331 / 535
第2章
第331話 次世代への期待
しおりを挟む
「ただまあ、仮の姿なのでな。及ぼせる範囲は極せまいものにはなる。キリカのように、神界で力を使いつつ、その情報を仮の姿で話すだけなのとはわけがちがうのだ。」
レスタト兄さまが教えてくれる。
そっか、キリカはあちらの世界で力を行使して、それを人造人間を介して説明してくれているだけ、ってことなんだね。
というか、認識阻害魔法が使えるのであれば、兄さまたちの服装は別に気にしなくてもだいじょうぶそうだね。
「それでも助かります。僕は今現在、追われている立場なので……。」
「アレックスに牙を剥く人間なんて、いっそ滅ぼしちゃえば早いんじゃない?」
「えええっ!?マルグス兄さま!?」
以前に念話した時にも思ったことだけど、神さまたちは人間根絶やし賛成な感じがするのが気になるんだよね……。
「兄さまたちは、人間を守護なさっているのではないのですか?」
「──正しくは人間も、だね。あくまでも守護しているもののひとつに過ぎないよ。」
「生き物が色んな姿に別れていった中で、個別に祝福を授けた生き物がいて、そのうちのひとつである人間が、今の姿になったと言うだけの話だな。別に特別な存在じゃない。」
「そうですわね。世界全体で見れば人間などほんの一部。全体を見渡した際に世界を破壊する存在となりうるのであれば、人間自体を排除する方向も考えなくてはなりません。」
スローン兄さまの言葉に、ガレシア兄さまとミボルフィア姉さまが同調する。
「魔王を抑えるために、勇者と聖女を派遣しているのだって同じ理屈というわけだな。」
「魔族と魔物だけが暮らしやすい世界を、魔王が作ろうとしているから……ですね?」
「その通りよ。それは世界を壊そうとする働きであるからということね。」
レスタト兄さまの言葉に、僕が念を押して確認をすると、エリシア姉さまがそれに補足する形で応えてくれる。
「同じことを人間がするようであれば、魔族側を守護している神が、同様の動きをするであろうな。だがあまりに魔王は執拗だ。」
ディダ姉さまが腕組みしながら言う。
「はい、何度も繰り返し、人間の世界に攻め入って来ています。そのたびに勇者と聖女が返り討ちにしてきた歴史がありますね。」
「だからこそ動きを封じ込められる可能性のある人間という生き物に、手を貸しているに過ぎない。彼らが世界にとって害であるとみなせば、我らはすぐにでも背を向けよう。」
ガレシア兄さまの言葉に、僕は思わずツバを飲み込んだ。兄さまたちは決して、人間の味方というわけではないんだよね。
「でも……。僕は半分人間です。兄さまや姉さまたちが、人間を嫌っているようにも聞こえて、なんだかとても寂しいですね……。」
僕は思わずションボリした。
「そ、そんなことはないぞ!?」
「そうだ、我が弟と同じ種族を嫌う筈もなかろう!単に目に余る者が多いというだけのことだ!」
「だからこそ母さまが、お前という存在をわざわざ生み出してまで、人間が生き残る為の手助けをしているのだからな!」
そう言って、僕の機嫌を取ろうとしてくるけど、母さまは確かにそうなんだろうけど、兄さまや姉さまたちは、僕以外の人間のことが、あんまり好きじゃないんだろうなあ……。
「でも、人間がいなくなったら、兄さまや姉さまたちの力の糧となる、信仰心を持った生き物が一斉にいなくなりますよ?」
「しばらくはそうだろうな。だがまたすぐに新しく別の生き物がそうなることだろう。」
「別の生き物って……?」
「今はまだ数が少ないが、魚人族も獣人族も竜人族もいる。このたびドラゴンたちもそうなったではないか。彼らが増えれば、人の子がいなくなったとて変わらぬのだよ。」
「……人間がいなくなっても、神は困らないということなのですね……。」
だったらこれは、僕に託された人間に対する最終判断なのかも知れないな。
僕の責任重大だよ。もっと人間のいいところを、みんなに知ってもらうようにしないとな。本気でいらないと思われかねないよ。
「それよりも、我らは次世代に期待しておるのだ。そのほうが安定した世界になると考えておる。」
「次世代?未来の子どもたちですか?」
「そうだ。神は1代限りの子しかなせぬが、アレックス、お前は違う。」
「僕の、子ども……!?」
「お前の子どもたちは神の力を引き継いで生まれる可能性が高いのだ。
その子、孫、と、神に近い人間が生まれれば、それは今までの人間とは異なる種族。」
「僕みたいな子どもが生まれることを、兄さま姉さまたちは期待されているのですか?」
「私たちと直接やり取りの出来る人間が、たくさん生まれることになるでしょうね。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
レスタト兄さまが教えてくれる。
そっか、キリカはあちらの世界で力を行使して、それを人造人間を介して説明してくれているだけ、ってことなんだね。
というか、認識阻害魔法が使えるのであれば、兄さまたちの服装は別に気にしなくてもだいじょうぶそうだね。
「それでも助かります。僕は今現在、追われている立場なので……。」
「アレックスに牙を剥く人間なんて、いっそ滅ぼしちゃえば早いんじゃない?」
「えええっ!?マルグス兄さま!?」
以前に念話した時にも思ったことだけど、神さまたちは人間根絶やし賛成な感じがするのが気になるんだよね……。
「兄さまたちは、人間を守護なさっているのではないのですか?」
「──正しくは人間も、だね。あくまでも守護しているもののひとつに過ぎないよ。」
「生き物が色んな姿に別れていった中で、個別に祝福を授けた生き物がいて、そのうちのひとつである人間が、今の姿になったと言うだけの話だな。別に特別な存在じゃない。」
「そうですわね。世界全体で見れば人間などほんの一部。全体を見渡した際に世界を破壊する存在となりうるのであれば、人間自体を排除する方向も考えなくてはなりません。」
スローン兄さまの言葉に、ガレシア兄さまとミボルフィア姉さまが同調する。
「魔王を抑えるために、勇者と聖女を派遣しているのだって同じ理屈というわけだな。」
「魔族と魔物だけが暮らしやすい世界を、魔王が作ろうとしているから……ですね?」
「その通りよ。それは世界を壊そうとする働きであるからということね。」
レスタト兄さまの言葉に、僕が念を押して確認をすると、エリシア姉さまがそれに補足する形で応えてくれる。
「同じことを人間がするようであれば、魔族側を守護している神が、同様の動きをするであろうな。だがあまりに魔王は執拗だ。」
ディダ姉さまが腕組みしながら言う。
「はい、何度も繰り返し、人間の世界に攻め入って来ています。そのたびに勇者と聖女が返り討ちにしてきた歴史がありますね。」
「だからこそ動きを封じ込められる可能性のある人間という生き物に、手を貸しているに過ぎない。彼らが世界にとって害であるとみなせば、我らはすぐにでも背を向けよう。」
ガレシア兄さまの言葉に、僕は思わずツバを飲み込んだ。兄さまたちは決して、人間の味方というわけではないんだよね。
「でも……。僕は半分人間です。兄さまや姉さまたちが、人間を嫌っているようにも聞こえて、なんだかとても寂しいですね……。」
僕は思わずションボリした。
「そ、そんなことはないぞ!?」
「そうだ、我が弟と同じ種族を嫌う筈もなかろう!単に目に余る者が多いというだけのことだ!」
「だからこそ母さまが、お前という存在をわざわざ生み出してまで、人間が生き残る為の手助けをしているのだからな!」
そう言って、僕の機嫌を取ろうとしてくるけど、母さまは確かにそうなんだろうけど、兄さまや姉さまたちは、僕以外の人間のことが、あんまり好きじゃないんだろうなあ……。
「でも、人間がいなくなったら、兄さまや姉さまたちの力の糧となる、信仰心を持った生き物が一斉にいなくなりますよ?」
「しばらくはそうだろうな。だがまたすぐに新しく別の生き物がそうなることだろう。」
「別の生き物って……?」
「今はまだ数が少ないが、魚人族も獣人族も竜人族もいる。このたびドラゴンたちもそうなったではないか。彼らが増えれば、人の子がいなくなったとて変わらぬのだよ。」
「……人間がいなくなっても、神は困らないということなのですね……。」
だったらこれは、僕に託された人間に対する最終判断なのかも知れないな。
僕の責任重大だよ。もっと人間のいいところを、みんなに知ってもらうようにしないとな。本気でいらないと思われかねないよ。
「それよりも、我らは次世代に期待しておるのだ。そのほうが安定した世界になると考えておる。」
「次世代?未来の子どもたちですか?」
「そうだ。神は1代限りの子しかなせぬが、アレックス、お前は違う。」
「僕の、子ども……!?」
「お前の子どもたちは神の力を引き継いで生まれる可能性が高いのだ。
その子、孫、と、神に近い人間が生まれれば、それは今までの人間とは異なる種族。」
「僕みたいな子どもが生まれることを、兄さま姉さまたちは期待されているのですか?」
「私たちと直接やり取りの出来る人間が、たくさん生まれることになるでしょうね。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
346
お気に入りに追加
2,071
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる