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一九章
Ⅰ
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しずしずと、異様な雰囲気を纏った集団。手にはどこから調達したのか物騒で荒々しい武器の類。中には見慣れた仕事で使う物、農具まであるのだから、彼らの目的を推し量ることさえ恐怖に近い。
一際おかしいのは、集団の様子だ。怨嗟も怒号も、何も発していない。目は虚ろでどこか呆けている。ただ静かに行進を続けている。
目当ての場所にたどり着いたのだろうか。足並み乱れず身じろぎもせず立ち尽くしている。にしても、まるで規律がとれている軍隊が命令を待っているかのようで
屋敷の住人が、集団に気づいた。
人の子らよ。呪いたまえ。
空気が変わった。感情という熱が急に彼らに灯った。それがゆっくりと伝播していく。
呪いたまえ。呪いたまえ。心の赴くに委ねよ。さすれば願いは平穏は戻ろう
どこからともなく声なき声は、怪しくも心を落ち着かせるほどの音色を備えながら人々を狂わせていく。聞きなれないエルフの言葉がある種の思惑によって別の力に変換され、空気に溶け、憎悪を掻き立てていく。
「殺せ」
「殺せ」
怒りが憎悪へ。憎悪は殺意へ。門へと殺到し荒々しく破壊していく。柵を登り、飛び越え、手にした武器を振るい、手当たり次第に暴れる。
混乱と悲痛な叫びが増幅し、広がっていく。
一際おかしいのは、集団の様子だ。怨嗟も怒号も、何も発していない。目は虚ろでどこか呆けている。ただ静かに行進を続けている。
目当ての場所にたどり着いたのだろうか。足並み乱れず身じろぎもせず立ち尽くしている。にしても、まるで規律がとれている軍隊が命令を待っているかのようで
屋敷の住人が、集団に気づいた。
人の子らよ。呪いたまえ。
空気が変わった。感情という熱が急に彼らに灯った。それがゆっくりと伝播していく。
呪いたまえ。呪いたまえ。心の赴くに委ねよ。さすれば願いは平穏は戻ろう
どこからともなく声なき声は、怪しくも心を落ち着かせるほどの音色を備えながら人々を狂わせていく。聞きなれないエルフの言葉がある種の思惑によって別の力に変換され、空気に溶け、憎悪を掻き立てていく。
「殺せ」
「殺せ」
怒りが憎悪へ。憎悪は殺意へ。門へと殺到し荒々しく破壊していく。柵を登り、飛び越え、手にした武器を振るい、手当たり次第に暴れる。
混乱と悲痛な叫びが増幅し、広がっていく。
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