上 下
13 / 483
第1章

第13話 冒険者ギルド

しおりを挟む
「──冒険者は魔物を討伐するばかりが仕事じゃない。採取や納品なんてクエストもあるのさ。お前の手に入れられるものによっては、クエストで納品したほうが売るよりいいこともある。どうだ、登録してみないか?」

 元冒険者の叔父さんが言うことだ。
 そっちのほうが儲けられるというのなら、そのほうがいいんだろうな。

「わかりました。冒険者にもなります。」
「よし、そうと決まれば、商人ギルドと冒険者ギルドに登録に行こう。お前はもう貴族じゃないから、身分証明書も必要だしな。」

「──身分証明書?」
 平民はそんなものを持ってるなんて、初めて聞いたなあ。キャベンディッシュ侯爵家の従者たちも、みんな持っているのかな?

「貴族は持ち物に刻まれた家名の刻印が身分証明書代わりになるが、平民はギルドに登録しない限りは身分証明書が持てないんだ。
 今後家を買う時にも必要になるぞ。」

 普通は家を買うほどのお金なんて稼げないから、代々同じ家に住むから必要ないんだって。持ち家さえあれば、村長さんが身分を証明してくれるから、なんだそうだ。

 ああ、それならますます登録したほうがいいよね。いずれミーニャと暮らす家を買うことを考えたら……。

「なに、ニヤケてんだ?」
 しまった、顔に出てたよ!
「な、なんでもないよ。」
 僕は思わず誤魔化した。

「それに、商人ギルドは商売を始めてから1年経たないと身分証明書を発行してくれないが、冒険者ギルドでランクが上がれば、商人ギルドで身分証明書を発行して貰いやすくなる。下位のランクの証明書じゃ、出来ることが限られているが、商人ギルドの身分証明書もあれば、平民としてはかなり暮らしやすくなるからな。」

 なるほどね。
「家の裏手に俺の馬車がある。準備するから待っててくれ。このあたりで馬車を持ってるなんざ、俺と村長くらいなんだぜ?」

 叔父さんはそう言うと、家の外に出て行って、馬車を用意してくれた。やっぱり元冒険者だけあって、普通の平民よりは裕福なんだな。早く叔父さんくらいになりたいな!

 馬車がアタモの町につくと、叔父さんは馬車を預かってくれる業者さんに、馬と馬車を別々に預けた。馬車の手入れや、馬に水や餌をくれて世話してくれるらしい。

「よし、まずは冒険者ギルド、それから商人ギルドに行って、それから当面の必要なものの買い出しだな。特に自分の服がないだろ?持ち出せるものが極端に少ないからな。」

「そうなんだよね。僕の服と言ったら、今着てるこの服と、替えの下着が3着しかないんだもん。とりあえず、当面の着替えだけでも買えるなら買いたいなあ……。」

「まあ、平民の服は安いからだいじょ、」
 叔父さんはそう言うと、僕をひときわ立派な平屋の建物に案内してくれようとして、また入口で派手にコケたのだった……。

 とは言っても、当然キャベンディッシュ家の家と比べると木造りでみすぼらしいけど、近くのお店と比べるとメチャクチャデカい。

 扉を開けて中に入ると、たくさんの人たちでごった返していた。
 僕は叔父さんの背中に隠れながら、キョロキョロと辺りを見渡した。

 建物の中にはカウンターがあって、カウンターに何人もの制服を着た女性たちが並んでいて、その前に革の鎧や様々な武器を身につけた人たちが順番を待っている。

 カウンターの前の横の壁には、掲示板らしきものがあって、そこに貼られた紙をじっくりと眺めた後で、剥がして受付カウンターに持って行く人たちもいた。

 ──動物の耳をつけた人たちがいる!!
……モ、モフモフだあ、触りたいなあ……。
 完全な動物タイプの人と、半分人間みたいな見た目の人とがいるみたいだ。

 獣人って、男も女もキレイな人ばっかなんだなあ。それにスタイルだって人間とは比べ物にならないくらい、しなやかで力強い。

 獣人の人たちもどうやら冒険者のようだ。剣を腰に差している人や、皮の鎧をつけている人もいて、受付のお姉さんたちと朗らかに話している。僕も話してみたいなあ……。

 僕が思わずじっと見惚れていると、可愛らしい猫耳の女の子と目があって、パチッとウインクをされてしまった。

 ──ドキッ。
 か、かあいい。
 だ、駄目だ駄目だ、僕にはミーニャという大切な女の子がいるんだ!!

 僕が立ち止まってじっと見つめていることに気が付いて、叔父さんが何をしてるんだ?こっちだぞ?と声をかけてきた。

「獣人を見るのは初めてか?まあ、昔は迫害されてたからな。未だに王都近くの貴族には嫌な顔をされるから、キャベンディッシュ家の近くじゃ見かけないかも知れないな。」

 そうかもね。家庭教師から教わって、存在を知ってはいたけど、父さまからも獣人の話なんて聞いたことがないもの。家の中で話題にするのを避けてたんだろうな。

「──こっちだ。」
 叔父さんは僕を一番右奥のカウンターへと案内した。ベテランっぽい落ち着いた美人のお姉さんがそこには座っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

庭にできた異世界で丸儲け。破格なクエスト報酬で社畜奴隷からニートになる。〜投資額に応じたスキルを手に入れると現実世界でも無双していました〜

k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
※元々執筆していたものを加筆して、キャラクターを少し変更したリメイク版です。  ブラック企業に勤めてる服部慧は毎日仕事に明け暮れていた。残業続きで気づけば寝落ちして仕事に行く。そんな毎日を過ごしている。  慧の唯一の夢はこの社会から解放されるために"FIRE"することだった。  FIREとは、Financial Independence Retire Earlyの頭文字をとり、「経済的な自立を実現させて、仕事を早期に退職する生活スタイル」という意味を持っている。簡単に言えば、働かずにお金を手に入れて生活をすることを言う。  慧は好きなことして、ゆっくりとニート生活することを夢見ている。  普段通りに仕事を終えソファーで寝落ちしていると急に地震が起きた。地震速報もなく夢だったのかと思い再び眠るが、次の日、庭に大きな穴が空いていた。  どこか惹かれる穴に入ると、脳内からは無機質なデジタル音声が聞こえてきた。 【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、一部パラメーターが上昇します】  庭の穴は異世界に繋がっており、投資額に応じてスキルを手に入れる世界だった。しかも、クエストをクリアしないと現実世界には戻れないようだ。  そして、クエストをクリアして戻ってきた慧の手に握られていたのはクエスト報酬と素材売却で手に入れた大金。  これは異世界で社畜会社員が命がけでクエストを達成し、金稼ぎをするそんな物語だ。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

久遠の呪祓師―― 怪異探偵犬神零の大正帝都アヤカシ奇譚

山岸マロニィ
キャラ文芸
  ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼       第伍話 連載中    【持病悪化のため休載】   ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ モダンガールを目指して上京した椎葉桜子が勤めだした仕事先は、奇妙な探偵社。 浮世離れした美貌の探偵・犬神零と、式神を使う生意気な居候・ハルアキと共に、不可解な事件の解決に奔走する。 ◤ 大正 × 妖 × ミステリー ◢ 大正ロマン溢れる帝都・東京の裏通りを舞台に、冒険活劇が幕を開ける! 【シリーズ詳細】 第壱話――扉(書籍・レンタルに収録) 第弐話――鴉揚羽(書籍・レンタルに収録) 第参話――九十九ノ段(完結・公開中) 第肆話――壺(完結・公開中) 第伍話――箪笥(連載準備中) 番外編・百合御殿ノ三姉妹(完結・別ページにて公開中) ※各話とも、単独でお楽しみ頂ける内容となっております。 【第4回 キャラ文芸大賞】 旧タイトル『犬神心霊探偵社 第壱話【扉】』が、奨励賞に選ばれました。 【備考(第壱話――扉)】 初稿  2010年 ブログ及びHPにて別名義で掲載 改稿① 2015年 小説家になろうにて別名義で掲載 改稿② 2020年 ノベルデイズ、ノベルアップ+にて掲載  ※以上、現在は公開しておりません。 改稿③ 2021年 第4回 キャラ文芸大賞 奨励賞に選出 改稿④ 2021年 改稿⑤ 2022年 書籍化

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~

空地大乃
ファンタジー
「殺すと決めたら殺す。容赦なく殺す」 クラスで酷いいじめを受けていた猟牙はある日クラスメート共々異世界に召喚されてしまう。異世界の姫に助けを求められクラスメート達に特別なスキルが与えられる中、猟牙にはスキルが一切なく、無能として召喚した姫や王からも蔑まされクラスメートから馬鹿にされる。 しかし実は猟牙には暗殺者としての力が隠されており次々とクラスメートをその手にかけていく。猟牙の強さを知り命乞いすらしてくる生徒にも一切耳を傾けることなく首を刎ね、心臓を握り潰し、頭を砕きついには召喚した姫や王も含め殺し尽くし全てが終わり血の海が広がる中で猟牙は考える。 「そうだ普通に生きていこう」と――だが猟牙がやってきた異世界は過酷な世界でもあった。Fランク冒険者が行う薬草採取ですら命がけな程であり冒険者として10年生きられる物が一割もいないほど、な筈なのだが猟牙の暗殺者の力は凄まじく周りと驚かせることになり猟牙の望む普通の暮らしは別な意味で輝かしいものになっていく――

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

処理中です...