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第1章
第65話 専属侍女グレース
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僕が小さい頃に、ミーニャじゃなく、オフィーリア嬢を好きになった未来がないかと言われたら、あるとしか言えないもの。
「その……、う……。」
僕は心を決めかねて、何も言葉が出てこなかった。ミーニャと結婚します、ごめんなさいって言うだけなのに。
僕って浮気者だったのかな?
ううん、オフィーリア嬢じゃなかったら、こんな風にはならなかったと思う。
オフィーリア嬢はそんな僕を見て、なさけなく思うだろうか。でも、彼女はキリッとした目で僕を見ると、改めて背筋を正して僕に言ったのだった。
「婚約は絶対ではありませんわ。
わたくしとアレックスさまが、双方の親の都合で婚約破棄しましたように、結婚するまでは、なにがあるかわかりませんもの。」
「まあ……それは確かに、そう……ですね。」
「わたくし、諦めませんわ。アレックスさまはまだ結婚されていらっしゃいませんもの。
今まではアレックスさまと過ごす時間が少な過ぎました。だからぽっと出の相手に心を移されてしまったんですわ。」
「ええっ!?」
いや僕はミーニャを小さい頃から好きだったから、突然現れたわけではないけど……。
「アレックスさまはわたくしの気持ちをご存知ではなかった。それならば少しずつ知っていただきたく思います。わたくし、この近くに家を借りますわ。そしてもっとわたくしを見ていただきたく思います。」
「え?ちょ、その、オフィーリア嬢は学園に入られる予定なのでは?それはどうなさるおつもりですか?」
オフィーリア嬢は先日の鑑定で、火魔法と土魔法の2つのスキルをギフトとしていただいていた。魔力の基礎値も高いから、当然学園に入って魔法を学ぶ筈だ。
「行きませんわ、学園なんて。今離れたら、アレックスさまのお気持ちが、完全にその人に持っていかれてしまいますもの。」
オフィーリア嬢が断言する。
「……アレックスさまは、わたくしが気持ちを告げたあとで、わたくしを見る目線が明らかに変わりましたわ。」
ギクッ。
「……今までは、わたくしを好いてくださるというのは、わたくしの期待値で見ていただけだったのが分かりましたわ。ですが、わたくしの気持ちを聞いたあとで、アレックスさまの中に、わたくしへの気持ちが生まれたことも、事実だと確信いたしております。」
ギクギクギクッ!!
「ずっと見つめていたんですのよ?アレックスさまの変化は分かりますわ。わたくしそれが嬉しいのです。わたくしはアレックスさまの中に生まれた気持ちの芽を育てたい。
だからおそばにいたいのですわ。」
ミ、ミーニャあぁああ!早く来て!
僕、オフィーリア嬢には、気持ちが揺れないと断言出来ない!
「──グレース。」
「はい、オフィーリアさま。」
玄関脇に控えていた専属侍女が、背中を向けたままのオフィーリア嬢に、名前を呼ばれて返事をする。
ただお世話をするだけのメイドと違って、知性、教養、マナーの求められる仕事だ。
貴族の令嬢がなることが多いけど、かなりなれる人は少ない上級職なんだって。
グレースさんは、オフィーリア嬢以上に表情を変えない、灰色の髪の毛に茶色の目をしたキレイな年上の女の人だ。
確か護衛も兼ねていると以前オフィーリア嬢から聞いたことがある。護衛を兼ねた専属侍女とか、ホント規格外だよね。
家令補佐のジャックさんも護衛を兼ねてると言っていたから、こんな少人数でも少数精鋭で、こんなところまで来れたんだろうな。
「ジャックに伝えてちょうだい。わたくしここに住もうと思います。家を手配して、と。
もうオーウェンズ伯爵家には戻らないわ。
あなたたたちもそのつもりでね。」
「かしこまりました。」
お辞儀をしてグレースさんが叔父さんの家を出ていくと、ジャックさんに何かを伝えたのか、すぐにまた家の中に戻ってきた。
「すぐにお手配するそうです。準備に時間がかかるようであれば、今夜は宿に。」
「そう。」
えええええっ!?
「アレックスさま、わたくし、もう少しこちらにいてもよろしいですか?今わたくしの新しい家を手配させておりますの。」
オフィーリア嬢が笑顔でそう言う。
「え?え?あの……。
ほ、ほんとに住むの!?貴族の若い女性が住むには、つまらないでしょ!?
なんにもないところですよ?」
なんとか彼女を帰そうとそう言うと、オフィーリア嬢はニッコリと微笑んで、
「アレックスさまがおりますもの。
わたくしには楽しい場所ですわ。」
と言った。
う、うう……。恥ずかしい。
「そうと決まれば、お金を稼がなくてはね。
家を買ったらそれでお金がなくなってしまうもの。なにかよい仕事はないかしら。」
「その……、う……。」
僕は心を決めかねて、何も言葉が出てこなかった。ミーニャと結婚します、ごめんなさいって言うだけなのに。
僕って浮気者だったのかな?
ううん、オフィーリア嬢じゃなかったら、こんな風にはならなかったと思う。
オフィーリア嬢はそんな僕を見て、なさけなく思うだろうか。でも、彼女はキリッとした目で僕を見ると、改めて背筋を正して僕に言ったのだった。
「婚約は絶対ではありませんわ。
わたくしとアレックスさまが、双方の親の都合で婚約破棄しましたように、結婚するまでは、なにがあるかわかりませんもの。」
「まあ……それは確かに、そう……ですね。」
「わたくし、諦めませんわ。アレックスさまはまだ結婚されていらっしゃいませんもの。
今まではアレックスさまと過ごす時間が少な過ぎました。だからぽっと出の相手に心を移されてしまったんですわ。」
「ええっ!?」
いや僕はミーニャを小さい頃から好きだったから、突然現れたわけではないけど……。
「アレックスさまはわたくしの気持ちをご存知ではなかった。それならば少しずつ知っていただきたく思います。わたくし、この近くに家を借りますわ。そしてもっとわたくしを見ていただきたく思います。」
「え?ちょ、その、オフィーリア嬢は学園に入られる予定なのでは?それはどうなさるおつもりですか?」
オフィーリア嬢は先日の鑑定で、火魔法と土魔法の2つのスキルをギフトとしていただいていた。魔力の基礎値も高いから、当然学園に入って魔法を学ぶ筈だ。
「行きませんわ、学園なんて。今離れたら、アレックスさまのお気持ちが、完全にその人に持っていかれてしまいますもの。」
オフィーリア嬢が断言する。
「……アレックスさまは、わたくしが気持ちを告げたあとで、わたくしを見る目線が明らかに変わりましたわ。」
ギクッ。
「……今までは、わたくしを好いてくださるというのは、わたくしの期待値で見ていただけだったのが分かりましたわ。ですが、わたくしの気持ちを聞いたあとで、アレックスさまの中に、わたくしへの気持ちが生まれたことも、事実だと確信いたしております。」
ギクギクギクッ!!
「ずっと見つめていたんですのよ?アレックスさまの変化は分かりますわ。わたくしそれが嬉しいのです。わたくしはアレックスさまの中に生まれた気持ちの芽を育てたい。
だからおそばにいたいのですわ。」
ミ、ミーニャあぁああ!早く来て!
僕、オフィーリア嬢には、気持ちが揺れないと断言出来ない!
「──グレース。」
「はい、オフィーリアさま。」
玄関脇に控えていた専属侍女が、背中を向けたままのオフィーリア嬢に、名前を呼ばれて返事をする。
ただお世話をするだけのメイドと違って、知性、教養、マナーの求められる仕事だ。
貴族の令嬢がなることが多いけど、かなりなれる人は少ない上級職なんだって。
グレースさんは、オフィーリア嬢以上に表情を変えない、灰色の髪の毛に茶色の目をしたキレイな年上の女の人だ。
確か護衛も兼ねていると以前オフィーリア嬢から聞いたことがある。護衛を兼ねた専属侍女とか、ホント規格外だよね。
家令補佐のジャックさんも護衛を兼ねてると言っていたから、こんな少人数でも少数精鋭で、こんなところまで来れたんだろうな。
「ジャックに伝えてちょうだい。わたくしここに住もうと思います。家を手配して、と。
もうオーウェンズ伯爵家には戻らないわ。
あなたたたちもそのつもりでね。」
「かしこまりました。」
お辞儀をしてグレースさんが叔父さんの家を出ていくと、ジャックさんに何かを伝えたのか、すぐにまた家の中に戻ってきた。
「すぐにお手配するそうです。準備に時間がかかるようであれば、今夜は宿に。」
「そう。」
えええええっ!?
「アレックスさま、わたくし、もう少しこちらにいてもよろしいですか?今わたくしの新しい家を手配させておりますの。」
オフィーリア嬢が笑顔でそう言う。
「え?え?あの……。
ほ、ほんとに住むの!?貴族の若い女性が住むには、つまらないでしょ!?
なんにもないところですよ?」
なんとか彼女を帰そうとそう言うと、オフィーリア嬢はニッコリと微笑んで、
「アレックスさまがおりますもの。
わたくしには楽しい場所ですわ。」
と言った。
う、うう……。恥ずかしい。
「そうと決まれば、お金を稼がなくてはね。
家を買ったらそれでお金がなくなってしまうもの。なにかよい仕事はないかしら。」
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