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十一章
Ⅵ
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工房で研究を一段落させたあと、尋常ではない疲れと眠気がおそってきた。考えてみれば、投獄されてから今日までゆっくり休めていなかったかもしれない。いつもなら眠気なんて気にしないほど集中できていたけど、このまま続けてもきっとよくない。
もう寝ようか。早々にベッドへと辿りついたはいいものの着替えをするのも億劫だったのでそのままダイブした。勢いが強かったぶん、バウンドと衝撃で弾んだ。けど、安物でボロボロのベッドの寝心地でさえ今の俺にはたまらなくありがたい。簡単に微睡みへと落ちていく。
もふっ。
あ、これルウの尻尾だ。毛布とシーツとは違う感触がかすかに手を刺激する。極上のシルクなんか勝てっこない毛並みはどこまでも滑らかでふわふわで、俺の指を包み込みながら包んでいく。そのまま撫でながら――――
「!?」
消失しかけていた意識が一瞬で覚醒する。毛布を捲る。衝撃過ぎて喉が擦り切れる悲鳴をぐっと堪えた。悲鳴を体を縮こませて膝を抱えて寝ているルウがいたんだ。夢でも幻なんかでもない。耳と尻尾を触って現実だってはっきりとたしかめる。
「すぅー・・・・・・すぅー・・・・・・」
「あの、ルウ? 起きて?」
どうしてルウが俺のベッドに寝ているのか。久しぶりすぎて間違えたとか? ともかく、このままじゃいけない。
「むにゃ、ご主人様?」
半目でぼぉ~っとしているルウが最高にかわいすぎておはようと言いかけたけど、まだそんな時間じゃないからとやめた。
「まさか、夜這いですか?」
「違うよ?」
「しかしご主人様汗くさいですし、目も血走ってますし」
「うん。それは研究してたから」
「そうですか。それではどうぞ」
「なんでそうなる!?」
ルウはそのまま後ろ向きに倒れて横になった。それでなにをどうぞなんだ。
「ぐーすか・・・・・・・・・もう食べられませんむにゃむにゃ」
「無理して寝たふりしても通らないよ! 瞼ガン開きなんだから!」
「むにゃむにゃ・・・・・・・・・ご主人様、それは・・・・・・・・むにゃむにゃ」
「意味深なことわざと言うな! なにがしたいんだ!」
くそ、こうなったら『念話』でなにを考えてるか読むしかない。
――――へたれ。意気地なし。童貞。腰抜け――――
「意味がわからない! ただの罵倒じゃねぇか!」
――――ここまでしているなんて、ご主人様はあほですね。いえ、間抜けです。いえ、屑です。食べ終わったお肉の骨にも劣ります――――
「俺はゴミ以下ってこと!?」
――――『もふもふタイム』、どれだけやっていないか覚えていないのですか?――――
え? どういうこと?
――――主の疲れを癒やすのも奴隷の役目です。ご主人様の一番癒やされるであろう『もふもふタイム』を存分にできる状況を敢えて用意したと、おわかりになりませんか――――
ルウ・・・・・・・・・それって。おもわず、ルウの顔を見てしまう。ルウは不満げに口を尖らせて、枕に顔を埋めて隠してしまう。体ごとくるりと回転して俯せに、自然と尻尾が強調されてしまい、ふりふりと振られている。どうぞと誘っているような動き。
――――これで満足ですかこのやろう。『念話』なんて使わなくてもそれくらい察してください――――
ああ、なんて俺は幸せ者なんだ。ルウにとって負担になる『もふもふタイム』をまさか彼女自身から誘ってくれるなんて。これは主従関係とか奉仕精神を越えた献身。もっといえば愛。つまり、これはルウなりの告白と同意義。
――――気持ちの悪い妄想は大概にしてください。あなたの考えだって私に伝わっているんですよ――――
はっとしてルウに視線を向けてしまう。ルウは枕からこちらをジトッと睨んでいる。しょんぼりとしたけど、気をとり直して、準備をする。指を鳴らして簡単にマッサージとストレッチ。万全な状態で尻尾を堪能する。
もふっと、まずはゆっくり全体を掌で感触を味わう。
うわ、うわああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。指が蕩ける・・・・・・・・・・・・・・。こんなに気持ちよかったっけ・・・・・・・・・。ふわ、わあああああ~~~~~~~~~。
――――心の声で、んん、気持ちの悪い感想が・・・・・・・・あんっ――――
ルウの口から吐息となにかを我慢する小さい悲鳴、そして『念話』で聞こえてしまう心の中の素直な感想が、脳を麻痺させる。両手で尻尾の縦横、全方向から無尽に。そして挟み込んで少し圧してみる。決して大きくはない反発力を楽しみながら上下に擦る。
――――いや、そんな――――
指を立てて、毛並みにツッコむ。隙間一つ一つの神経が刺激されて溜息しかでない。
――――あ、爪が――――
『念話』とともに、わずかに体が反応を示した。痛かったのかと不安になって、ぴたりと止める。
――――気持ちよかった。芯の部分に当たって――――
え、と驚いて軽く爪を立てる。つん、と奥のほうの固い部分に触れると、
――――あ、いい。そこ――――
これか。これがいいのか。小さく痙攣を繰り返すルウが面白くて楽しくて、爪先で遊んでしまう。指で梳きながらわざと爪でつんつんと。ときには連続で素早く。ときにはゆっくりと。『念話』でルウの嬌声に等しい声と反応、たまらず尻尾を掴む。撫で回す。ルウの声が大きく激しくなってきた。
顔を埋める。顔が千切れんばかりに頬ずりをする。
――――吐息が、くすぐったい。いや・・・・・・・・ダメ――――
抱きしめながら口づけを繰り返す。俺のすべての持っているパーツで、ルウの尻尾を愛で、味わい、弄り、堪能する。ルウの雄叫びに似た嬌声、素直な心の声が、俺の理性の枷を外していって、なにをしているのかも判断できなくさせる。我慢なんてしなくてもいい。本能のままに任せよう。そのまま一心不乱に尻尾を味わっていく。
「はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・・・・・。ご主人様、ご満足・・・・・・・・・・・んふぅ・・・・・・・・・・・・されましたか・・・・・・・・・?」
熱い吐息を荒げさせて、ぐったりとしたルウが問いかけてきた。
「ああ、もう死にそうだった・・・・・・・・・」
「さようですか・・・・・・・・・・・・ようございました・・・・・・・・・」
俺も寝転がって、休憩をとる。だめだ、このままじゃ保たない。それほど疲れてしまった。もうなにもしたくなくなるほど。今までできていなかった反動なのか、『念話』で魔力を消費していたからか。夢中でやり続けてしまった。そのせいでルウと俺への負担もいつもの比じゃない。『念話』の効果でルウの心の声で、快感が倍増して時間さえ忘れてしまっていた。
なんにしろ改めて危険なものだってはっきりした。『もふもふタイム』。そして『念話』。この二つの相性は表裏一体。これをずっと続けていたらなにも手に付かない。永遠にやり続けていたら、そのままきっと死んでしまう。それだけの力を秘めている。なんておそろしい魔法を創りだしてしまったんだろう。まだ俺には、いや。世界には早すぎたのかもしれない。
いや、でも『もふもふタイム』でルウを楽しめて死ねたらそれはそれで幸せか?
――――本当は・・・・・・・・・もう少しやってほしいような――――
『念話』を解除し忘れていたからか、ルウの心が伝わってくる。それが、ムラムラッと情欲を掻きたてられる。だめだ。もう今日は寝ないと。本当にこれ以上は死んでしまう。
――――なんて、私はなに勝手なことを。ご主人様を優先しなければ。でも、やってほしい――――
きゅん・・・・・・・・・・・。
がばっとルウに覆い被さる。いきなりのことで、ルウが目をぱちくりと瞬かせている。
「え? ご主人様、なにを?」
ごめん。我慢できない。言葉にするのもまどろっこしくて、『念話』で謝る。そして、また『もふもふタイム』を再開する。ルウの声が、男女のくぐもった絡み合う睦みが、響き渡る。
二回目じゃまだ足りない。三回、四回。もう数えるのさえできなくなるほど、ルウが息が絶え絶えになるほど、呼吸しているのさえうっとうしいほど没頭していく。数を重ねるごとに激しさを増す『もふもふタイム』は、終わらない。いつ果てるかしれない俺たちだけに許された行為に、二人は溺れていく。
いつまでやっていたのか記憶すら定かじゃない。愛している。好きだ。生きている。帰ってきた。覚えているのは、心の中で唱え続けたことだけだった。
もう寝ようか。早々にベッドへと辿りついたはいいものの着替えをするのも億劫だったのでそのままダイブした。勢いが強かったぶん、バウンドと衝撃で弾んだ。けど、安物でボロボロのベッドの寝心地でさえ今の俺にはたまらなくありがたい。簡単に微睡みへと落ちていく。
もふっ。
あ、これルウの尻尾だ。毛布とシーツとは違う感触がかすかに手を刺激する。極上のシルクなんか勝てっこない毛並みはどこまでも滑らかでふわふわで、俺の指を包み込みながら包んでいく。そのまま撫でながら――――
「!?」
消失しかけていた意識が一瞬で覚醒する。毛布を捲る。衝撃過ぎて喉が擦り切れる悲鳴をぐっと堪えた。悲鳴を体を縮こませて膝を抱えて寝ているルウがいたんだ。夢でも幻なんかでもない。耳と尻尾を触って現実だってはっきりとたしかめる。
「すぅー・・・・・・すぅー・・・・・・」
「あの、ルウ? 起きて?」
どうしてルウが俺のベッドに寝ているのか。久しぶりすぎて間違えたとか? ともかく、このままじゃいけない。
「むにゃ、ご主人様?」
半目でぼぉ~っとしているルウが最高にかわいすぎておはようと言いかけたけど、まだそんな時間じゃないからとやめた。
「まさか、夜這いですか?」
「違うよ?」
「しかしご主人様汗くさいですし、目も血走ってますし」
「うん。それは研究してたから」
「そうですか。それではどうぞ」
「なんでそうなる!?」
ルウはそのまま後ろ向きに倒れて横になった。それでなにをどうぞなんだ。
「ぐーすか・・・・・・・・・もう食べられませんむにゃむにゃ」
「無理して寝たふりしても通らないよ! 瞼ガン開きなんだから!」
「むにゃむにゃ・・・・・・・・・ご主人様、それは・・・・・・・・むにゃむにゃ」
「意味深なことわざと言うな! なにがしたいんだ!」
くそ、こうなったら『念話』でなにを考えてるか読むしかない。
――――へたれ。意気地なし。童貞。腰抜け――――
「意味がわからない! ただの罵倒じゃねぇか!」
――――ここまでしているなんて、ご主人様はあほですね。いえ、間抜けです。いえ、屑です。食べ終わったお肉の骨にも劣ります――――
「俺はゴミ以下ってこと!?」
――――『もふもふタイム』、どれだけやっていないか覚えていないのですか?――――
え? どういうこと?
――――主の疲れを癒やすのも奴隷の役目です。ご主人様の一番癒やされるであろう『もふもふタイム』を存分にできる状況を敢えて用意したと、おわかりになりませんか――――
ルウ・・・・・・・・・それって。おもわず、ルウの顔を見てしまう。ルウは不満げに口を尖らせて、枕に顔を埋めて隠してしまう。体ごとくるりと回転して俯せに、自然と尻尾が強調されてしまい、ふりふりと振られている。どうぞと誘っているような動き。
――――これで満足ですかこのやろう。『念話』なんて使わなくてもそれくらい察してください――――
ああ、なんて俺は幸せ者なんだ。ルウにとって負担になる『もふもふタイム』をまさか彼女自身から誘ってくれるなんて。これは主従関係とか奉仕精神を越えた献身。もっといえば愛。つまり、これはルウなりの告白と同意義。
――――気持ちの悪い妄想は大概にしてください。あなたの考えだって私に伝わっているんですよ――――
はっとしてルウに視線を向けてしまう。ルウは枕からこちらをジトッと睨んでいる。しょんぼりとしたけど、気をとり直して、準備をする。指を鳴らして簡単にマッサージとストレッチ。万全な状態で尻尾を堪能する。
もふっと、まずはゆっくり全体を掌で感触を味わう。
うわ、うわああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。指が蕩ける・・・・・・・・・・・・・・。こんなに気持ちよかったっけ・・・・・・・・・。ふわ、わあああああ~~~~~~~~~。
――――心の声で、んん、気持ちの悪い感想が・・・・・・・・あんっ――――
ルウの口から吐息となにかを我慢する小さい悲鳴、そして『念話』で聞こえてしまう心の中の素直な感想が、脳を麻痺させる。両手で尻尾の縦横、全方向から無尽に。そして挟み込んで少し圧してみる。決して大きくはない反発力を楽しみながら上下に擦る。
――――いや、そんな――――
指を立てて、毛並みにツッコむ。隙間一つ一つの神経が刺激されて溜息しかでない。
――――あ、爪が――――
『念話』とともに、わずかに体が反応を示した。痛かったのかと不安になって、ぴたりと止める。
――――気持ちよかった。芯の部分に当たって――――
え、と驚いて軽く爪を立てる。つん、と奥のほうの固い部分に触れると、
――――あ、いい。そこ――――
これか。これがいいのか。小さく痙攣を繰り返すルウが面白くて楽しくて、爪先で遊んでしまう。指で梳きながらわざと爪でつんつんと。ときには連続で素早く。ときにはゆっくりと。『念話』でルウの嬌声に等しい声と反応、たまらず尻尾を掴む。撫で回す。ルウの声が大きく激しくなってきた。
顔を埋める。顔が千切れんばかりに頬ずりをする。
――――吐息が、くすぐったい。いや・・・・・・・・ダメ――――
抱きしめながら口づけを繰り返す。俺のすべての持っているパーツで、ルウの尻尾を愛で、味わい、弄り、堪能する。ルウの雄叫びに似た嬌声、素直な心の声が、俺の理性の枷を外していって、なにをしているのかも判断できなくさせる。我慢なんてしなくてもいい。本能のままに任せよう。そのまま一心不乱に尻尾を味わっていく。
「はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・・・・・。ご主人様、ご満足・・・・・・・・・・・んふぅ・・・・・・・・・・・・されましたか・・・・・・・・・?」
熱い吐息を荒げさせて、ぐったりとしたルウが問いかけてきた。
「ああ、もう死にそうだった・・・・・・・・・」
「さようですか・・・・・・・・・・・・ようございました・・・・・・・・・」
俺も寝転がって、休憩をとる。だめだ、このままじゃ保たない。それほど疲れてしまった。もうなにもしたくなくなるほど。今までできていなかった反動なのか、『念話』で魔力を消費していたからか。夢中でやり続けてしまった。そのせいでルウと俺への負担もいつもの比じゃない。『念話』の効果でルウの心の声で、快感が倍増して時間さえ忘れてしまっていた。
なんにしろ改めて危険なものだってはっきりした。『もふもふタイム』。そして『念話』。この二つの相性は表裏一体。これをずっと続けていたらなにも手に付かない。永遠にやり続けていたら、そのままきっと死んでしまう。それだけの力を秘めている。なんておそろしい魔法を創りだしてしまったんだろう。まだ俺には、いや。世界には早すぎたのかもしれない。
いや、でも『もふもふタイム』でルウを楽しめて死ねたらそれはそれで幸せか?
――――本当は・・・・・・・・・もう少しやってほしいような――――
『念話』を解除し忘れていたからか、ルウの心が伝わってくる。それが、ムラムラッと情欲を掻きたてられる。だめだ。もう今日は寝ないと。本当にこれ以上は死んでしまう。
――――なんて、私はなに勝手なことを。ご主人様を優先しなければ。でも、やってほしい――――
きゅん・・・・・・・・・・・。
がばっとルウに覆い被さる。いきなりのことで、ルウが目をぱちくりと瞬かせている。
「え? ご主人様、なにを?」
ごめん。我慢できない。言葉にするのもまどろっこしくて、『念話』で謝る。そして、また『もふもふタイム』を再開する。ルウの声が、男女のくぐもった絡み合う睦みが、響き渡る。
二回目じゃまだ足りない。三回、四回。もう数えるのさえできなくなるほど、ルウが息が絶え絶えになるほど、呼吸しているのさえうっとうしいほど没頭していく。数を重ねるごとに激しさを増す『もふもふタイム』は、終わらない。いつ果てるかしれない俺たちだけに許された行為に、二人は溺れていく。
いつまでやっていたのか記憶すら定かじゃない。愛している。好きだ。生きている。帰ってきた。覚えているのは、心の中で唱え続けたことだけだった。
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