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第2章

第331話 次世代への期待

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「ただまあ、仮の姿なのでな。及ぼせる範囲は極せまいものにはなる。キリカのように、神界で力を使いつつ、その情報を仮の姿で話すだけなのとはわけがちがうのだ。」

 レスタト兄さまが教えてくれる。
 そっか、キリカはあちらの世界で力を行使して、それを人造人間を介して説明してくれているだけ、ってことなんだね。

 というか、認識阻害魔法が使えるのであれば、兄さまたちの服装は別に気にしなくてもだいじょうぶそうだね。

「それでも助かります。僕は今現在、追われている立場なので……。」
「アレックスに牙を剥く人間なんて、いっそ滅ぼしちゃえば早いんじゃない?」

「えええっ!?マルグス兄さま!?」
 以前に念話した時にも思ったことだけど、神さまたちは人間根絶やし賛成な感じがするのが気になるんだよね……。

「兄さまたちは、人間を守護なさっているのではないのですか?」
「──正しくは人間も、だね。あくまでも守護しているもののひとつに過ぎないよ。」

「生き物が色んな姿に別れていった中で、個別に祝福を授けた生き物がいて、そのうちのひとつである人間が、今の姿になったと言うだけの話だな。別に特別な存在じゃない。」

「そうですわね。世界全体で見れば人間などほんの一部。全体を見渡した際に世界を破壊する存在となりうるのであれば、人間自体を排除する方向も考えなくてはなりません。」

 スローン兄さまの言葉に、ガレシア兄さまとミボルフィア姉さまが同調する。
「魔王を抑えるために、勇者と聖女を派遣しているのだって同じ理屈というわけだな。」

「魔族と魔物だけが暮らしやすい世界を、魔王が作ろうとしているから……ですね?」
「その通りよ。それは世界を壊そうとする働きであるからということね。」

 レスタト兄さまの言葉に、僕が念を押して確認をすると、エリシア姉さまがそれに補足する形で応えてくれる。

「同じことを人間がするようであれば、魔族側を守護している神が、同様の動きをするであろうな。だがあまりに魔王は執拗だ。」
 ディダ姉さまが腕組みしながら言う。

「はい、何度も繰り返し、人間の世界に攻め入って来ています。そのたびに勇者と聖女が返り討ちにしてきた歴史がありますね。」

「だからこそ動きを封じ込められる可能性のある人間という生き物に、手を貸しているに過ぎない。彼らが世界にとって害であるとみなせば、我らはすぐにでも背を向けよう。」

 ガレシア兄さまの言葉に、僕は思わずツバを飲み込んだ。兄さまたちは決して、人間の味方というわけではないんだよね。

「でも……。僕は半分人間です。兄さまや姉さまたちが、人間を嫌っているようにも聞こえて、なんだかとても寂しいですね……。」
 僕は思わずションボリした。

「そ、そんなことはないぞ!?」
「そうだ、我が弟と同じ種族を嫌う筈もなかろう!単に目に余る者が多いというだけのことだ!」

「だからこそ母さまが、お前という存在をわざわざ生み出してまで、人間が生き残る為の手助けをしているのだからな!」

 そう言って、僕の機嫌を取ろうとしてくるけど、母さまは確かにそうなんだろうけど、兄さまや姉さまたちは、僕以外の人間のことが、あんまり好きじゃないんだろうなあ……。

「でも、人間がいなくなったら、兄さまや姉さまたちの力の糧となる、信仰心を持った生き物が一斉にいなくなりますよ?」

「しばらくはそうだろうな。だがまたすぐに新しく別の生き物がそうなることだろう。」
「別の生き物って……?」

「今はまだ数が少ないが、魚人族も獣人族も竜人族もいる。このたびドラゴンたちもそうなったではないか。彼らが増えれば、人の子がいなくなったとて変わらぬのだよ。」

「……人間がいなくなっても、神は困らないということなのですね……。」
 だったらこれは、僕に託された人間に対する最終判断なのかも知れないな。

 僕の責任重大だよ。もっと人間のいいところを、みんなに知ってもらうようにしないとな。本気でいらないと思われかねないよ。

「それよりも、我らは次世代に期待しておるのだ。そのほうが安定した世界になると考えておる。」
「次世代?未来の子どもたちですか?」

「そうだ。神は1代限りの子しかなせぬが、アレックス、お前は違う。」
「僕の、子ども……!?」

「お前の子どもたちは神の力を引き継いで生まれる可能性が高いのだ。
 その子、孫、と、神に近い人間が生まれれば、それは今までの人間とは異なる種族。」

「僕みたいな子どもが生まれることを、兄さま姉さまたちは期待されているのですか?」
「私たちと直接やり取りの出来る人間が、たくさん生まれることになるでしょうね。」

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