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第2章

第226話 消える魔物

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「そ、そうにゃけど……。」
「マリーアもだ。こんな俺の親しい人たちを馬鹿にするような女を、俺は嫁にしたいとは思えんな。エルシィに謝るんだ。」

「な、なんと!セオドアそのような……。うむむ……。分かったのじゃ。確かにわらわが言い過ぎた。恨みこそあれど、今後は手を取ろうとしていたというのを忘れておった。」

「アタシもゴメンなのにゃ。」
 マリーアさんとエルシィさんはお互いに謝って、なんとかこの場はおさまった。

 ふう……、付く前からこれじゃ先が思いやられるよ……。僕は思わず額の汗を拭った。
 というかマリーアさんは、本当に叔父さんのことが大好きなんだなあ。

「──ここじゃ。」
 ルシーアさんが案内してくれた場所は、ダンジョンの最下層の1番奥の、重々しい扉だった。金ピカで意匠が掘られた豪華な扉だ。

 ひと目でこの奥は、たくさんの宝箱か、ダンジョンボスのどちらかがいると思わせる、特別な作りをしていた。

「1度入ると後戻りは出来ぬ。
 みな、覚悟はよいか。」
 マリーアさんが振り返ってそう言った。

 ダンジョンボスはクリアするまで中に閉じ込められてしまう仕様なんだ。帰還石というアイテムがないと途中で逃げられないんだ。
 全滅の可能性もある恐ろしい敵だよ。

 だから初めてダンジョンをクリアした人たちというのは、危険を顧みずに前人未到の頂きを制覇した、凄く勇気のある人たちだ。

 帰還石はダンジョンのランクに応じて、他のところでも使用することが可能なものなんだ。だからダンジョンボスクリア後に、帰還石を使わずに高値で売る人も多い物だね。

 僕らは帰還石を持っていないから、何がなんでもダンジョンボスを倒さなきゃ、生きて帰れないってことでもあるね。

 過去にクリアしたことのある、叔父さんとエルシィさんや、多分物凄く強いルシーアさんたちがいるのは安心材料ではあるけど。

 同時に、まだダンジョンボスに挑めるようなレベルじゃない、僕を含むみんなが、不安材料でもあるよね。

「もとより!」
「やってやるですぅ。」
「足手まといにだけは、ならないようにするからね!」

「ここのダンジョンボスはの、魔法と特殊なスキルを使うのじゃ。火魔法、風魔法、雷魔法、闇魔法の4つを操りよる。」
 ルシーアさんがそう教えてくれる。

「1番厄介なのは魔法封印じゃ。一定時間魔法スキルを封印してきよる。魔法使いには天敵のような魔物よの。じゃから近接職の存在が重要なのじゃ。セオドアのようなの。」

 マリーアさんが補足をしてくれる。
 4つもの魔法を操るの!?凄い強敵じゃないか!僕の血の海がいかに強力だとは言っても、あくまでも有効範囲は半径1アガだ。

 1アガはせいぜい4歳くらいの子どもの身長だから、直径にすると、かなり背の高い男の人の、身長くらいの範囲にしかならない。
 物凄い狭い範囲の効果スキルなんだ。

 つまり近付けなければ、効果が及ばないことになる。なんとかみんなに攻撃を防いで貰って、僕が魔物に近付くことが出来るかどうか。そこが勝敗の分かれ目になるね。

 僕らのパーティーの中で、回復出来るのはおそらく僕1人。さっき上のフロアのオニたちで、たくさんHPを集めてそれを貯めてはあるけれど、それを使い切ったら終わりだ。

「しかも鬼が乗ってる虎がまた強いのにゃ。こいつは姿を消す力を持っているのにゃよ。
 こいつを先に倒す必要があるにゃりね。乗ってる鬼も一緒に姿を消すにゃりから。」

 とエルシィさんが教えてくれた。
「虎は幽体だからな。聖水があれば倒しやすいんだが、来る予定がなかったから持って来ていないんだ。マリーア、持ってるか?」

「わらわたちは、そのようなものは手に入れること、あいかなわぬ。なにせこの地には教会など存在せぬからのう。だから難儀しておったのじゃ。姿を消されては何も出来ぬ。」

 ああ、そっか、ダンジョンの中だもんね。
 聖水かあ……。アイテムボックスの海の中になかったっけな?いくらでもアイテムがあるし、ありそうなものだけど……。

【回答、現在把握している、アイテムボックス内の聖水の数は、5、となります。】

 あった!でも、5個かあ……。ちょっと心もとないね。聖水は祝福された水だから、錬金術師のヒナさんにも作り出せないものだしなあ。作れるものならいいのにね?

【回答、アレックスは聖水を生み出すことが可能です。なぜなら半神半人のため、水に祝福を授けることが可能性であるからです。】

 ──ぼ、僕!?僕が教会の祭司さまみたくに、水に祝福をさずけられるの!?どうすれば祝福をさずけることが出来るの?
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