ヒヨクレンリ

なかゆんきなこ

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~番外編 「年末年始企画」SS~

異世界トリップして騎士団長な正宗さんに助けられる夢の話

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「……え……と……」
 ここは、どこだろう……?
 辺りを見渡しても、何も無い。
 ただ風が吹き荒ぶだだっ広い草原に、私一人……
 おかしい! おかしいよ……!!
 さっきまで私、家の台所で夕飯の準備してたのに……!!
 現に、私はエプロン姿のまま。しかも手にはおたまを持っている。
「ま、まさか……異世界トリップ……!?」
 だってこんな草原、家の近くにないし!!
 って、ないない!! ないないない!! 学生の頃には異世界トリップに本気で憧れてたこともあったけどさ!!(いつか異世界への扉が開くと本気で信じていた黒歴史である)
 きっと夢だ!! 夢に決まって……

「キシャアアアアアアア!!!」

「ほぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」
 なっ、ななななななな!!!
 モンスター!? 
 虎に似た真っ黒い獣が、よだれを撒き散らしながらこっちに向かって来る!! 角あるし!! 爪鋭そうだし!!
 怖いよおおおおお!!!
「ひええええええええ」
 ゆ、夢でも食われれば痛いのかな!?
 そ、それに……!! ひゃ、百万分の一の確率でこれが現実だったら……? 私……っ!!
 死ぬる!!
「ちょ! ま、待って……!!」
 あわあわと焦る私を尻目に、モンスターはどんどん近付いてくる。
 なっ、何か武器になる物!! 木の棒とか!!(レベル1勇者の武器!!)
 って、おたましかねえええええっ!!
「ガウッ!!」
 モンスターが一気に跳躍し、こちらに飛びかかってくる。
 も、もう駄目だあああああああああ!!
「きゃああああああああっ!!」

「……っ! 危ないっ!!」

 ザシュッ!! っと。
 鋭い剣が獲物を斬り裂く音がした。
「…………?」
 恐る恐る目を開けると、そこには……
「大丈夫ですか……? お嬢さん」
 白馬に乗った王子様、ならぬ。
 黒馬に乗った、騎士様が……
(……って!? ま、正宗さん!?)
 そうなのです。
 いかにも西洋の騎士!! な恰好をして私のピンチを助けて下さったのは、旦那様の正宗さん!!
 ええ!? なにこれやっぱり夢!?
 っていうか正宗さんの騎士姿めっちゃかっこいいんですけどおおお!!
 こう、街娘になって出征する騎士の正宗さんに「キャアアア!! 騎士様素敵ー!!」って黄色い声援を送りたいくらい、カッコいいんですけどおおお!!!
「このあたりは、一角タイガーの巣に近い。一人で出歩くなんて、危険すぎます」
 騎士の正宗さんは、厳しい眼差しで馬上から私を一瞥する。
「ごっ、ごめんなさ……」
「……さあ、村まで送っていきます。乗りなさい」
 うえっ!?
 の、乗りなさいって、馬に!?
「…………」
 どうしよう馬なんて乗ったことないよ……
 っていうか、村!? 村って言われても……知らない場所だし……
 いやでもここ危ないって言ってるしな……
 ここにいるよりは人のいるところに言った方が……
 って!! これ夢なんだよね……? は、早く覚めてよおおおお……
「……はぁ。まったく……」
「え……?」
 私が一人考え込んでいる間に、騎士の正宗さんはため息を吐いて(っていうか待たせてましたよねすみませんん!!!)馬から降りると、

「……手のかかるお嬢さんだ」

 そう、言って。
 私の体を抱き上げ、う、馬に!!
 そしてご自分も馬に乗って、こ、これじゃあ私、後ろからぎゅって!! されてるみたいだようわああああああああああっ!!
「……飛ばしますよ? しっかり、掴まって」
「はっ、はひいっ!!」

 そうして騎士様は、私を近くの村まで送って下さいました。
 村の人達から聞いたんだけど、彼がこの国の騎士団長様、なんだって。
 王都の警備だけじゃなくって、こうして辺境の村々も周って、モンスター退治をしていってくれる……んだって。
 その後も、夢は覚めなくて。
 私は「記憶喪失の娘」ってことで、この村に置いてもらえて。
 第一発見者だからって、騎士団長様は時折、私の様子を見に来て下さって……

 後に私が魔王を倒すためにこの世界に召還された巫女姫だということが判明し、騎士団長様と魔法使いと神官とエルフとでパーティを組んで魔王討伐の旅に出て、その過程で私と騎士団長様は愛を育み、魔王を倒した後に「……姫、俺の妻に……なってください」とプロポーズされて……ってええええええええええ!!! これどこのトリップ小説よ!?
 オイ!!
 オイこら!!

「どんなドリームだよおおおおお!!! 私の馬鹿!!」

 はっ!!
 がばちょ!! と布団をめくりあげて目を覚ますと、そこはシュタインズヒルド(あ、例の国の名前です)の騎士団長様の館じゃなくって……
 柏木家の、寝室……でした。
 そして傍らで眠っていらっしゃる正宗さんも、騎士団長の正宗さんじゃなくって、高校教師の正宗さん……で。
(う、うわああああああああああああああっ!!)
 久しぶりに、アイタタター!! な夢を見てしまったああああ!!!
 異世界トリップとか!!(いや好きだけどねそういうの読むのは!!)
 そして自分が……っ、魔王を倒すひ、姫とかっ!!(誰得だ!!)
 そしてそして、騎士団長な正宗さんとの……っ、アレコレ!!!!
 すっかり主役気取りでした私!! 「騎士様……」とかって胸がトゥンクしてましたあああ!!! 
(うごおおおおおおおおっ……)
 そして私はしばらく、恥ずかしさといたたまれなさのあまりベッドの上でのたうちまわっていたのでした。おしまいっ!!


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