ヒヨクレンリ

なかゆんきなこ

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~番外編~

朧とマタニティちーちゃん

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こちらは以前WEB拍手に載せていたSSです。
妊娠中の千鶴と朧のやりとり。

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 どうも、柏木千鶴でございます。
 現在妊娠七カ月の妊婦でございます。
 本日はとある平日のお昼時。
 我が家のお茶の間で、朧さんと二人でお弁当を食べております。

 あれから、朧さんは何度か板前さん特製のお弁当(体重管理中の私のために、塩分とカロリーを計算して下さったありがたいお弁当でございます)を差し入れに持ってきて下さって。今もそのお弁当を二人で食べております。
 美味ァ!! です。落ち着いたら、朧さんの所の板前さんにも改めてお礼を言いに行く所存であります!!

 ……ところで。
 最近気になっているのが、朧さんの視線……
 最初の頃はお弁当に夢中で気付かなかったのですが、朧さん、どうもちらっちらと私のお腹をですね、見ておられてですね。
 あはは。やっぱり気になるよね~。
 私も街で妊婦さんを見掛けると、ついつい視線がお腹にいってたもんな~。
 それに、やっぱり道を歩いていると見られますしね、お腹。
「わ、妊婦だ……」って感じの視線から、「あらあら大きいわね~。何カ月かしら」っていう――こちらは妊娠経験のある諸先輩方からの温かな視線だね――のとか。あとちっちゃい子とかは不思議そうな感じで見てくるし。
 あっ! 一度ですね、バスに乗っている時にですね!!
 男子中学生がね、照れくさそうに視線を逸らしながら「あの、どうぞ……」って席を譲ってくれた時がありまして。
 その時のこう……気になるけど見ちゃいけないものを見るような目でお腹をちら見していたあの恥ずかしそうな視線とか!! 萌え……ってオイオイ落ちつけ。話が逸れた。
 えー、つまりですね。お腹が大きいとこう、色んな視線に晒されるわけですよ。
 朧さんもちらっちらお腹を見ては、はっと顔を逸らし。でもやっぱり気になるのか、また視線がお腹にいっている。
 ……触りたい、のかな。正宗さんとかは触りたがりなので、触られるのは別に構わないけど。ご近所の宗憲君とか千代ちゃんとかも良く撫でに来てくれるし。(ちなみに宗憲君も千代ちゃんも、「早く生まれて来いよ! そしたら野球教えてやるぞ」とか「元気に生まれて来てね」とか赤ちゃんに話しかけてくれてね、もう、母としては頼もしいお兄さんお姉さんに心がほんわかしますですよ)
 っとまた話が逸れた。
 思い切ってこちらから声を掛けてみよう!
「朧さん、お腹触ってみます?」
「っ!!」
 ワーオ。
 あの冷静意地悪な朧さんが、びくってなった。びくって。
 驚いたような顔で固まった後、朧さんは視線を逸らし。
「べ、別にいい……」
 と小さく首を横に振ります。
 ふむ……
「………………」
 ……おやっ? でもまた今ちらっとお腹見たよね。
 やっぱり気になってるんじゃ……
「そう言わずに、良かったら撫でてやって下さい。この子も喜ぶんで」
「……よろこぶ……のか?」
 信じられない、と言いたげな朧さんの視線。
 お……。でもちょっと釣れたような感触だぞこれ。
「喜びますよ~。まあ、私がなんとなくそう感じてるだけかもしれませんが。人に撫でてもらった後、嬉しそうに動くんですよね~」
 そうなのだ。お腹の赤ちゃんは正宗さんとか、人にお腹を撫でてもらうとよく動くのです。それがなんとなく、私にはご機嫌なように感じられるのです。
「……………………じゃ、触る」
「~っ」
 なっ、なんでしょうかこの、「しょうがないから触ってやるんだぞ。べ、別に気になってなんかないんだからね」的な!! ツンデレ全開な感じ!!
 わ~、拗ねたような表情だけどその頬がちょっと赤い。か、かわゆい!! なにこの人かわゆい!! 照れている!! 朧さん照れてるよねこれ!!
「……っ」
 まっ、まさかこの目で照れている朧さんを見れる日が来ようとは……!!
 あっ、幸村先生はよくこんな表情の朧さんを見ているのかしらクフフフフフフ!!!(妄想が! 止まらない!!)

 すすす……と。
 私達はテーブルから横に逸れ、真正面に向かい合いました。
 さらにすす……と。正座の朧さんがにじり寄ります。無言です。
 そして両手を少し上げ、恐る恐る……といった感じで、私の大きなお腹に触れ……
「…………」
「…………」
 ふ、触れ……ました!!
「~っ!」
 と思ったらすぐさま離されました!! 一瞬でした。
 朧さん、びっくりしたような顔のまま固まっておられます。
「……朧さん」
「…………」
 お、どうやら再挑戦するみたいです。恐る恐る、触れてきます。
 朧さんの繊細な指先が、ゆっくりと包み込むようにお腹に触れました。
(あっ……)
 その時です。トントンっと、まるでお腹の赤ちゃんが朧さんに挨拶するみたいに、胎動しました。
「!! ……ほ、本当にいるんだな……。ここに……」
「はい。いますよ~」
「…………」
 朧さんはゆっくりと、お腹から手を離しました。
 気のせいか、朧さんの目尻が赤くなっています。それを隠すように俯いたまま、朧さんはまたすすすっとテーブルの前、座布団の上に戻りました。
 その後、何事もなかったかのように食事が再開されます。
 でも私は、お腹に触ってくれた時の朧さんの……
 びっくりしたような、でも、小さな命の存在に感動したような、そんな表情が忘れられず……
(ふへへ)
 にっこりと、してしまうのでした。


 そしてその後、この時の朧さんのあまりにも可愛い様子を幸村先生に知らせねばと長文メールを送ったことが朧さんにバレてしまい(ちなみに幸村先生からは「俺の恋人が可愛過ぎるどうしよう」と返信が来ました!)めっちゃ怒られたのでした。





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