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ホワイトデー@旦那様は魔法使い

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短いです。
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 それはホワイトデーを数日後に控えた、ある日のこと。
「お父さん、ちょっと良い?」
 サフィールの店に現れたのは、彼の息子のルイスだった。
「……どうした?」
「ん。今年のホワイトデー、何を贈るか決めた?」
「いや……」
 そろそろ買いに行こうとは思っていたが、その場で選ぼうと思って具体的に『何を』とは決めていない。
「そっか。俺は今年、これを作ろうと思うんだよね」
 そう言ってルイスがサフィールに見せたのは、お菓子のレシピが載っている本の一頁。そこにはクッキーでできたお菓子の家が載っている。
 これを作るのか……。大作だな、とサフィールは思った。
「だからね、お父さん」
「…………」
 もしかして、ルイスは「これを一緒に作らない?」と誘いに来たのだろうか。
 ルイスは妹のステラほど魔法に興味を持たず、頼めば手伝ってくれるが自分から進んでサフィールと一緒に何かをしたがる……ということはあまりなかった。
 だから正直、サフィールは嬉しかった。こうして息子が、自分の所に来て……
「お父さんは、クッキー以外の物にしてね」
「ん?」
 しかし、息子の口から発せられた言葉はサフィールの予想とは違っていた。
「被るから。じゃ、そういうことでよろしく」
「…………」
 言ったきり、ルイスはもう用は無いとばかりに店から出ていく。
 それを目で追うサフィールの、どこか哀愁漂う背中に……
(あわわわわわ……)
 店の手伝いで居合わせていた茶色猫のネリーは、どうやってご主人様を慰めたものかと頭を悩ますことになった。


 その後、ネリーのアドバイスで「俺も一緒に作って良い?」とルイスに言ったところあっさり「いいよ」と言われたサフィールは、父子の共同作業でお菓子の家を作り上げ、妻と娘に大層喜ばれたのだった。



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