと取られてしまうことはなかったかも知れない。
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