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第1章
第24話 怪しい男たち
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「なにと交換するの?」
「今日は一角ウサギの肉だ。魔物は仕掛け罠にかからないからな。壊して逃げちまうから退治しないと狩れない。」
「……魔物が出るの?」
「お前のところは王都に近いから、大したやつが出ないだろうが、このあたりはそれなりにいるぞ。昼間っから出るのは弱いから安心しろ。夜は護衛がいないと出られないぞ。」
ちなみに今お前が食べているのが、その一角ウサギの肉だ、と教えてくれた。
「えっ、魔物ってこんなに美味しいの?」
たくさん使ってくれたけど、育ち盛りの僕としては量が少ないから、もっと食べたいとすら思っていたんだ。我が家じゃ1度も出てきたことのないお肉だとは思っていたけど。
「もとは動物が瘴気に当てられて変化したものだというからな。だいたいうまいぞ。
なんだ、気に入ったか。」
「うん。」
「なら、一角ウサギくらいは狩れるようにならないとな。貴族は一部の奴らしか食べないが、平民は魔物を食べることが多いんだ。」
リアムにも食べさせてやりたいなあ。
僕はリアムの喜ぶ顔を想像した。
「ああ、そうだ。町に行ったら、ついでに冒険者ギルドでこれを売ってきてくれ。」
叔父さんはそう言って袋を差し出す。
「──なに?」
「一角ウサギの角だ。
討伐依頼があれば納品対象にもなるし、薬のもとになるから売れるんだ。」
「わかったよ。」
「昼ご飯を食べ終わったら、馬車で町に連れて行ってやる。俺はまだ用事があるから、夕方迎えにくるから。」
叔父さんは言葉の通り、ご飯を食べたら、馬車で町に連れて行ってくれた。今日は叔父さんはすぐに帰るから、町の外で僕と魚を入れるタライだけが馬車から降りた。
「じゃあな、頑張れよ。」
ハイ・ヨー、と言って、叔父さんは馬車を走らせて行ってしまった。
僕はまず、冒険者ギルドで一角ウサギの買い取りを済ませてしまうことにした。
残念だったけど、今日は納品クエストはないから、普通に買い取って貰うだけみたい。
買い取りカウンターに並ぶと、ひとつにつき、小金貨1枚、全部で中金貨1枚と小金貨2枚を渡された。
「新人さんなのに凄いわね。
普通ならパーティーを組んでも、3、4体がいいとこなのに。」
結構素早くて強い一角ウサギは、冒険者以外に狩人でも狩ることの出来る魔物だけど、新人冒険者には手強い相手なのだそうだ。
僕が狩ったわけじゃ……と言おうとしたんだけど、後ろから、オイ、早くしろよ、と追い立てられて、すぐに列からどいた。
冒険者ギルドを出る時、妙にニヤニヤした顔付きの男たちと目があった。
なんだろう、嫌な感じだな……。
僕は無視して外に出た。
その時、変な奴らに目を付けられていたことに、僕は気付けなかったんだ。
屋根付き露天商の場所に行くと、今日も隣の焼串屋のおかみさんは暇そうだった。
だから僕はおかみさんに、店の協力をお願いをしてみることにしたんだ。
「あの、今日からお隣なんです。
よろしくお願いします。」
「ああ……。よろしくね。」
「あの、いきなりなんですけど、これから僕の店、忙しくなると思うんです。」
「はい?」
これから始める、右も左も分からないような子どもから、店が忙しくなると言われて、女将さんは片眉を上げて、少しイラついたような表情を浮かべながら僕を見た。
「それでその……、僕の店のお客さんに提供したいサービスを、おかみさんの店ならすることが出来るんです。物々交換しませんか?
おかみさんの力を、僕に貸して下さい。」
「……物々交換……?
あたしに何しろってんだい?」
おかみさんは訝しげにそう言った。
僕は首からメダルを下げると、屋根付き露天商の店にかけられていた布をはずして、タライを置いて、市場の商人なら誰でも使える井戸から水をくみ、タライに水をはった。
そしてスキルで魚を直接、タライの中に出してやることにしたんだ。
「──ロアーズ魚、アローア魚、エノー!」
僕の目の前が発光する。
眩しい光の奔流に包まれて、僕よりも背の高い木で出来た扉が現れて、手も触れていないのに、扉が勝手に開いていく。
そしてまた海の中に突然移動したかのように、きらめく銀色の魚たちが、僕の頭上を、真横を、足元を、優雅に素早く泳いでいく。
魚たちが次々に水をはったタライの中へと飛び込んで行く様子を、隣でおかみさんが驚いた表情を浮かべて、ポカンと口をあけてこちらを見ていた。
端っこだからあんまり人がいないけど、お客さんたちも驚いてこっちを見ていた。
……うん、ちょっと派手だよね、僕のスキル。でも、目立っていい宣伝になったかも?
「す、凄いね……。
それがあんたのスキルなのかい?」
「はい。そうなんです!」
僕はそれから大声を張り上げる。
「さあ!安いよ、安いよ!
ロアーズ魚1匹、銀貨1枚!
アローア魚1匹、銅貨6枚!
エノー1匹、銅貨2枚だよ!」
僕の声に少しずつ人が集まってくる。
「エノー1匹、銅貨2枚ってのは本当か?」
「今が旬じゃねえから安いのか?」
「いくらなんでも安すぎるだろ。死にかけてるとか、腐ってんじゃねえのか?」
「いや、みろよ、元気に泳いでやがるぞ?」
「本当だ……。」
あまりの安さに疑われちゃったかな?
みんなこわごわと、遠巻きにタライの中を覗き込んでいて、あまり近付いてくれない。
「今日は一角ウサギの肉だ。魔物は仕掛け罠にかからないからな。壊して逃げちまうから退治しないと狩れない。」
「……魔物が出るの?」
「お前のところは王都に近いから、大したやつが出ないだろうが、このあたりはそれなりにいるぞ。昼間っから出るのは弱いから安心しろ。夜は護衛がいないと出られないぞ。」
ちなみに今お前が食べているのが、その一角ウサギの肉だ、と教えてくれた。
「えっ、魔物ってこんなに美味しいの?」
たくさん使ってくれたけど、育ち盛りの僕としては量が少ないから、もっと食べたいとすら思っていたんだ。我が家じゃ1度も出てきたことのないお肉だとは思っていたけど。
「もとは動物が瘴気に当てられて変化したものだというからな。だいたいうまいぞ。
なんだ、気に入ったか。」
「うん。」
「なら、一角ウサギくらいは狩れるようにならないとな。貴族は一部の奴らしか食べないが、平民は魔物を食べることが多いんだ。」
リアムにも食べさせてやりたいなあ。
僕はリアムの喜ぶ顔を想像した。
「ああ、そうだ。町に行ったら、ついでに冒険者ギルドでこれを売ってきてくれ。」
叔父さんはそう言って袋を差し出す。
「──なに?」
「一角ウサギの角だ。
討伐依頼があれば納品対象にもなるし、薬のもとになるから売れるんだ。」
「わかったよ。」
「昼ご飯を食べ終わったら、馬車で町に連れて行ってやる。俺はまだ用事があるから、夕方迎えにくるから。」
叔父さんは言葉の通り、ご飯を食べたら、馬車で町に連れて行ってくれた。今日は叔父さんはすぐに帰るから、町の外で僕と魚を入れるタライだけが馬車から降りた。
「じゃあな、頑張れよ。」
ハイ・ヨー、と言って、叔父さんは馬車を走らせて行ってしまった。
僕はまず、冒険者ギルドで一角ウサギの買い取りを済ませてしまうことにした。
残念だったけど、今日は納品クエストはないから、普通に買い取って貰うだけみたい。
買い取りカウンターに並ぶと、ひとつにつき、小金貨1枚、全部で中金貨1枚と小金貨2枚を渡された。
「新人さんなのに凄いわね。
普通ならパーティーを組んでも、3、4体がいいとこなのに。」
結構素早くて強い一角ウサギは、冒険者以外に狩人でも狩ることの出来る魔物だけど、新人冒険者には手強い相手なのだそうだ。
僕が狩ったわけじゃ……と言おうとしたんだけど、後ろから、オイ、早くしろよ、と追い立てられて、すぐに列からどいた。
冒険者ギルドを出る時、妙にニヤニヤした顔付きの男たちと目があった。
なんだろう、嫌な感じだな……。
僕は無視して外に出た。
その時、変な奴らに目を付けられていたことに、僕は気付けなかったんだ。
屋根付き露天商の場所に行くと、今日も隣の焼串屋のおかみさんは暇そうだった。
だから僕はおかみさんに、店の協力をお願いをしてみることにしたんだ。
「あの、今日からお隣なんです。
よろしくお願いします。」
「ああ……。よろしくね。」
「あの、いきなりなんですけど、これから僕の店、忙しくなると思うんです。」
「はい?」
これから始める、右も左も分からないような子どもから、店が忙しくなると言われて、女将さんは片眉を上げて、少しイラついたような表情を浮かべながら僕を見た。
「それでその……、僕の店のお客さんに提供したいサービスを、おかみさんの店ならすることが出来るんです。物々交換しませんか?
おかみさんの力を、僕に貸して下さい。」
「……物々交換……?
あたしに何しろってんだい?」
おかみさんは訝しげにそう言った。
僕は首からメダルを下げると、屋根付き露天商の店にかけられていた布をはずして、タライを置いて、市場の商人なら誰でも使える井戸から水をくみ、タライに水をはった。
そしてスキルで魚を直接、タライの中に出してやることにしたんだ。
「──ロアーズ魚、アローア魚、エノー!」
僕の目の前が発光する。
眩しい光の奔流に包まれて、僕よりも背の高い木で出来た扉が現れて、手も触れていないのに、扉が勝手に開いていく。
そしてまた海の中に突然移動したかのように、きらめく銀色の魚たちが、僕の頭上を、真横を、足元を、優雅に素早く泳いでいく。
魚たちが次々に水をはったタライの中へと飛び込んで行く様子を、隣でおかみさんが驚いた表情を浮かべて、ポカンと口をあけてこちらを見ていた。
端っこだからあんまり人がいないけど、お客さんたちも驚いてこっちを見ていた。
……うん、ちょっと派手だよね、僕のスキル。でも、目立っていい宣伝になったかも?
「す、凄いね……。
それがあんたのスキルなのかい?」
「はい。そうなんです!」
僕はそれから大声を張り上げる。
「さあ!安いよ、安いよ!
ロアーズ魚1匹、銀貨1枚!
アローア魚1匹、銅貨6枚!
エノー1匹、銅貨2枚だよ!」
僕の声に少しずつ人が集まってくる。
「エノー1匹、銅貨2枚ってのは本当か?」
「今が旬じゃねえから安いのか?」
「いくらなんでも安すぎるだろ。死にかけてるとか、腐ってんじゃねえのか?」
「いや、みろよ、元気に泳いでやがるぞ?」
「本当だ……。」
あまりの安さに疑われちゃったかな?
みんなこわごわと、遠巻きにタライの中を覗き込んでいて、あまり近付いてくれない。
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