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茶色猫と灰色猫のおつかい

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 黒猫カルセドニーの尊い犠牲を払って、使い魔猫達は結構な資金を手に入れた。
 そしてそれを手に、茶色猫カーネリアンと灰色猫ソーダライトが向かったのは、街の仕立屋。
「こんにちはー」
「こんにちは」
 二人は揃って店内に入り、カウンターにいる店主にぺこりと一礼した。
「おや、魔法使い様の所の使い魔猫達じゃないか。今日はどうしたんだい?」
 この店の店主は、四十代半ばの細身の婦人。アニエスのパン屋の常連客でもある。
「今日は、ご主人様のローブと奥方様のドレスを仕立ててもらいたくて来ましたにゃん」
 よろしくお願いしますにゃ、とぺこりと頭を下げるライト。
「あのね、お二人には内緒なのですにゃ」
 ネリーは、人差し指を口元にもっていって、「しいーっなのにゃ」と真剣な顔。
 店主はにっと笑って、
「プレゼントかい?」
 と聞いた。
 この時期に、内緒で…ときたら、それはクリスマスプレゼントだろうと。
「「はいですにゃ」」
 二匹は声を揃える。
 サフィールとアニエスに、プレゼントのローブとドレスを用意する。
 それが、この二匹の役目だ。
「よしっ。それじゃあ、こちらにおいで」
 店主は言って、店内の隅に在るソファスペースに二匹を案内した。
 ここに座って、デザインや布地を客と話し合うのだ。
「ご主人様のローブは、いつもと同じ黒で。それで、いつもより良い生地で作って欲しいですにゃ」
 とライト。
「奥方様のドレスはね、赤いのがいいと思いますのにゃ。奥方様に、きっと似合いますにゃー」
 と、ネリー。二匹はそれぞれ真剣な顔で、店主が示す生地見本をじいっと見ては、あーでもないこーでもないと思案する。
「あっ、これがいいですにゃ」
 数ある見本の中から、ライトが選んだのは宵闇のような色合いの黒い布地。
 そして、
「これがいいにゃ!!」
 同じくネリーが選んだのは、薔薇の花弁をそのまま布地にしたような、深紅の布地。
「よしきた。魔法使い様のローブのデザインは、今までと同じでいいのかい?」
「はいですにゃ。ご主人様、今のローブをとっても気に入ってますのにゃ」
 ライトはこくりと頷く。
 内側にポケットが多く、薬草や魔道具を入れておくのに便利なのだ。
 それも、この仕立屋で作ってもらったものだ。
「でも一応、よそゆき用にゃので、かっこよく! して欲しいのですにゃ」
 ネリーは、意気込んで「かっこいいのが良いですにゃ!」と言う。
 具体的なデザインの要望…はない。
「かっこよく、だね。わかったよ」
  店主は苦笑して、メモに「かっこよく!」と書き足す。
「ドレスの方はどうする?」
「えっと、実はデザインを考えて来ましたのにゃ…」
 かさり、とポケットから紙を取り出すネリー。実は、昨夜白猫のジェダと二匹で「これがいい!」「これが似合う!」と意見を突き合わせて、デザインを考えてきていたのだった。
「…へえ、良いじゃないか。アニエスに良く似合いそうだ」
 そのデザイン画を見、店主はうんうんとうなずいている。
「えへへ。よろしくお願いしますにゃ」
「にゃ」
 そうして、クリスマス・イブまでに仕立ててもらうことを約束して、二匹は満足気に仕立屋を後にした。


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