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プロローグ
どうしてこうなった
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「まったく、兄さんはどうしてこんなにだめなんですか?」
美少女が呆れた様子で室内をくまなくチェックしている。テレビ台の裏、仕切り戸の隙間、エアコン。指をスー・・・っと這わせる念入りな姿はもう年季の入った姑。嫁いびりに耐える女性はこんな心境かと内心ビビりまくる。
「常日頃から言っていますよね? 掃除は定期的に行わなければすぐに埃も溜まってしまうし、そのまま放置しておけば病気にも繋がるんですよ」
埃を丸めて顔を顰めながらの説教は、嫌悪感バリバリ。恐怖のみならず罪悪感まで芽生える。
「それにお風呂場も窓や戸を開けて換気しておかなければすぐにカビが繁殖します。カビがどれだけ大変か説明していますよね?」
「いや、あの・・・・・・」
「しましたよね?」
「・・・・・・はい」
心底だめだ、とでも言いたそうなため息をついてキッチン、次いで冷蔵庫へと移動する。ここは大丈夫だろう。キッチンは利用頻度が高くて掃除を心がけてるし、実際に奇麗だ。冷蔵庫の中身だって充実させている。
「レシートを確認します」
「へ?」
褒められるとまではいかなくても自信があった俺は面喰らってしまう。
「ですからレシートです。無駄遣いしていないか、次は安く抑えられないか。徹底的にレクチャーします。スーパーのチラシや特売日についても常々言っていますよね? 仮にも親に養われているんですから、一円でも安くして」
ええ~。そこまで? こいつもう難癖つけたいだけなんじゃない?
「まぁいいです。家計簿の付け方と合わせて、後で」
帰ってほしい。切実にそう思う。家計簿なんてくそめんどくさいこと、きっと徹底的にレクチャーするつもりでいる。今でさえ結構大変なのに。
「夜ゲームする時間や遊びに回す余裕があればできますよね?」
反論できないのは、ぐうの音も出ない正論だからじゃない。この子と俺の関係性を鑑みると正面からは言えないのだ。また会えて嬉しい、申し訳ない。いろいろごちゃごちゃになっている。接し方や距離感まで測りかねているくらいなんだから。
「なんですか?」
とてつもない美少女だ。まだ幼さを残したあどけなさと大人になりかけている未成熟さ。身長のせいで見上げているこわいとすらかんじる視線は意志の強さと確固たる自信があるからか。口調と相まって規律正しい厳しさを随所にかんじる。
記憶にある小さい女の子とどうしても繋がらない。俺の知ってるこの子は、泣き虫で甘えん坊で意地が強くて。できることよりできないことのほうがたくさんあって。俺にべったりくっついていつも一緒で。
『れみねぇ~。おにいちゃんのお嫁さんになる!』
懐かしい。昔よくそんなこと言ってたっけ。ははは。今じゃすっかり変わっちゃって。あどけなさと素直さなんて欠片もない。
「昔はもっとかわいかったのに」
独りごちて、刹那的に口を押さえる。やばい。聞かれなかったか。けどどうやら過去を振り返っている間に移動したみたいでもう目の前には誰にもいなかった。
「いやああああああああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁ!!!」
隣の部屋から悲鳴が。すぐに向かうと、あるDVDのパッケージを手にワナワナと震えて赤くなっている。
「こ、これは・・・・・・」
終わった。瞬間的に悟る。あれは俺のお気に入りのエロDVD。ああいうものが苦手だから、隠していたのに。
「兄さんの浮気者!!」
「ええ!?」
予想外の罵倒すぎて、面喰らう。
「変態!! 露出好き!! 倒錯的異常性癖者!! なんですかこれは!! 外でとか体にボディペイントしてそのまま外で楽しむなんて!! どれだけ歪んでいるんですか!!」
「性癖とか内容が丸わかりの罵倒はやめろ!!
ご近所に迷惑だろ!!」
あと今後の俺の周囲からどう見られるか考えろ。
「しかもすべて女優さんが違います! 前回のときのもです!! これは兄さんが複数の女性とエッチなことがしたいという欲望があるということです! 恋人ができても二股三股して、結婚しても不倫や愛人を平気でする大人になってしまうことの証明です!!」
「暴論がすぎる!」
「しかも高校生物がありません! 」
「それがなんだ!?」
「兄さんの浮気者!!」
「だからどうしてだあああ!」
「いやあああああ! 私汚されましたああ! 兄さんの趣味を知って汚されちゃいましたあああああああああああぁぁぁ!!」
「お前が自分で見たんだろおおおおおお!」
「いや! 来ないでください!! 私にも同じことがしたいのでしょう!? 全裸にしてその上からボディペイントして服を着せてるように装わせて外に歩かせて徐々に絵の具が落ちていって恥ずかしがってるさまを楽しみたいんでしょう!? そのまま公園で無理やり犯すんでしょう!? そのDVDみたいに!!」
「だから俺がどんなDVD持ってるかご近所に知られる罵倒やめてくれえええええええ!!」
耐性がないからか、妄想がすぎるからか。とにかく言ってることがめちゃくちゃでつっこみまくってしまう。というかもう外歩けない。
「兄さんは変わってしまいました」
少し冷静になったのか。若干涙目のまま少し荒い息で見つめられると、不覚にもドキッとしてしまう。すぐにそんな自分を戒める。この子にそんな感情抱くな、と。
「やはり今後は更に厳しくしなければいけません。兄さんが世に解き放たれれば女性たちがどんな被害を受けるか。ようっく、わかりました。倫理感を今のうちに直しておかなければ社会に出たとき、私にまで迷惑がかかります。徹底的に矯正させていただきます」
り、理不尽・・・・・・。エロいことを避けてきたこの子にとってはエロDVDとか好みとか男の性に関することは理解できないのか。それともやっぱり俺のせいなのか。
俺の生活がだらしない。そう言って押しかけてくるようになって、どれだけ経っただろう。矯正。もう何度目かわからないその言葉が俺の自尊心とメンタルを更にボコボコにする。毎回四歳も年下の女の子に怒られてチェックされて。情けないやら恥ずかしいやら。年上の尊厳とか、来るたびにぶち壊される。
けど、俺には拒みようがない。この子にしたことを考えれば・・・・・・。それにこの子とまた会えるようになって、嬉しいし。
けど、どうしてこんなことになってしまったんだろう。この子はどうしてまた会ってくれるようになったんだろう。あんなことをしてしまったのに。
「なんですか? その目は。私のしていることに文句でも? でしたら文句の言われない生活習慣を身につけるべきでは?」
くそ、正論すぎて言い返せねえ!
「なるほど。わかりました。私を無理やりてごめにするつもりですね」
「はぁ!?」
「いらだちとストレスを抱えて私を無理やり襲って・・・・・・。その後も撮影した内容を使って関係を強要し続けて、そのうち私から求めるように仕向けて、所かまわず道具とか使って都合のいい性奴隷にするつもりなんでしょう。矯正されるのは兄さんでなく私ということですか。なるほど」
「なるほどじゃねえええ!!」
なにいきなり突拍子のねぇことほざいちゃってんのこの子は。
「兄さんは変わってしまいました」
「いやお前がな?」
「昔の純粋無垢だった兄さんはもう死んだのですね。私と会わない間に、悪の道に走ってしまったのですね」
「つまり昔からこのような歪んだ性癖だったと? 幼い私に対してもこのようなことをしたがっていたと? なら私のせいで兄さんは変わってしまったということですか。責任をとらせてもらいます」
「人の話を聞いてくれって・・・・・・」
本当・・・・・・・・・・・・・・どうしてこんなことになっちまったんだ・・・・・・・・・。
この子、竹田零実。かつて義妹だった女の子。現他人。どうして元義妹が今俺のアパートにいるのかを考えると、自然と振り返ざるをえなくなる。一緒に暮らしていたときのこと。そして再会したときのこと。
振り返ったうえでもわからない ・・・・・・。本当、どうしてこうなったんだろう。
美少女が呆れた様子で室内をくまなくチェックしている。テレビ台の裏、仕切り戸の隙間、エアコン。指をスー・・・っと這わせる念入りな姿はもう年季の入った姑。嫁いびりに耐える女性はこんな心境かと内心ビビりまくる。
「常日頃から言っていますよね? 掃除は定期的に行わなければすぐに埃も溜まってしまうし、そのまま放置しておけば病気にも繋がるんですよ」
埃を丸めて顔を顰めながらの説教は、嫌悪感バリバリ。恐怖のみならず罪悪感まで芽生える。
「それにお風呂場も窓や戸を開けて換気しておかなければすぐにカビが繁殖します。カビがどれだけ大変か説明していますよね?」
「いや、あの・・・・・・」
「しましたよね?」
「・・・・・・はい」
心底だめだ、とでも言いたそうなため息をついてキッチン、次いで冷蔵庫へと移動する。ここは大丈夫だろう。キッチンは利用頻度が高くて掃除を心がけてるし、実際に奇麗だ。冷蔵庫の中身だって充実させている。
「レシートを確認します」
「へ?」
褒められるとまではいかなくても自信があった俺は面喰らってしまう。
「ですからレシートです。無駄遣いしていないか、次は安く抑えられないか。徹底的にレクチャーします。スーパーのチラシや特売日についても常々言っていますよね? 仮にも親に養われているんですから、一円でも安くして」
ええ~。そこまで? こいつもう難癖つけたいだけなんじゃない?
「まぁいいです。家計簿の付け方と合わせて、後で」
帰ってほしい。切実にそう思う。家計簿なんてくそめんどくさいこと、きっと徹底的にレクチャーするつもりでいる。今でさえ結構大変なのに。
「夜ゲームする時間や遊びに回す余裕があればできますよね?」
反論できないのは、ぐうの音も出ない正論だからじゃない。この子と俺の関係性を鑑みると正面からは言えないのだ。また会えて嬉しい、申し訳ない。いろいろごちゃごちゃになっている。接し方や距離感まで測りかねているくらいなんだから。
「なんですか?」
とてつもない美少女だ。まだ幼さを残したあどけなさと大人になりかけている未成熟さ。身長のせいで見上げているこわいとすらかんじる視線は意志の強さと確固たる自信があるからか。口調と相まって規律正しい厳しさを随所にかんじる。
記憶にある小さい女の子とどうしても繋がらない。俺の知ってるこの子は、泣き虫で甘えん坊で意地が強くて。できることよりできないことのほうがたくさんあって。俺にべったりくっついていつも一緒で。
『れみねぇ~。おにいちゃんのお嫁さんになる!』
懐かしい。昔よくそんなこと言ってたっけ。ははは。今じゃすっかり変わっちゃって。あどけなさと素直さなんて欠片もない。
「昔はもっとかわいかったのに」
独りごちて、刹那的に口を押さえる。やばい。聞かれなかったか。けどどうやら過去を振り返っている間に移動したみたいでもう目の前には誰にもいなかった。
「いやああああああああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁ!!!」
隣の部屋から悲鳴が。すぐに向かうと、あるDVDのパッケージを手にワナワナと震えて赤くなっている。
「こ、これは・・・・・・」
終わった。瞬間的に悟る。あれは俺のお気に入りのエロDVD。ああいうものが苦手だから、隠していたのに。
「兄さんの浮気者!!」
「ええ!?」
予想外の罵倒すぎて、面喰らう。
「変態!! 露出好き!! 倒錯的異常性癖者!! なんですかこれは!! 外でとか体にボディペイントしてそのまま外で楽しむなんて!! どれだけ歪んでいるんですか!!」
「性癖とか内容が丸わかりの罵倒はやめろ!!
ご近所に迷惑だろ!!」
あと今後の俺の周囲からどう見られるか考えろ。
「しかもすべて女優さんが違います! 前回のときのもです!! これは兄さんが複数の女性とエッチなことがしたいという欲望があるということです! 恋人ができても二股三股して、結婚しても不倫や愛人を平気でする大人になってしまうことの証明です!!」
「暴論がすぎる!」
「しかも高校生物がありません! 」
「それがなんだ!?」
「兄さんの浮気者!!」
「だからどうしてだあああ!」
「いやあああああ! 私汚されましたああ! 兄さんの趣味を知って汚されちゃいましたあああああああああああぁぁぁ!!」
「お前が自分で見たんだろおおおおおお!」
「いや! 来ないでください!! 私にも同じことがしたいのでしょう!? 全裸にしてその上からボディペイントして服を着せてるように装わせて外に歩かせて徐々に絵の具が落ちていって恥ずかしがってるさまを楽しみたいんでしょう!? そのまま公園で無理やり犯すんでしょう!? そのDVDみたいに!!」
「だから俺がどんなDVD持ってるかご近所に知られる罵倒やめてくれえええええええ!!」
耐性がないからか、妄想がすぎるからか。とにかく言ってることがめちゃくちゃでつっこみまくってしまう。というかもう外歩けない。
「兄さんは変わってしまいました」
少し冷静になったのか。若干涙目のまま少し荒い息で見つめられると、不覚にもドキッとしてしまう。すぐにそんな自分を戒める。この子にそんな感情抱くな、と。
「やはり今後は更に厳しくしなければいけません。兄さんが世に解き放たれれば女性たちがどんな被害を受けるか。ようっく、わかりました。倫理感を今のうちに直しておかなければ社会に出たとき、私にまで迷惑がかかります。徹底的に矯正させていただきます」
り、理不尽・・・・・・。エロいことを避けてきたこの子にとってはエロDVDとか好みとか男の性に関することは理解できないのか。それともやっぱり俺のせいなのか。
俺の生活がだらしない。そう言って押しかけてくるようになって、どれだけ経っただろう。矯正。もう何度目かわからないその言葉が俺の自尊心とメンタルを更にボコボコにする。毎回四歳も年下の女の子に怒られてチェックされて。情けないやら恥ずかしいやら。年上の尊厳とか、来るたびにぶち壊される。
けど、俺には拒みようがない。この子にしたことを考えれば・・・・・・。それにこの子とまた会えるようになって、嬉しいし。
けど、どうしてこんなことになってしまったんだろう。この子はどうしてまた会ってくれるようになったんだろう。あんなことをしてしまったのに。
「なんですか? その目は。私のしていることに文句でも? でしたら文句の言われない生活習慣を身につけるべきでは?」
くそ、正論すぎて言い返せねえ!
「なるほど。わかりました。私を無理やりてごめにするつもりですね」
「はぁ!?」
「いらだちとストレスを抱えて私を無理やり襲って・・・・・・。その後も撮影した内容を使って関係を強要し続けて、そのうち私から求めるように仕向けて、所かまわず道具とか使って都合のいい性奴隷にするつもりなんでしょう。矯正されるのは兄さんでなく私ということですか。なるほど」
「なるほどじゃねえええ!!」
なにいきなり突拍子のねぇことほざいちゃってんのこの子は。
「兄さんは変わってしまいました」
「いやお前がな?」
「昔の純粋無垢だった兄さんはもう死んだのですね。私と会わない間に、悪の道に走ってしまったのですね」
「つまり昔からこのような歪んだ性癖だったと? 幼い私に対してもこのようなことをしたがっていたと? なら私のせいで兄さんは変わってしまったということですか。責任をとらせてもらいます」
「人の話を聞いてくれって・・・・・・」
本当・・・・・・・・・・・・・・どうしてこんなことになっちまったんだ・・・・・・・・・。
この子、竹田零実。かつて義妹だった女の子。現他人。どうして元義妹が今俺のアパートにいるのかを考えると、自然と振り返ざるをえなくなる。一緒に暮らしていたときのこと。そして再会したときのこと。
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