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第1章
第30話 スキルの変化
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「そうか。だから双剣を使っているんだな。
俺の噂を聞いたのか。確かに、俺も最初に貰ったのは片手剣使いだったよ。」
それと、叔父さんになんの関係が?
「だが、スキルはまれに変化する。
自身のレベルが上がるように、スキルのレベルが上がることがあるんだ。俺の次にそうなるのは、あんたなのかも知れないな。」
それを聞いたヒルデは、すぐにパアァァッと表情を明るくした。
「……!はい……!!」
ヒルデは叔父さんに憧れてたんだな。Sランク冒険者だもんね。みんなの目標なんだろうな。おまけに近接職だから、双剣使いのヒルデからしたら、なおのことなんだろう。
「叔父さん片手剣使いだったのかー。」
「──馬鹿ね!
あんたの叔父さんのスキルは剣聖よ!!」
ヒルデが呆れたようにそう言った。
剣聖!?貰った瞬間、次世代の近衛騎士団長確定とすら言われる、あの剣聖!?
大剣、長剣、短剣、双剣、すべての剣に通じる、剣士に特化した特殊なスキルだ。
Sランクともなると、冒険者でも凄いスキルを持ってるんだなあ……。
最初から剣聖だったなら、叔父さんも冒険者じゃなかったかも知れないな。
キャベンディッシュ家ならまったく必要とされないけど、グリフィス家なら、まちがいなく長男を押しのけて跡継ぎになってたよ。
キャベンディッシュ侯爵家が魔法使いの名家なら、グリフィス侯爵家は剣士の名家だ。
3人もいる今のご子息たちは、僕よりも年上だけど、3人とも剣聖なんかじゃない。
と言うか、上級剣士ですらないんだ。魔法のスキルにもレベルがあるんだけど、双剣使いのスキルに上級双剣使いがあるように、剣士のスキルには段階があるものなんだ。
片手剣使いが、いわゆる下級片手剣使いのスキルに相当する。魔法のスキルと違って、スキルはレベル表示のあるもの以外はレベルが上がらないって言われてるんだよね。
代々いずれかの剣士のスキルの、上級剣士以上を必ず輩出してきたのに、全員ハズレだなんて言われてる。僕と違って剣士ではあるから、放逐まではされないけど。
跡継ぎ以外の息子さんたちも、それぞれ貴族の婚約者がいるし、上の2人は騎士団に所属しているから、食いっぱぐれもないしね。
長男があとをつぐことは決まってるから、下の2人の息子さんたちは、正式に結婚するまで、侯爵令息として生家にいる感じかな。
お父さんのグリフィス侯爵は、自分の息子たちの為に、叔父さんのスキルが喉から手が出るほど欲しいだろうなあ。
明日もまたよろしくね、と挨拶をしてヒルデと別れたあと、叔父さんに一角ウサギの角の買い取り代金を、馬車の上で手渡しつつ、噂がなんなのか聞いてみることにした。
「──ところでさ、ヒルデが聞いた、叔父さんの噂ってなんなの?」
僕はさっきから気になってたことを聞いてみた。父さまからは何も聞いたことがない。
「ああ。そのことか……。俺は片手剣使いのスキルを貰いはしたが、当時何もないまま放り出されて、金がなくてな。」
「……僕には叔父さんがいたけど、叔父さんには、手を差し伸べてくれる人が、いなかったんだね。」
「まあ、そうだな。父は魔法スキル持ち以外には金をかけない人だったからな。まあそれがキャベンディッシュ家の家訓だから、それに忠実な貴族だったということだが。」
まあ、そうだろうね。僕も剣を習いたかったけど、やらせて貰えなかったもの。その代わり魔法に関する勉強はたくさんしたけど。
必要なことにしか貴族はお金を使わない。
何が必要なものなのかは、その家によって異なるから、キャベンディッシュ侯爵家は、それが魔法に関することだったってだけだ。
他の家に生まれてたら、叔父さんも僕も貴族の子どもたちが通う学校くらいは、行かせて貰えてたと思うけど、キャベンディッシュ侯爵家からすると無駄なお金なんだよね。
だから当然、魔法スキルがなくて放逐される子どもに支払うお金は最小限なんだ。これは代々の決まりごとで、貴族は伝統を自分の代で変えることが難しい生き物なんだ。
それまで平民よりもお金をかけて育てているんだから、平民になるのが決まっている子どもは、放逐されるまでに生き方を覚えなさいってことでもあるんだよね。
だから父さまが僕を叔父さんのところに送ったことも、本来ならかなり例外中の例外なんだよね。たぶん僕が予定外に放逐に決まったことで、なんの準備も出来なかったから。
「……ただまあ、お前の父親がキャベンディッシュ侯爵家をついでから、年に一回、俺を指名したクエストが入るようになったが。」
「そうなの?あの旅行の時も?」
「ああ、そうだ。本来なら、まだ父も健在だったし、つぐには早い年齢だったが、……相当頑張ったんだと思うよ。」
叔父さんは目を細めて目線を落とした。
そっか……。父さま、叔父さんのことが心配だったんだな。滅多に手紙のやり取りも出来ないから、代わりにそうすることで、叔父さんが元気か確認してたのかも知れないね。
僕がリアムをなんとかしてやりたいと思ったみたいに、父さまも叔父さんのこと、助けてあげたくて頑張ったのかなあ。
俺の噂を聞いたのか。確かに、俺も最初に貰ったのは片手剣使いだったよ。」
それと、叔父さんになんの関係が?
「だが、スキルはまれに変化する。
自身のレベルが上がるように、スキルのレベルが上がることがあるんだ。俺の次にそうなるのは、あんたなのかも知れないな。」
それを聞いたヒルデは、すぐにパアァァッと表情を明るくした。
「……!はい……!!」
ヒルデは叔父さんに憧れてたんだな。Sランク冒険者だもんね。みんなの目標なんだろうな。おまけに近接職だから、双剣使いのヒルデからしたら、なおのことなんだろう。
「叔父さん片手剣使いだったのかー。」
「──馬鹿ね!
あんたの叔父さんのスキルは剣聖よ!!」
ヒルデが呆れたようにそう言った。
剣聖!?貰った瞬間、次世代の近衛騎士団長確定とすら言われる、あの剣聖!?
大剣、長剣、短剣、双剣、すべての剣に通じる、剣士に特化した特殊なスキルだ。
Sランクともなると、冒険者でも凄いスキルを持ってるんだなあ……。
最初から剣聖だったなら、叔父さんも冒険者じゃなかったかも知れないな。
キャベンディッシュ家ならまったく必要とされないけど、グリフィス家なら、まちがいなく長男を押しのけて跡継ぎになってたよ。
キャベンディッシュ侯爵家が魔法使いの名家なら、グリフィス侯爵家は剣士の名家だ。
3人もいる今のご子息たちは、僕よりも年上だけど、3人とも剣聖なんかじゃない。
と言うか、上級剣士ですらないんだ。魔法のスキルにもレベルがあるんだけど、双剣使いのスキルに上級双剣使いがあるように、剣士のスキルには段階があるものなんだ。
片手剣使いが、いわゆる下級片手剣使いのスキルに相当する。魔法のスキルと違って、スキルはレベル表示のあるもの以外はレベルが上がらないって言われてるんだよね。
代々いずれかの剣士のスキルの、上級剣士以上を必ず輩出してきたのに、全員ハズレだなんて言われてる。僕と違って剣士ではあるから、放逐まではされないけど。
跡継ぎ以外の息子さんたちも、それぞれ貴族の婚約者がいるし、上の2人は騎士団に所属しているから、食いっぱぐれもないしね。
長男があとをつぐことは決まってるから、下の2人の息子さんたちは、正式に結婚するまで、侯爵令息として生家にいる感じかな。
お父さんのグリフィス侯爵は、自分の息子たちの為に、叔父さんのスキルが喉から手が出るほど欲しいだろうなあ。
明日もまたよろしくね、と挨拶をしてヒルデと別れたあと、叔父さんに一角ウサギの角の買い取り代金を、馬車の上で手渡しつつ、噂がなんなのか聞いてみることにした。
「──ところでさ、ヒルデが聞いた、叔父さんの噂ってなんなの?」
僕はさっきから気になってたことを聞いてみた。父さまからは何も聞いたことがない。
「ああ。そのことか……。俺は片手剣使いのスキルを貰いはしたが、当時何もないまま放り出されて、金がなくてな。」
「……僕には叔父さんがいたけど、叔父さんには、手を差し伸べてくれる人が、いなかったんだね。」
「まあ、そうだな。父は魔法スキル持ち以外には金をかけない人だったからな。まあそれがキャベンディッシュ家の家訓だから、それに忠実な貴族だったということだが。」
まあ、そうだろうね。僕も剣を習いたかったけど、やらせて貰えなかったもの。その代わり魔法に関する勉強はたくさんしたけど。
必要なことにしか貴族はお金を使わない。
何が必要なものなのかは、その家によって異なるから、キャベンディッシュ侯爵家は、それが魔法に関することだったってだけだ。
他の家に生まれてたら、叔父さんも僕も貴族の子どもたちが通う学校くらいは、行かせて貰えてたと思うけど、キャベンディッシュ侯爵家からすると無駄なお金なんだよね。
だから当然、魔法スキルがなくて放逐される子どもに支払うお金は最小限なんだ。これは代々の決まりごとで、貴族は伝統を自分の代で変えることが難しい生き物なんだ。
それまで平民よりもお金をかけて育てているんだから、平民になるのが決まっている子どもは、放逐されるまでに生き方を覚えなさいってことでもあるんだよね。
だから父さまが僕を叔父さんのところに送ったことも、本来ならかなり例外中の例外なんだよね。たぶん僕が予定外に放逐に決まったことで、なんの準備も出来なかったから。
「……ただまあ、お前の父親がキャベンディッシュ侯爵家をついでから、年に一回、俺を指名したクエストが入るようになったが。」
「そうなの?あの旅行の時も?」
「ああ、そうだ。本来なら、まだ父も健在だったし、つぐには早い年齢だったが、……相当頑張ったんだと思うよ。」
叔父さんは目を細めて目線を落とした。
そっか……。父さま、叔父さんのことが心配だったんだな。滅多に手紙のやり取りも出来ないから、代わりにそうすることで、叔父さんが元気か確認してたのかも知れないね。
僕がリアムをなんとかしてやりたいと思ったみたいに、父さまも叔父さんのこと、助けてあげたくて頑張ったのかなあ。
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