14 / 116
第1部
第10話 サウナリゾートの楽しみ方①
しおりを挟む
入る前に水を飲んで貰ってから、ベルエンテール公爵、ルクシャ、ガリウスがサウナに入る。
日本の公衆浴場では、子どもがサウナに入るのは危険として、断られることも多いが、本場フィンランドでは、普通に子どもたちも入る。
子どもは大人ほど体温調節機能が成長していないので、特に5歳以下だと、確かにサウナの影響を受けやすい。
体重に対する体表面積の比率が大きいことと、皮膚が薄いこともあり、早く深部体温が上昇するのだ。
公衆浴場などは、少し風呂の温度を高めに設定していることが多い。大人には丁度いい温度だが、それを熱いと言って嫌がる子どもが多いのはその為だ。
だから大人程長く入ってはいけないし、子どもの様子をきちんと大人が見ながら入る必要がある。
そこに気を付ければ、ルクシャの年齢でも充分にサウナは楽しめるのだ。
俺は、熱いな、嫌だな、と少しでも感じたら無理をしないこと、そう感じたなら、すぐにサウナから出て、水分を取りながら川に浸かること、とルクシャに言い聞かせた。
3人が入って暫くすると、アントが服を着たままサウナに入る。あれからすっかりサウナにはまったアントは、このサウナの熱波師になっていた。
まずは柄杓でラヴァロックに水をかけ、水蒸気を発生させる。ロウリュ、またはロウリュウと呼ばれ、体感温度を上げ、発汗作用を促進させる効果がある。
これが以外と難しい。勢いよくかけると跳ねてお客にかかってしまうし、手前から奥にかけようとすると、手前に蒸気が残るので火傷する可能性がある。
静かに回しながらかけるのがコツだ。
水をかけ終えると、部屋全体に空気が行き渡るように、タオルをくるくると回したり、扇いだりして熱波を撹拌する。
サウナ室はそんなに広くないので、肘をたたんでぶつからないようにする必要がある。
基本は頭から顔にかけて仰ぐと、上半身すべてに蒸気を浴びる事が出来る。
プロサウナーと呼ばれるサウナ好きは、人気の熱波師の入る日には必ず集まると言われるくらい、重要な仕事だ。
実際リピーターの多くは、アントの予定を確認してから来る程、人気の熱波師になっていた。
「ム……。」
「これは……、なかなか熱いですね。」
慣れない熱波師の技に、始めは困惑する。だが、水風呂と外気浴を繰り返すうちに、サウナ好き程これにハマってしまうのだ。
「僕もう無理~。」
ルクシャがサウナから出てきて床によつん這いになる。皆から、無理するな、と朗らかに笑われながら川に浸かる。
「あ……でも、これ気持ちいいかも。」
デッキチェアで外気浴をしながら、くんだばかりの冷たい水を飲むルクシャは、風に肌を撫でられながら目を細めた。将来はサウナ好きに成長するかもな。
ガリウスは2セットを終え、一足先に休憩室で休んでいた。ベルエンテール公爵は、初めてにも関わらず、4セットを終えたあと、デッキチェアでくつろぎながら俺に言った。
「鼻と口から冷気がフワッと抜けてゆく感じが、とても心地よいな。
日頃の疲れが共に抜けて行くようだ。」
「それが“ととのう”ってことだ。
いずれ食堂で、スイートビーの蜂蜜酒を出す予定なんだ。
良かったらまた来てくれよ。」
「それは楽しみだ。ぜひまた寄らせていただこう。」
「待ってるぜ。」
ベルエンテール公爵は穏やかに目を細め、流れる川を見ていた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
日本の公衆浴場では、子どもがサウナに入るのは危険として、断られることも多いが、本場フィンランドでは、普通に子どもたちも入る。
子どもは大人ほど体温調節機能が成長していないので、特に5歳以下だと、確かにサウナの影響を受けやすい。
体重に対する体表面積の比率が大きいことと、皮膚が薄いこともあり、早く深部体温が上昇するのだ。
公衆浴場などは、少し風呂の温度を高めに設定していることが多い。大人には丁度いい温度だが、それを熱いと言って嫌がる子どもが多いのはその為だ。
だから大人程長く入ってはいけないし、子どもの様子をきちんと大人が見ながら入る必要がある。
そこに気を付ければ、ルクシャの年齢でも充分にサウナは楽しめるのだ。
俺は、熱いな、嫌だな、と少しでも感じたら無理をしないこと、そう感じたなら、すぐにサウナから出て、水分を取りながら川に浸かること、とルクシャに言い聞かせた。
3人が入って暫くすると、アントが服を着たままサウナに入る。あれからすっかりサウナにはまったアントは、このサウナの熱波師になっていた。
まずは柄杓でラヴァロックに水をかけ、水蒸気を発生させる。ロウリュ、またはロウリュウと呼ばれ、体感温度を上げ、発汗作用を促進させる効果がある。
これが以外と難しい。勢いよくかけると跳ねてお客にかかってしまうし、手前から奥にかけようとすると、手前に蒸気が残るので火傷する可能性がある。
静かに回しながらかけるのがコツだ。
水をかけ終えると、部屋全体に空気が行き渡るように、タオルをくるくると回したり、扇いだりして熱波を撹拌する。
サウナ室はそんなに広くないので、肘をたたんでぶつからないようにする必要がある。
基本は頭から顔にかけて仰ぐと、上半身すべてに蒸気を浴びる事が出来る。
プロサウナーと呼ばれるサウナ好きは、人気の熱波師の入る日には必ず集まると言われるくらい、重要な仕事だ。
実際リピーターの多くは、アントの予定を確認してから来る程、人気の熱波師になっていた。
「ム……。」
「これは……、なかなか熱いですね。」
慣れない熱波師の技に、始めは困惑する。だが、水風呂と外気浴を繰り返すうちに、サウナ好き程これにハマってしまうのだ。
「僕もう無理~。」
ルクシャがサウナから出てきて床によつん這いになる。皆から、無理するな、と朗らかに笑われながら川に浸かる。
「あ……でも、これ気持ちいいかも。」
デッキチェアで外気浴をしながら、くんだばかりの冷たい水を飲むルクシャは、風に肌を撫でられながら目を細めた。将来はサウナ好きに成長するかもな。
ガリウスは2セットを終え、一足先に休憩室で休んでいた。ベルエンテール公爵は、初めてにも関わらず、4セットを終えたあと、デッキチェアでくつろぎながら俺に言った。
「鼻と口から冷気がフワッと抜けてゆく感じが、とても心地よいな。
日頃の疲れが共に抜けて行くようだ。」
「それが“ととのう”ってことだ。
いずれ食堂で、スイートビーの蜂蜜酒を出す予定なんだ。
良かったらまた来てくれよ。」
「それは楽しみだ。ぜひまた寄らせていただこう。」
「待ってるぜ。」
ベルエンテール公爵は穏やかに目を細め、流れる川を見ていた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
969
お気に入りに追加
1,348
あなたにおすすめの小説
知識チートの正しい使い方 〜自由な商人として成り上ります! え、だめ? よろしい、ならば拷問だ〜
ノ木瀬 優
ファンタジー
商人として貧しいながらも幸せな暮らしを送っていた主人公のアレン。ある朝、突然前世を思い出す。
「俺、異世界転生してる?」
貴族社会で堅苦しい生活を送るより、知識チートを使って商人として成功する道を選んだが、次第に権力争いに巻き込まれていく。
※なろう、カクヨムにも投稿しております。
※なろう版は完結しておりますが、そちらとは話の構成を変える予定です。
※がっつりR15です。R15に収まるよう、拷問シーンは出血、内臓などの描写を控えておりますが、残虐な描写があります。苦手な方は飛ばしてお読みください。(対象の話はタイトルで分かるようにしておきます)
追放令嬢は隣国で幸せになります。
あくび。
ファンタジー
婚約者の第一王子から一方的に婚約を破棄され、冤罪によって国外追放を言い渡された公爵令嬢のリディアは、あっさりとそれを受け入れた。そして、状況的判断から、護衛を買って出てくれた伯爵令息のラディンベルにプロポーズをして翌日には国を出てしまう。
仮夫婦になったふたりが向かったのは隣国。
南部の港町で、リディアが人脈やチートを炸裂させたり、実はハイスペックなラディンベルがフォローをしたりして、なんだかんだと幸せに暮らすお話。
※リディア(リディ)とラディンベル(ラディ)の交互視点です。
※ざまぁっぽいものはありますが、二章に入ってからです。
※そこかしこがご都合主義で、すみません。
社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ~【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
俺は社畜だ。
ふと気が付くと見知らぬ場所に立っていた。
諸々の情報を整理するに、ここはどうやら異世界のようである。
『ジョブ設定』や『ミッション』という概念があるあたり、俺がかつてやり込んだ『ソード&マジック・クロニクル』というVRMMOに酷似したシステムを持つ異世界のようだ。
俺に初期スキルとして与えられた『ジョブ設定』は、相当に便利そうだ。
このスキルを使えば可愛い女の子たちを強化することができる。
俺だけの最強ハーレムパーティを築くことも夢ではない。
え?
ああ、『ミッション』の件?
何か『30年後の世界滅亡を回避せよ』とか書いてあるな。
まだまだ先のことだし、実感が湧かない。
ハーレム作戦のついでに、ほどほどに取り組んでいくよ。
……むっ!?
あれは……。
馬車がゴブリンの群れに追われている。
さっそく助けてやることにしよう。
美少女が乗っている気配も感じるしな!
俺を止めようとしてもムダだぜ?
最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!
※主人公陣営に死者や離反者は出ません。
※主人公の精神的挫折はありません。
完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた
まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。
その上、
「お前がフリーダをいじめているのは分かっている!
お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ!
お前のような非道な女との婚約は破棄する!」
私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。
両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。
それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。
私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、
「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」
「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」
と言って復縁を迫ってきた。
この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら?
※ざまぁ有り
※ハッピーエンド
※他サイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。
小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
召喚されて異世界行ったら、全てが終わった後でした
仲村 嘉高
ファンタジー
ある日、足下に見た事もない文字で書かれた魔法陣が浮かび上がり、異世界へ召喚された。
しかし発動から召喚までタイムラグがあったようで、召喚先では全てが終わった後だった。
倒すべき魔王は既におらず、そもそも召喚を行った国自体が滅んでいた。
「とりあえずの衣食住は保証をお願いします」
今の国王が良い人で、何の責任も無いのに自立支援は約束してくれた。
ん〜。向こうの世界に大して未練は無いし、こっちでスローライフで良いかな。
R15は、戦闘等の為の保険です。
※なろうでも公開中
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
【完結】転生令嬢は推しキャラのために…!!
森ノ宮 明
恋愛
その日、貧乏子爵令嬢のセルディ(十二歳)は不思議な夢を見た。
人が殺される、悲しい悲しい物語。
その物語を映す不思議な絵を前に、涙する女性。
――もし、自分がこの世界に存在出来るのなら、こんな結末には絶対させない!!
そしてセルディは、夢で殺された男と出会う。
推しキャラと出会った事で、前世の記憶を垣間見たセルディは、自身の領地が戦火に巻き込まれる可能性があること、推しキャラがその戦いで死んでしまう事に気づいた。
動揺するセルディを前に、陛下に爵位を返上しようとする父。
セルディは思わず声を出した。
「私が領地を立て直します!!」
こうしてセルディは、推しキャラを助けるために、領地開拓から始めることにした。
※※※
ストーリー重視なので、恋愛要素は王都編まで薄いです
推しキャラは~は、ヒーロー側の話(重複は基本しません)
※マークのある場所は主人公が少し乱暴されるシーンがあります
苦手な方は嫌な予感がしたら読み飛ばして下さい
○小説家になろう、カクヨムにも掲載しています
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる