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一章

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「う、うう~ん」
「お、起きたか」

 微妙な頭痛と異臭、そして体の痛み。起きてかんじたのはまずそれら。部屋を見渡すと健と男友達しかいない。二人で呑気にゲームしてる。

「れ、他の皆は?」
「ん~? れみちゃんは先輩の家に泊りに十時頃出て行って、他の子たちも一時くらいには帰ったぜ」
「そっか」
 
 まだ気怠げなかんじと眠気がさめない。冷蔵庫に行って飲み物を探すけどなにもない。仕方なく味気ない水道水を二杯一気に呷る。

「れみちゃん、お前のこと心配してたぜ?」
「そっか・・・・・・・・・」
「あと、お前ら本当になんにもないんだよな?」

 こいつ、もしかしてれみのこと狙ってるのか? だとしたら断固として阻止しないと。いやれみがどんなやつと付き合おうと自由だし俺が今更口出す権利はない。けど、こいつはだめ、絶対。

「もしお前高校生に手だしたら、インタビューの時いつかやるとおもってましたって答えるからな」
「庇えよそこは!」
「それに、お前がしつこく貸してきたDVDも証拠として警察に提供する」
「火に油を注ぐなよ! あんなの俺のフェチの一部でしかねぇから! 女子高生もののDVD提供されたら言い訳できなくなるだろ!」
「まぁお前が誰と付き合おうと自由だけど、覚悟をもってやれってことだ」
「大丈夫だ。責任はとる。さきっちょだけだ」
 
 だめだこいつ。早くなんとかしないと。けど、健はそれ以上しつこく言ってくることはなかった。高校生と関係を持つことの危険性を理解したのか、それとも飽きたのか三人でゲームに没頭する。今日は皆予定がないから、久しぶりに楽しめた。

 二人が帰ったのは昼頃。部屋はまだ汚くて、洗い物とゴミまみれ。一気に片付けなくてはいけないけど、一人でやるってのが気分的に盛り下がる。ちょうど腹も減ってきたから外に出て食事に行った。栄養補給をして力をつけてから改めて片付けをするつもりだった。けど、部屋に戻ってクーラーをつけると急に眠気が。食事したのがいけなかったのかと抗う気になれず、そのまま昼寝。こんなにゆったりと過ごせるのは、何日ぶりだろうってくらい心地よい眠りだった。

「これはどういうことですか兄さん!」

 つんざく悲鳴みたいな大声に、飛び起きる。れみが仁王立ち&腕組で、俺を見下ろしている。

「え、お前なんで!?」
「なんでじゃありません! いくらなんでもひどすぎます!」

 え? え? どういうこと?

「どうしてまだ昨日の食器やごみが片付けられていないんですか! 部屋の鍵だって開けっぱなしです! 炊飯器も鉄板も! 窓さえ開けていないじゃないですか!」

「いや、それはこれから――――」
「言い訳なんて聞きたくありません! 普段からこんな風にだらしないのでしょう!?」
「いやあのな?」
「それにゴミ箱も! 部屋の中もむこうのほうのもちゃんと分類できていません! お風呂場だって黴だらけではないですか! 布団だって干していないでしょう! スプレーだけ拭いて満足しているんじゃないですか!? 食べ残しだってこの季節腐りやすくなってどんな害を広げるか! 兄さんは知っていますか!?」
「え!? 風呂場とゴミ箱ってお前いつ見たの!? それに布団って!?」
「そんな些末なことどうでもいいんです! というか若干昨日よりごみとか増えてます! まさか起きてまた散らかして放置していたんじゃないですか!? 冷蔵庫の中身だって賞味期限切れのものと冷凍品とレトルトしかないじゃないですか!」
 
 ぎくり。

「やっぱり・・・・・・・兄さんがこんな自堕落な人になっていたなんて・・・・・・・・・それなのに私のこと変わったとか変わってないなんて心を惑わして。よく言えますね! それでも年上ですか!?」

 どうしよう。反論できない。いつの間にか正座になってしまうくらいかしこまってしまう。

「もう我慢できません。私、兄さんのこと矯正します」
「え?」
「ちょうど夏休みですし、いい機会です。こんな人と一時は兄妹であったなんて知られたら、私の沽券に関わります。なので私が兄さんを真人間に戻します。覚悟してください」

 やる気でメラメラと燃えあがっているれみの迫力に呑まれてしまう。矯正。真人間。沽券。どういう意味か。れみはなにをするつもりなのか。

「ええええええええええええええええええ!!??」

 とりあえず、今後もれみと会えるというのは確実だった。
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