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第2章
第295話 “選ばれしもの”の訪問・その1
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これは……、いったいどういうのことなのでしょうか?国全体が、聖なる加護に包まれているなど、まるで中央聖教会です。」
「わかりません……。ですが、これではまるでどちらが聖地かわかりませんね。
中央聖教会は、建物だけが加護に守られていますが、国全体となると……。」
「まったくです……。一般の人間にはこのシールドは見えませんが、聖魔法の使い手には分かりましょう。」
「その気になれば占い師にも分かるかと。
祝福を授けるつもりで参りましたが、まさかこんなことになっていたとは。」
中央聖教会の所持する巨大な船の上から、エザリス王国の現在を推し量っていた“選ばれしもの”たちは驚愕していた。
この地は神託の地であり、聖なる波動を“選ばれしもの”全員が感知したといっても、それは遠い土地でのこと。
近付けばまた違った結果がもたらされるのではないかと、船に乗り合わせた“選ばれしもの”以外の全員が思っていた。
悪魔召喚に関わった穢れた土地に足を踏み入ることを、誰もが逡巡していたのだ。“選ばれしもの”に改めて判定することを求め、エザリス王国に船を近付けようとはしなかった。
力を持たぬ者であればそれもやむなしと、エザリス王国の聖なる波動を見極めようという話になったのだったが、見極めるまでもない事実が“選ばれしもの”たちを待っていた。
判定可能な程度に船を近付けるよう、なんとか船員たちを説得し、船が近付くにつれ、その存在は明確なものとして威圧してきた。
“選ばれしもの”たちには分かる。
ここは中央聖教会のある国など比ではない程の聖域であると。中央聖教会のシールドは、冒険者ギルドの闘技場の巨大なものだ。
はり直しを行わずとも、その巨大なシールドを保てているのは、“選ばれしもの”が住まう聖域に対する加護によるものだ。
Sランクの魔物までなら防ぐことが出来るが、逆にそれ以上となると防ぐことが出来ない。災厄級の魔物が出た場合、決して安全な場所であるとは言えないのである。
だがエザリス王国のシールドは、Cランク以下を切り捨てる代わりに、それ以上をすべて防ぐことが出来ることがわかった。
真に国家に危険に及んだ場合、どちらが安全な場所であるのかなど、火を見るよりも明らかだ。ここは既に聖域なのだ。
「これが知られた場合、たくさんの人がこの国に押し寄せることでしょうね。」
「魔物は防げても、人の波は防げぬことでそょう。エザリス王国は狙われるやも……。」
「正式に聖域であることを公言いたしましょう。不敬の輩は不用意に近付かなくなりましょう。ですが、荒くれ者はそうはいきますまい。それを排除するだけの国力が、果たして今のエザリス王国にあるものでしょうか。」
「そこは見極めねばなりませんが……。この国にはおそらく“ななつをすべしもの”がおりましょう。“ななつをすべしもの”が魔王討伐に向かうまでは、おそらくは安全かと。」
安全であることを船員たちに告げ、船はようやくエザリス王国に接岸した。その途端、待ち切れずに上がる歓声。明るい笑顔でエザリス王国の国民たちが出迎えてくれる。
「どうぞ。エザリス王国へようこそ。」
幼い少女たちが、オズオズと“選ばれしもの”に花を差し出してくる。
「ありがとう。キレイな花ですね。」
笑顔でそう言うと、少女たちはニコッと幸せそうな笑みを浮かべたのだった。
用意された馬車に分乗し、エザリス王国の視察を兼ねて国内を見聞しつつ、王宮へと向かう。通る土地の人々はみな笑顔だった。
「とても……、よい国ですね。」
「ええ、悲壮感などまるでありません。
本当にここは、失われた大地として、国交を断絶された国なのでしょうか。」
「この国の人々は、本当に敬虔な信者であったのですね。アジャリべさまの加護を強く受けているのでしょう。信心なくして心安らかに過ごすことなど無理でしょうから。」
「ええ。神はこの地を見守っていてくださったのでしょう。やはり2000年前のことは神罰であった。当時の国王たちの判断は間違っていたのです。一刻も早く広めねば。」
その時だった。“選ばれしもの”全員が聖なる波動を強く感じ、ハッとする。
「すみません、馬車を止めてください。」
“選ばれしもの”全員が馬車から降りると、聖なる波動を感じた場所──川へと駆け寄って行く。水面は美しくきらめき、そこから水を引いている作物も立派に育っていた。
川べりにしゃがみこみ、手のひらで川の水をすくう。触れ慣れた感触。水とはほんの少し違う、聖職者にしか感じ取れないなにか。
「これは……、いったいどういうのことなのでしょうか?国全体が、聖なる加護に包まれているなど、まるで中央聖教会です。」
「わかりません……。ですが、これではまるでどちらが聖地かわかりませんね。
中央聖教会は、建物だけが加護に守られていますが、国全体となると……。」
「まったくです……。一般の人間にはこのシールドは見えませんが、聖魔法の使い手には分かりましょう。」
「その気になれば占い師にも分かるかと。
祝福を授けるつもりで参りましたが、まさかこんなことになっていたとは。」
中央聖教会の所持する巨大な船の上から、エザリス王国の現在を推し量っていた“選ばれしもの”たちは驚愕していた。
この地は神託の地であり、聖なる波動を“選ばれしもの”全員が感知したといっても、それは遠い土地でのこと。
近付けばまた違った結果がもたらされるのではないかと、船に乗り合わせた“選ばれしもの”以外の全員が思っていた。
悪魔召喚に関わった穢れた土地に足を踏み入ることを、誰もが逡巡していたのだ。“選ばれしもの”に改めて判定することを求め、エザリス王国に船を近付けようとはしなかった。
力を持たぬ者であればそれもやむなしと、エザリス王国の聖なる波動を見極めようという話になったのだったが、見極めるまでもない事実が“選ばれしもの”たちを待っていた。
判定可能な程度に船を近付けるよう、なんとか船員たちを説得し、船が近付くにつれ、その存在は明確なものとして威圧してきた。
“選ばれしもの”たちには分かる。
ここは中央聖教会のある国など比ではない程の聖域であると。中央聖教会のシールドは、冒険者ギルドの闘技場の巨大なものだ。
はり直しを行わずとも、その巨大なシールドを保てているのは、“選ばれしもの”が住まう聖域に対する加護によるものだ。
Sランクの魔物までなら防ぐことが出来るが、逆にそれ以上となると防ぐことが出来ない。災厄級の魔物が出た場合、決して安全な場所であるとは言えないのである。
だがエザリス王国のシールドは、Cランク以下を切り捨てる代わりに、それ以上をすべて防ぐことが出来ることがわかった。
真に国家に危険に及んだ場合、どちらが安全な場所であるのかなど、火を見るよりも明らかだ。ここは既に聖域なのだ。
「これが知られた場合、たくさんの人がこの国に押し寄せることでしょうね。」
「魔物は防げても、人の波は防げぬことでそょう。エザリス王国は狙われるやも……。」
「正式に聖域であることを公言いたしましょう。不敬の輩は不用意に近付かなくなりましょう。ですが、荒くれ者はそうはいきますまい。それを排除するだけの国力が、果たして今のエザリス王国にあるものでしょうか。」
「そこは見極めねばなりませんが……。この国にはおそらく“ななつをすべしもの”がおりましょう。“ななつをすべしもの”が魔王討伐に向かうまでは、おそらくは安全かと。」
安全であることを船員たちに告げ、船はようやくエザリス王国に接岸した。その途端、待ち切れずに上がる歓声。明るい笑顔でエザリス王国の国民たちが出迎えてくれる。
「どうぞ。エザリス王国へようこそ。」
幼い少女たちが、オズオズと“選ばれしもの”に花を差し出してくる。
「ありがとう。キレイな花ですね。」
笑顔でそう言うと、少女たちはニコッと幸せそうな笑みを浮かべたのだった。
用意された馬車に分乗し、エザリス王国の視察を兼ねて国内を見聞しつつ、王宮へと向かう。通る土地の人々はみな笑顔だった。
「とても……、よい国ですね。」
「ええ、悲壮感などまるでありません。
本当にここは、失われた大地として、国交を断絶された国なのでしょうか。」
「この国の人々は、本当に敬虔な信者であったのですね。アジャリべさまの加護を強く受けているのでしょう。信心なくして心安らかに過ごすことなど無理でしょうから。」
「ええ。神はこの地を見守っていてくださったのでしょう。やはり2000年前のことは神罰であった。当時の国王たちの判断は間違っていたのです。一刻も早く広めねば。」
その時だった。“選ばれしもの”全員が聖なる波動を強く感じ、ハッとする。
「すみません、馬車を止めてください。」
“選ばれしもの”全員が馬車から降りると、聖なる波動を感じた場所──川へと駆け寄って行く。水面は美しくきらめき、そこから水を引いている作物も立派に育っていた。
川べりにしゃがみこみ、手のひらで川の水をすくう。触れ慣れた感触。水とはほんの少し違う、聖職者にしか感じ取れないなにか。
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