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一章
Ⅴ
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「レオン、パパお仕事行ってくるな~」
「うん・・・・・・・・・・・・」
「ん? おいおいどうした?」
離れなくちゃいけないって頭では理解できているのに、パパの足にしがみついたまま動けなくなっている。パパは笑いながら抱きかかえて、そのままキスをしてくる。
「もう~、レオンたら最近甘えんぼなんだから~~。じゃあママも~!」
ママがパパごと俺に抱きついてくる。息苦しくて四方八方からキスされまくるもんだから、恥ずかしさと照れでうわあああああああああ!! ってなってしまう。
「パパ頑張ってお仕事いってくるからな~~」
最近、俺は変だ。パパにもママにも甘えてしまう。そのせいで困らせているのに。俺は勇者だったのに。幼稚園に送られているときだって、離れていくママを見るのが辛くて、追いかけてしまう。
「ごめんね! レオン! ママ早くお迎えにくるからね!」
ママが泣きながら俺と抱き合うのは、もう恒例になっている。周りの子供達がからかってきたりするけど、反論しようがない。
「ねぇねぇれおんくん。さいきんほんよんでないよね。なんで?」
「いろいろあるんだよ」
「いろいろってなぁに~~~???」
「いろいろはいろいろさ。子供にはわからないことさ」
「おかあさんとおとうさんみたいなこというね~~。じゃあおままごとしよ~~」
あかりちゃんが、しきりに聞いてくるけど、正直それどころじゃない。子供としての感情、衝動に抗えなくなってきていて勉強どころじゃない。
このままじゃいけない。
「ちょっとトイレいくね」
「じゃああかりも~~~!」
「あかりちゃんは女の子でしょ。俺がいくのは男子トイレだよ」
「えええ~~~!? でもこのあいだれもんちゃんがだんしのといれはいってたよ~~~???」
「きっとれもんちゃん間違えちゃったんだね。男女が逆で年齢が違ったら捕まってるね」
「ええ~~??? どうして~~~???」
子供用のトイレは、扉も容器も小さくなっている。いざというとき先生が見つけやすいようにという配慮なんだろう。だから、それじゃあ俺の目的は果たせないから通常の男性用トイレに入った。
「ふっっ!」
意識を集中する。勇者だった頃は、こんなことしなくても自然と出現させられていた。困難になっているということがどれだけ悔しいか。もう俺は勇者じゃないってありありと示されているみたいで、余計躍起になる。
手の中にがっしりとした握り心地と重みをかんじて目を開ける。子供が持つにはあまりにも大きすぎて物騒すぎる代物。眩い光を帯びている。聖剣だ。
よし。まずは成功。そのままがっしりとかまえようとするけど、重力に引かれて、けたたましい音を立てて床に落ちる。誰かにバレないかって焦ってしまったけど、誰もこない。ほっと一安心して、全身に力をこめる。
「ぐぬぬぬぬぅぅぅぅ・・・・・・! 燃えろおおぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・・俺の勇者魂いいいいい・・・・・・・・・!」
いかんせん筋力も体幹もできあがっていない未熟な肉体では支えることすらできない。持ちあげて、そのまま体勢を維持することさえできない。
「あ~~」
聖剣は、フッと消えてしまった。体を動かしただけではない疲労も相まってぐったりと便器に座りこむ。子供が手にするには、精神と気力が足りないのだろうか。精も根も尽き果ててしまった。げっそりと力を聖剣に吸い取られてしまったみたい。
聖剣のクリスマスを境に再び聖剣を出せるようになった。今の俺には自由自在に使いこなすこともできないけど、少しずつ出現させられている時間を延ばすことを目標にしている。結果は芳しくなく、一~二分が限界。
それでも、だいぶ進歩したんだ。最初は聖剣を出現させることすらできなかった。出現させて喜び勇むと刹那で消えてしまう。幼稚園では人目を忍んでこっそりと。家ではパパとママがいないとき。夜寝る前。
それでも、俺はまだ勇者なんだって。まだ戻れるって希望になる。
「あ、れおんくんおといれながかったね~~」
「うんちしてたんじゃねぇの~~~??」
何が面白いのか。とかく子供は下系の話が好きらしい。ゲラゲラ笑いまくってるし、もう俺が大をしていたって事実ができあがっている。
「れおんくんさいきんかわったね~~~」
「え、なにが?」
「ん~~~?? みんなみたいになってる~~~」
「え?」
???
「もしかして・・・・・・・・・・・・」
みんな? 皆? 幼稚園の子供たちみたいになってるってこと? ショックだ。
「どこが?」
「んん~~~?? なんだかうれしそうなところとかあかるいところとか」
どういうことだ。勇者として戻ろうとしているだけなのに、逆に子供に近づいている?
「今度精神医学の本買ってもらおう」
この前テレビで言っていた。精神、つまり心。記憶。思い出は密接に繋がっている。心は勇者でも、精神が未熟な子供だからおかしくなっているのかもしれない。
「せいしんいがくってなぁに~~?? ほんよりあそぼうよ~~。まえのれおんくんもすきだけど、いまのれおんくのほうがもおおぉぉ~~~っとすきだよ~~~??」
「う・・・・・・・・・・・・」
ドキッとしてしまう。自分よりも精神年齢がとんでもない年下の女の子にときめいてしまうなんて、明らかにおかしい。勇者じゃない。これも精神と心の問題だ。昨今では成人男性が未成年と関係を持って捕まるなんて報道がざらにある。だからこそ危機感が違う。
たとえ実年齢は同じで法律的に問題であっても、勇者としての矜持が許さない。というか幼女に恋愛感情を持つ勇者なんて、女神様もブチ切れる。もしかしたらロリコン勇者としてむこうの世界に刻まれるかもしれない。聖剣だって・・・・・・・・・・・・・・・・。
「やっぱり、あかりちゃんは皆と遊んだほうがいいよ」
「ええ~~~?? なんで~~~??」
早くなんとかしないと。
「うん・・・・・・・・・・・・」
「ん? おいおいどうした?」
離れなくちゃいけないって頭では理解できているのに、パパの足にしがみついたまま動けなくなっている。パパは笑いながら抱きかかえて、そのままキスをしてくる。
「もう~、レオンたら最近甘えんぼなんだから~~。じゃあママも~!」
ママがパパごと俺に抱きついてくる。息苦しくて四方八方からキスされまくるもんだから、恥ずかしさと照れでうわあああああああああ!! ってなってしまう。
「パパ頑張ってお仕事いってくるからな~~」
最近、俺は変だ。パパにもママにも甘えてしまう。そのせいで困らせているのに。俺は勇者だったのに。幼稚園に送られているときだって、離れていくママを見るのが辛くて、追いかけてしまう。
「ごめんね! レオン! ママ早くお迎えにくるからね!」
ママが泣きながら俺と抱き合うのは、もう恒例になっている。周りの子供達がからかってきたりするけど、反論しようがない。
「ねぇねぇれおんくん。さいきんほんよんでないよね。なんで?」
「いろいろあるんだよ」
「いろいろってなぁに~~~???」
「いろいろはいろいろさ。子供にはわからないことさ」
「おかあさんとおとうさんみたいなこというね~~。じゃあおままごとしよ~~」
あかりちゃんが、しきりに聞いてくるけど、正直それどころじゃない。子供としての感情、衝動に抗えなくなってきていて勉強どころじゃない。
このままじゃいけない。
「ちょっとトイレいくね」
「じゃああかりも~~~!」
「あかりちゃんは女の子でしょ。俺がいくのは男子トイレだよ」
「えええ~~~!? でもこのあいだれもんちゃんがだんしのといれはいってたよ~~~???」
「きっとれもんちゃん間違えちゃったんだね。男女が逆で年齢が違ったら捕まってるね」
「ええ~~??? どうして~~~???」
子供用のトイレは、扉も容器も小さくなっている。いざというとき先生が見つけやすいようにという配慮なんだろう。だから、それじゃあ俺の目的は果たせないから通常の男性用トイレに入った。
「ふっっ!」
意識を集中する。勇者だった頃は、こんなことしなくても自然と出現させられていた。困難になっているということがどれだけ悔しいか。もう俺は勇者じゃないってありありと示されているみたいで、余計躍起になる。
手の中にがっしりとした握り心地と重みをかんじて目を開ける。子供が持つにはあまりにも大きすぎて物騒すぎる代物。眩い光を帯びている。聖剣だ。
よし。まずは成功。そのままがっしりとかまえようとするけど、重力に引かれて、けたたましい音を立てて床に落ちる。誰かにバレないかって焦ってしまったけど、誰もこない。ほっと一安心して、全身に力をこめる。
「ぐぬぬぬぬぅぅぅぅ・・・・・・! 燃えろおおぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・・俺の勇者魂いいいいい・・・・・・・・・!」
いかんせん筋力も体幹もできあがっていない未熟な肉体では支えることすらできない。持ちあげて、そのまま体勢を維持することさえできない。
「あ~~」
聖剣は、フッと消えてしまった。体を動かしただけではない疲労も相まってぐったりと便器に座りこむ。子供が手にするには、精神と気力が足りないのだろうか。精も根も尽き果ててしまった。げっそりと力を聖剣に吸い取られてしまったみたい。
聖剣のクリスマスを境に再び聖剣を出せるようになった。今の俺には自由自在に使いこなすこともできないけど、少しずつ出現させられている時間を延ばすことを目標にしている。結果は芳しくなく、一~二分が限界。
それでも、だいぶ進歩したんだ。最初は聖剣を出現させることすらできなかった。出現させて喜び勇むと刹那で消えてしまう。幼稚園では人目を忍んでこっそりと。家ではパパとママがいないとき。夜寝る前。
それでも、俺はまだ勇者なんだって。まだ戻れるって希望になる。
「あ、れおんくんおといれながかったね~~」
「うんちしてたんじゃねぇの~~~??」
何が面白いのか。とかく子供は下系の話が好きらしい。ゲラゲラ笑いまくってるし、もう俺が大をしていたって事実ができあがっている。
「れおんくんさいきんかわったね~~~」
「え、なにが?」
「ん~~~?? みんなみたいになってる~~~」
「え?」
???
「もしかして・・・・・・・・・・・・」
みんな? 皆? 幼稚園の子供たちみたいになってるってこと? ショックだ。
「どこが?」
「んん~~~?? なんだかうれしそうなところとかあかるいところとか」
どういうことだ。勇者として戻ろうとしているだけなのに、逆に子供に近づいている?
「今度精神医学の本買ってもらおう」
この前テレビで言っていた。精神、つまり心。記憶。思い出は密接に繋がっている。心は勇者でも、精神が未熟な子供だからおかしくなっているのかもしれない。
「せいしんいがくってなぁに~~?? ほんよりあそぼうよ~~。まえのれおんくんもすきだけど、いまのれおんくのほうがもおおぉぉ~~~っとすきだよ~~~??」
「う・・・・・・・・・・・・」
ドキッとしてしまう。自分よりも精神年齢がとんでもない年下の女の子にときめいてしまうなんて、明らかにおかしい。勇者じゃない。これも精神と心の問題だ。昨今では成人男性が未成年と関係を持って捕まるなんて報道がざらにある。だからこそ危機感が違う。
たとえ実年齢は同じで法律的に問題であっても、勇者としての矜持が許さない。というか幼女に恋愛感情を持つ勇者なんて、女神様もブチ切れる。もしかしたらロリコン勇者としてむこうの世界に刻まれるかもしれない。聖剣だって・・・・・・・・・・・・・・・・。
「やっぱり、あかりちゃんは皆と遊んだほうがいいよ」
「ええ~~~?? なんで~~~??」
早くなんとかしないと。
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