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第3章
第405話 秘密を話していい相手
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「神さまに……言われた?」
「封印方法を勇者と聖女以外に本来知らせることはない。知ってしまったお前たちは、話してよい相手を決めさせてもらうとね。」
僕がちらりと、お酒によって眠ってしまっているバウアーさんと、僕の傍らでちびちびとお酒を飲んでいるレンジアを気にしていると、エリクソンさんがニコリと笑う。
「防音の魔法を使用しているから、今私が話していることは、あなたと私にしか聞こえていないわ。他の人たちのことは気にしなくてもだいじょうぶよ。」
「防音の魔法を、範囲魔法でなく、単体にかけられるんですか!?」
防音の魔法は、本来部屋全体とか、範囲を決めて発動させるものだと教わったのに。
「だてに魔塔の賢者をしていないわ。これは上位魔法にあたるのだけれど、対象者を指定して発動させることが可能なのよ。」
「それって、王家の影で使える人がいたら、重宝しそうですね……。」
僕はレンジアを横目で見ながら言う。
「使える人もいるんじゃないかしら?隠密が使えない王家の影もいると聞くし。
隠密の使えない人は、得てして何かしらの魔法が使える傾向にあるとされているわ。」
「そういう人は、潜入が難しい代わりに、潜入した隠密使いからの情報を、防音の魔法を使って受け取って、報告に行ったりするとかそういう使い方をするんでしょうか。」
「おそらくね。私も詳しくはわからないけれど、いてもおかしくはないわね。商談とか密談に使う魔法だもの。開発の経緯も、各国の王族からの要望によるものだそうだから。」
なるほど……。聞かれちゃ困る話をたくさんしているんだろうなあ。
「僕にそのことを話したということは、僕がその対象だったということでしょうか?」
勇者さまと聖女さま以外に秘密の話なら、条件を満たしてなければ聞けない話だ。
単体防音魔法を施してまで、どうして僕に話してくれたんだろうか?
「ええ。あなたの持って来たペンダントがキーアイテムなの。パルフェの宿る宝石を持って来る人間がいずれ現れる。その時が来たらその人物には話しても構わない、とね。」
エリクソンさんたちがこの話を知ったのは200年も昔の話だ。その頃から母さまは僕をこの世に生み出そうと、最適な父親を探していたっていうことなんだね。
いつか僕が現れることは、母さまたちからしたら予定されていたことだから、それをエリクソンさんたちに伝えたってことか。
僕のスキルは母さまが直接付与してくれたものだ。その時から、ううん、ひょっとしたらそれよりもだいぶ前から。
時空の海で他人のアイテムボックスに、干渉出来うるようにするつもりだったんだ。
カナンのペンダントを取り出すつもりだったからかは、わからないけど……。
「あなたが、死んだ勇者のアイテムボックスに入っていた筈のものを、どうして手にしているのかは聞かないわ。尋ねないように言われているから。……けど、不思議ね。」
「あ、あはは……。」
誰だって不思議だよね、死んだ人のアイテムボックスに入っていたものは、取り出すことが出来ない。それがこの世界の常識だ。
「アイテムボックスに財産を入れたままにしていると、家族に遺産が渡らないから、病気になったら念の為中身を取り出すのが、アイテムボックス持ちの決まりごとなのにね。」
お酒を飲みながらエリクソンさんが言う。
「それがあなたの力なのか、神の力なのかわからないけれど、あなたはパルフェのペンダントを持って私の前に現れた。」
ど、どっちも、です……。
「だから私は神に指示された通りに、あなたにこの話をした。……まさか本当に、パルフェのペンダントを持つ人が現れるとは、思っていなかったけれどね。」
「200年後に現れるということは、言われていなかったんですか?」
もしもそうなら、そろそろ現れるんじゃないかって、予想していそうだけど。
「そういう具体的なことはなにも。
私はダークエルフだから、長寿の種族ではあるけれど、私が生きているうちに現れない可能性だってあると思っていたもの。」
だけど、とエリクソンさんは、真剣な顔つきになって僕の目を覗き込んでくる。
とっても美人さんだから、僕は思わずドキッとしてしまう。
「あなた以外に魔王の倒し方を話してはいけないとは言われたけれど、パルフェのペンダントの新たな持ち主に、質問をしてはいけないとは、言われてないのよね。」
「そ、そうなんですね。」
何を聞きたいんだろうか。カナンのペンダントの入手方法を聞いてはいけないということは、スキルの秘密についても、あまり触れられないってことだと思うけど。
「あなたひょっとして……。
次代の勇者だったりするの?」
エリクソンさんは、空になったグラスをグイと突き出して、僕にそう尋ねた。
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「封印方法を勇者と聖女以外に本来知らせることはない。知ってしまったお前たちは、話してよい相手を決めさせてもらうとね。」
僕がちらりと、お酒によって眠ってしまっているバウアーさんと、僕の傍らでちびちびとお酒を飲んでいるレンジアを気にしていると、エリクソンさんがニコリと笑う。
「防音の魔法を使用しているから、今私が話していることは、あなたと私にしか聞こえていないわ。他の人たちのことは気にしなくてもだいじょうぶよ。」
「防音の魔法を、範囲魔法でなく、単体にかけられるんですか!?」
防音の魔法は、本来部屋全体とか、範囲を決めて発動させるものだと教わったのに。
「だてに魔塔の賢者をしていないわ。これは上位魔法にあたるのだけれど、対象者を指定して発動させることが可能なのよ。」
「それって、王家の影で使える人がいたら、重宝しそうですね……。」
僕はレンジアを横目で見ながら言う。
「使える人もいるんじゃないかしら?隠密が使えない王家の影もいると聞くし。
隠密の使えない人は、得てして何かしらの魔法が使える傾向にあるとされているわ。」
「そういう人は、潜入が難しい代わりに、潜入した隠密使いからの情報を、防音の魔法を使って受け取って、報告に行ったりするとかそういう使い方をするんでしょうか。」
「おそらくね。私も詳しくはわからないけれど、いてもおかしくはないわね。商談とか密談に使う魔法だもの。開発の経緯も、各国の王族からの要望によるものだそうだから。」
なるほど……。聞かれちゃ困る話をたくさんしているんだろうなあ。
「僕にそのことを話したということは、僕がその対象だったということでしょうか?」
勇者さまと聖女さま以外に秘密の話なら、条件を満たしてなければ聞けない話だ。
単体防音魔法を施してまで、どうして僕に話してくれたんだろうか?
「ええ。あなたの持って来たペンダントがキーアイテムなの。パルフェの宿る宝石を持って来る人間がいずれ現れる。その時が来たらその人物には話しても構わない、とね。」
エリクソンさんたちがこの話を知ったのは200年も昔の話だ。その頃から母さまは僕をこの世に生み出そうと、最適な父親を探していたっていうことなんだね。
いつか僕が現れることは、母さまたちからしたら予定されていたことだから、それをエリクソンさんたちに伝えたってことか。
僕のスキルは母さまが直接付与してくれたものだ。その時から、ううん、ひょっとしたらそれよりもだいぶ前から。
時空の海で他人のアイテムボックスに、干渉出来うるようにするつもりだったんだ。
カナンのペンダントを取り出すつもりだったからかは、わからないけど……。
「あなたが、死んだ勇者のアイテムボックスに入っていた筈のものを、どうして手にしているのかは聞かないわ。尋ねないように言われているから。……けど、不思議ね。」
「あ、あはは……。」
誰だって不思議だよね、死んだ人のアイテムボックスに入っていたものは、取り出すことが出来ない。それがこの世界の常識だ。
「アイテムボックスに財産を入れたままにしていると、家族に遺産が渡らないから、病気になったら念の為中身を取り出すのが、アイテムボックス持ちの決まりごとなのにね。」
お酒を飲みながらエリクソンさんが言う。
「それがあなたの力なのか、神の力なのかわからないけれど、あなたはパルフェのペンダントを持って私の前に現れた。」
ど、どっちも、です……。
「だから私は神に指示された通りに、あなたにこの話をした。……まさか本当に、パルフェのペンダントを持つ人が現れるとは、思っていなかったけれどね。」
「200年後に現れるということは、言われていなかったんですか?」
もしもそうなら、そろそろ現れるんじゃないかって、予想していそうだけど。
「そういう具体的なことはなにも。
私はダークエルフだから、長寿の種族ではあるけれど、私が生きているうちに現れない可能性だってあると思っていたもの。」
だけど、とエリクソンさんは、真剣な顔つきになって僕の目を覗き込んでくる。
とっても美人さんだから、僕は思わずドキッとしてしまう。
「あなた以外に魔王の倒し方を話してはいけないとは言われたけれど、パルフェのペンダントの新たな持ち主に、質問をしてはいけないとは、言われてないのよね。」
「そ、そうなんですね。」
何を聞きたいんだろうか。カナンのペンダントの入手方法を聞いてはいけないということは、スキルの秘密についても、あまり触れられないってことだと思うけど。
「あなたひょっとして……。
次代の勇者だったりするの?」
エリクソンさんは、空になったグラスをグイと突き出して、僕にそう尋ねた。
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