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第2章

第239話 83番目の扉。農民(収穫物たくさん)。

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「地のものを食して貰いたいと思っての。
 朝採りの山菜やら、川魚を取ってこさせたのじゃ。どうじゃ、なかなかじゃろう?」

 海の魚とは違って、食べたことのない味がした。なんだろう、深みのある感じ?
 高いところにあるから川魚も貴重で、下まで降りて取って来てくれたんだって。

 しっかり味わわなくちゃ。採れたての山菜って美味しいんだなあ……!僕これ凄い好きかも!そう思っていたら、叔父さんがほら、と小さな深皿に入ったそれを渡してくれる。

「なんにゃ?アレックスはその小鉢の山菜が好きなのにゃ?ならアタシのもあげるにゃ!
 たくさん食べるといいにや!」

「ではそれがしも。」
「じゃあ僕も!」
「僕のもぉ、良かったらぁ、どうぞぉ。」
「あ、ありがとうございます……。」

 僕のオゼンからはみ出る程の山菜たち。
 僕、そんなに顔に出てた?
 ──恥ずかしい!!
 僕は真っ赤になりながらそれを食べた。

 でも、みんなのせっかくの好意だし、既にオゼンに乗せられた後でいらないと返すのも失礼だし、なにより食べたかったし……。
 隣のルルゥさんにクスリと笑われた。

「アレックスは、本当に嬉しそうに食べるのにゃー。あげがいがあるにゃー。」
「ほうそんなにか。ならわしのもやろう。」
「ク、クローディアさまのはさすがに!」

「なんじゃ、わしの施しは受けれんと申すのか?おのこが遠慮するものではないわ。」
 王族に用意された物を貰うとか、そんなマナー違反、聞いたこともしたこともないよ!

「ならば新たに小鉢を持って来させようではないか。それならよいであろ?」
「いえ、もう、お腹が……。」
「この小鉢を山程持て。」

 ク、クローディアさまぁ!!
 クローディアさまが侍女に小鉢を見せて、侍女が頷いて出て行こうとする。
 僕食べるほうだけど、そこまでじゃ!

「クローディアさま、どうせでしたら土産に持たせていただけませんか。マジックバッグを持っておりますので、毎日の食卓に並べられたら、彩り豊かになりましょう。」

「そうじゃの!そうしようか。」
 叔父さんがそう言ってくれて、山菜は手土産になることになった。……ふう。

 お土産に持たせてくれた山菜をマジックバッグにしまって、帰りもしっかり門番の2人のお腹をナデナデさせて貰って、僕らは次のアイテムボックスに向かうことにした。

 お次は83番・農民(収穫物たくさん)。
 アイテムボックスとしてはかなり広くて、木の箱に詰められて重ねられた収穫物が、所狭しとたくさん並べられている。

 それこそ人の通る隙間もないくらい。僕と叔父さんは箱の隙間を通って、反対側の壁へと向かった。反対側に来てから、マジックバッグに入れれば良かったことに気が付いた。

 帰りのことを考えて、少しマジックバッグの中に移すことにした。すると箱のあった場所の下から、額縁にも入っていない絵姿が出てきた。誰だろう?この人たち。

 お父さんとお母さんと、男の子の兄弟……かな?お父さんとお母さんが、それぞれ小さな男の子を抱っこしている。

 このうちの誰かが持ち主なのかな?
 時空の扉を出すと、そこは、このままじゃ中身がスカスカの実がなるだけだと思えるほどの、痩せこけた麦畑の中心だった。

 すぐに外に出て扉を消して、人に見られてなかったか、周囲を確認したけど、まだ日も高いというのに、誰も作業をしてなかった。

「どうやら日差しが強過ぎて、作物がうまいこと育っていないようだな。この国は飢饉なんじゃないのか?どこの国だろうか。近隣で支援を求めてる話は聞かないが……。」

 と叔父さんが言った。
 情報の海さん!この国ってどこ?

【回答、エザリス王国、中央地帯北部、ザサラ領地、ハンメルの村です。】

「エザリス王国だって。叔父さん知ってる?
 僕、聞いたことがないや。」
「エザリス王国……、失われた大地か!
 俺も話でしか知らない国だ。」

「──失われた大地!?
 なにそれ!?」
 そんな伝説みたいな土地があるのなら、家庭教師が教えてくれそうなものだけど。

「貴族であっても、ある程度の年齢になるまでは、口にすることもはばかられる国だ。アレックスが知らないのも無理はない。俺も成人になった年に初めて聞いたからな。」
 
 そっか……、僕は成人になるとほぼ同時に、家を出ちゃったから、父さまから聞く機会がなかったんだ。──失われた大地……。
 それってどんな禁忌なんだろうか。

「その昔、この国では悪魔信仰が流行ったとされていてな。悪魔は魔族の神だからな。異端審問にかけられて、滅ぼされこそはしなかったが、地図から消された国なんだ。」

 悪魔信仰で地図から消された国……。
 そりゃ誰も話そうとはしないよね。知ったとしても口にすることがはばかられるよ。
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