上 下
24 / 49
五章

しおりを挟む
「あ、レオン! ちょっと!」

 ホームルームが終わって放課後。早々に帰り支度をしていたら、あかりに呼び止められた。なにやら数人で集まって盛り上がっている。中々動こうとしない俺に、雑なかんじで手招きをするあかりに、頭を捻ざるをえない。

「なに? どしたん?」
「あんたが言ってたでしょ。今度遊びに行きたいって」
「それを俺らが聞いて、せっかくだし皆で遊ぼうって話になったんだぜ!」
「そうそう! 青井君はどう?」

 おお、おもわぬ人達に飛び火してる。クラスメイト達と遊ぶ。まさに青春の一ページじゃないか。

 でも、目的がずれちゃうし。火山なんて観光に行きたがる高校生達なんて中々いない――

「俺らの近場ならどこがいいかな――」
「というかバスで行く? 電車?」
「ここ温泉卵とかあるらしいぜ!」
「ロープウェイ乗れるんだって――。すご~~い」

 いや全員ノリノリで草。

 嘘だろ? お前ら現代高校生か? もっと若者っぽいものに食いつけよ。俺が言えた義理じゃないけども。

「というか火口って見れるのかしら?」
「マグマとか溶岩楽しみだな~~」
「全員で記念写真撮ろうぜ!」
「お弁当持ってく?」

 テンション高すぎて草生えるわこんなん。なに? いつの間に火山が若者のトレンドになってるん?

「あ、委員長。委員長もよかったら俺らと一緒に遊びに行かね?」

 ちょうどタイミングよくクラスに戻ってきた子は神田川桃音さん。入学してすぐにクラス委員長になった子で、まさしく委員長らしい子だ。

「なんですか? 遊び?」

 不愉快とも怪訝がるでもなく、ローテンション気味は委員長は興味が惹かれたのか、ノリにのっている皆の元へ。

「そうそう! 火山でマグマとか溶岩とか見に行こうぜって話になってるんだ!」
「マグマに溶岩。海外に行くんですか?」
「いやいや! さすがにそこまでは無理だって! 近場にある火山でって話!」
「日本じゃマグマも溶岩も見れませんよ? 日本の火山は爆発性が強いので。マグマ湖とか火口からの流出を見るのは不可能です」
「ぷっ! 冗談だよ冗談! マジでマグマとかが見たいってわけじゃないさ!」
「はぁ」

 真面目な返しに盛り下がることはなかった。とにもかくにも、皆なんだかんだで遊ぶ目的とか皆で出かける理由が欲しかっただけなんだろう。

 それはそれでいい。でも。

「日本じゃマグマも溶岩も見れないのか………」
「あんたまじで見たがってたの?」

 わかりやすいくらい落ち込んだ俺に、あかりがツッコんでくれた。だってそうじゃないと聖剣を壊せるかどうか試せないし。

「で? どう? 委員長」
「ごめんなさい。ちょっと行けません」
「そうかぁ~~。じゃあしょうがないかぁ」

「ほら。元気出しなさいよ。火山がステージのゲーム一緒にやってあげるから」
「日本中の火山という火山が全部噴火して溶岩塗れになればいい」
「この世の終わりじゃない! どんだけ楽しみにしてたのよ!」
「大丈夫。そうしたら昔の経験が活きるから」

 溶岩の城で戦ったこともあるし。けど、あかりは「そんなゲームあったっけ?」と不思議そうな顔。そうこうしていたら、帰ろうとしていた委員長にぶつかってしまった。

 軽めだから怪我もないけど、「なにやってんのよ」とあかりに窘められた。反省しながら委員長に謝意を伝えようとする。

「ごめん。よく前見てな、か……た?」
「いえ、大丈夫ですが」

 委員長の顔をじろじろと見つめる形になったから、不思議がっている。

「あの、なにか?」
「いや、なんていうか。俺達本当に初対面?」
「は?」
「俺と委員長ってどこかで会ったことない?」

 なんでだろう。入学以前も合わせて学校外で会った記憶はない。けど、どこか既視感がある。顔立ちや声じゃないけど、なんでだか知っている人のようなかんじがした。

「さぁ。どこかで偶然出会ったか見かけたのでは? 私は青井君と初対面のはずです」
「そうか。そうだよなぁ~~~」

 ん~~。勘違いかな。「それでは」と短く挨拶をして、颯爽と委員長は自分の席に。まぁ俺の勘違いってことで、皆の中に戻らないと。

「ちょっとレオン。なんなのよ今の」

 ブレザーの端を掴んであかりが引き止めた。ちょっと怒ってるっぽい?

「委員長にナンパするなんて。ああゆう子がタイプなわけ?」
「はぁ?違ぇよ。まじで勘違いしたんだって」
「どうだか。ナンパする人の常套句で自分も若いころ使ってたってうちのお父さんも言ってたんだから」
「お前んちの家族の会話内容やばくね?」
「お父さんのことなんか抜け毛くらいどうでもいいのよ。それで? どうなのよ」
「どうって……普通の勘違いだって。本当に。どこかで見たような気がしただけだ。それだけだって」
「ふぅ~~ん。そう。まぁ別にどうでもいいけど。レオンがどんな子が好みとか付き合いたいとか結婚したいとか」

 ならなんで急に髪の毛三つ編みにしだしたし。

「おい二人とも! お前らも早くどこがいいか話せよ!」
「せぇの! で指さしたところが多かったところに決まるって話だけどそれでもだいじょぶ~~?」

 輪の中に戻ろうとするけど、あかりは何故か委員長を眺めている。そんなに俺が委員長に対して好意があるって気にしてるのか? やきもちみたいでちょっとかわいいじゃないか。

「あの者が。まさか本当に」
「?」
「これならば絶対に」

 ボソボソッとなにかを呟いたけど、ちょっと距離があって聞こえなかった。けど、すぐにこっちに来て「ごめん。なんの話だっけ?」と話に加わった。

 一瞬女神フローラっぽい雰囲気がしたような。おもわず嫌な予感がしちゃったけど。

 気のせい……だよな。あいつが今出てくる理由なんてないし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...