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八章
Ⅴ
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明くる朝。騒動を終えてルウに事情を説明して、なんとか平穏を取り戻せた。ご機嫌とまではいかないけど、いつものルウにほっと一安心。ジャムの瓶に手を伸ばすと、ルウが素早い動きで根こそぎパンに塗りたくったりしているけど、甘い物を食べたい気分なのかな?
「今日のご予定はございますか?」
「特にないな。強いてあげれば、家で研究の見直しをしたいくらいだ」
昨日のモーガンとの出会いは、衝撃だった。このまま試験を受けてよいものか夜中まで悩んだほど。改めて振り返ると、的を射ていた。根本から魔法を創り直さなければいけないかもしれない。
「私は、キロ様のお屋敷へ参りたいのですが」
キロ様というのは、シエナの頼みで以前問題を解決した商人だった。少し前まで入院していたけど、現在は屋敷で療養している。ルウは俺の代わりに度々訪ねている。本当はハーピィの奴隷に会いに行っているとバレバレだけど、そこは詮索しない。同じ境遇の友達ができるのはいいことだ。
「そうか。よろしく伝えておいてくれ」
「ユーグ様は一度もご一緒にキロ様の元へ行かれていませんね」
「仕事が忙しいし、中々なぁ。けど、まったく会ってないってわけじゃないぞ」
「・・・・・・・・・・・・シエナ様とはご一緒されていましたのに」
「ん?」
「いえ。ご友人であるシエナ様とは、わざわざお手伝いされてましたよね」
「それは、説明しただろ?」
「ええ。聞きました。それにずっと見ていました。それで確信しました。ユーグ様はとんでもない変態であると」
「なんでそうなる!!??」
「シエナ様といちゃいちゃしていたとき、ご主人様はとても楽しそうにされていました。それはもう鼻の下が馬になっておりましたし。『もふもふタイム』をしているとき以上に吐き気を催す邪悪な顔でした。申し訳ありません、身の毛もよだつ生理的嫌悪感をいだきました。なので、男性にも欲情される変態なのだと。かわいくて性欲が満たせれば誰でもよいのかと分析いたしました」
「間違ってるよその分析!」
「今まで研究一筋な人生だったのでしょう? でしたら溜まるものも溜まりすぎて爆発しそうになっているのでしょう?」
「女の子がそんなはしたないことをのたまうなよ!」
「客観視していた私ですらそうだったのですから、ご主人様のお側にいたシエナ様はもっとお辛かったのかと」
「だあああ! もう! 何度も言ってるだろ! あいつはただの親友! 俺が好きなのはルウだけ! あのときは仕方なく付き合っただけで、ルウに無理やり脳内変換していたんだよ! それでごまかしていたんだよ!」
「気持ち悪いです」
「誰のせいだよおおおおおおおお!!」
わかってくれてたんじゃなかったの? あ、というか今好きって言っちまった! 『もふもふタイム』できなくなっちまった。 ちくしょう。
「朝から大声を出して、疲れませんか?」
「うん、疲れた」
お前のせいだよ、なんて言う元気ももうない。工房に行く前に、少し落ちつくために体を伸ばして瞼の上から眼球を揉む。
「片付けます」
手早く食器を重ねて動きだしたルウは、なぜか俺の隣にやってきた。そして、なにをおもったか尻尾を俺の顔に載せてきた。え、天国? 匂いとか毛並みとか肌触りとか。手で触れるのとは違う感触と快感。おもわずそぉ~っと手を伸ばしたけど、尋常じゃない力で防がれた。
「まったく。ご主人様はどうしようもない人です。四六時中奴隷のことを好きだと言って。私でなかったら逃亡していたところです。今も私一人に食器を片付けさせて。お一人でリラックスなさって」
「え、ルウ?」
「机の汚れが落ちませんね。少し力を入れて時間をかけなければいけません。しかしご主人様はどうぞお気になさらず。本当は少しは手伝えと心の底で願っていますが私は正しい奴隷ですので。ご主人様からどんな精神的苦痛を受けようと職務をまっとうします」
「とりあえず役得ってこと? 掃除をしているフリをしながら、俺を癒やしてくれてるってこと?」
「女心を知ってください。お掃除やめますよ?」
ごめんなさい。心の中で謝って、なすがままに任せる。くねくね動く尻尾がまるで顔全体をマッサージしてくれているみたいで心地よい。このまま寝てしまいそう。いや、いっそのこと永眠してもいいかも。
「ご主人様は~、変態です~。女装騎士よりも~、魔道士よりも~。奴隷が好きな~、ウェアウルフが好きな~変態です~」
抑揚のない歌を口ずさんでいるけど、それすら心がほぐされていく一つの要因でしかない。それ外じゃ歌わないでほしいけど、ある意味俺にとっては赤子の子守歌と同等なくらい必要なもの。
もしかしたら、ルウは嫉妬したのかもしれない。だとしたら、不可解な態度も言動も頷ける。かわいい。好き。まだ完全に好きではないんだろう。けど、俺の好意が無駄じゃないって嬉しくなる。ああ、もう今日は研究しないでずっとこうしていようか。ルウと二人でキロ氏のところへ行って、駄弁って愛を囁いて。最近はただでさえ忙しくてろくに二人で過ごせていなかったし、うんそれがいい。
ルウにそう提案したとき、玄関のほうからドンドンドンドン! というけたたましい音が響いてきた。無視しようとおもったけど、しきりに打ち鳴らされ、音と数が増していく。そこはかとなく苛立った俺は文句をいう剣幕で扉を開きにむかった。開けると同時に怒鳴りかけたけど、意外なやつだったので面喰らってしまう。
卵を少し大きくしたような外観。胡麻みたいに小さくつぶらなお目々。爬虫類をおもわせるごつごつとした体表。長く伸びた鼻に猫みたいな口。頭には牛と竜の角が混じった独特なシルエットが生えている。虫みたいに薄く、コウモリのような邪悪な羽根。短い手足。そして長く細い鼠と馬の鬣をミックスさせた尻尾。あらゆる生物をごちゃ混ぜにしてどの分類にも属さない異形。けれど産まれたときからこんな見た目だってはっきりわかる不自然さがない奇妙な気持ちの悪い生き物。
シエナの使い魔、ネフェシュだ。
「なんだ、どうしてお前が来たんだ」
既存の生物、生態系、種族。どこにも属さない不可思議なこの使い魔は前々から興味を持っていた。解剖とか実験とまではいかないけど、できれば体表とか体毛、血を採取させてもらいたいと常々おもっている。最近はお互い顔を合わせる機会がなかった。というかネフェシュが避けているふしがあった。今も虫みたいな音を纏って飛んでいるけど、あからさまに距離がある。
「火急の用件だ。ユーグ。あんたにあることを伝えにきた」
表情ではわからないけど、落ち着いた青年めいた声にはどこか切迫感がある。シエナがいないのが、おかしいとかんじた。とりあえず部屋の中に招こうとしたけど、それどころじゃないと伝えたそうに留まり続けている。
「ご主人様、いかがなされましたか・・・・・・・・・うわなんですかその生き物。気持ち悪い。もしかして新しい奴隷ですか?」
「ああ、こいつはネフェシュ。この子は俺の奴隷でルウ」
互いに代わって紹介したけど、ネフェシュは一瞥しただけですぐに視線を俺に戻す。それにイラッとした。おいこら俺のいとしのルウにあいさつはどうした。かわいいとか美しいとか感想は? お前の主からどんな躾をされているんだ。この場で捕らえて実験するぞ。
「なんだか変なことを企てているのかもしれんが。事は急を要する。すぐにここを離れろ。いや、帝都からもだ」
「は? いきなりなんだ?」
「説明している暇はない。このままじゃあんた死ぬぞ」
「はぁ???」
意味がわからん。なんで俺が捕まらないといけないんだ。
「ともかく、金目のものだけ持ってこい。道中俺が説明する。主の命令で助けにきた。主はなんとか騎士隊を遅らせようとしているところだ。早くしろ」
信じたくはないが、どうやら事実らしい。自然と昨日の出来事が想起される。シエナのやろう、まさかとんでもないことに巻き込みやがったのか。
「すまん」
ネフェシュにも心当たりがあったのか。しかしいまだ混乱している俺もルウも動くことができない。
「魔法士ユーグが住んでいるのはここか!」
何人かの足音と荒々しい甲冑音が。ネフェシュは舌打ちをしてから逡巡。そのまま「すまん」とだけ言い残して遙か彼方まで飛び去っていった。そのまますぐに騎士隊に囲まれて身動きすらできない緊張感が漂う。
「魔法士ユーグ、貴様を逮捕する」
紋様が刻まれた足枷と手枷があれよあれよと付けられていく。おそらく魔法を封じるための魔導具か、体内にある魔力との繋がり、放出される穴が塞がれた感触がした。
「即刻引きたてい」
「ちょ、ちょっとまった。逮捕ってなんで? 罪状は?」
「それは取り調べのときにわかる。そら、キリキリ歩きやがれこの魔道士(予定)野郎!」
乱暴に押されて蹴られて、為す術なく従うしかない。
「ご主人様!」
ハッとする。ルウが立ち尽くしていた。なんて声をかければいいんだろう。心配するな。すぐに帰ってくる。大丈夫。どんな言葉ならあの子を安心させられるだろう。
「家にある食べ物は私が全部食べてもよろしいですか?」
「そこおおおおおおおおおおお!? 心配なところそこおおおお!?」
「おい叫ぶな! さっさと歩け!」
「ルウ! 待っててくれ! 無実だから誤解はすぐに解けるから! そうしたらまた一緒にご飯たべよう!」
「いえ、このまま戻ってこなくても大丈夫です。食事も一人分作るだけですみますしお掃除や家事もしないでぐうたらしてサボれるので」
「お願いだから待っててくれよおおおおおおおおおおお!! 頷いてくれよおおおおおお!!」
騎士に無理やり引きずられながら、連行されていく俺をまるで研究所に行くときみたいに見送るルウ。そこはかとなく悲しい。けど、きっと大丈夫だろう。どんな嫌疑だろうと、俺にやましいことは一切ないのだから。それに、騎士であるシエナもいる。心配することなんてなにもない。
「今日のご予定はございますか?」
「特にないな。強いてあげれば、家で研究の見直しをしたいくらいだ」
昨日のモーガンとの出会いは、衝撃だった。このまま試験を受けてよいものか夜中まで悩んだほど。改めて振り返ると、的を射ていた。根本から魔法を創り直さなければいけないかもしれない。
「私は、キロ様のお屋敷へ参りたいのですが」
キロ様というのは、シエナの頼みで以前問題を解決した商人だった。少し前まで入院していたけど、現在は屋敷で療養している。ルウは俺の代わりに度々訪ねている。本当はハーピィの奴隷に会いに行っているとバレバレだけど、そこは詮索しない。同じ境遇の友達ができるのはいいことだ。
「そうか。よろしく伝えておいてくれ」
「ユーグ様は一度もご一緒にキロ様の元へ行かれていませんね」
「仕事が忙しいし、中々なぁ。けど、まったく会ってないってわけじゃないぞ」
「・・・・・・・・・・・・シエナ様とはご一緒されていましたのに」
「ん?」
「いえ。ご友人であるシエナ様とは、わざわざお手伝いされてましたよね」
「それは、説明しただろ?」
「ええ。聞きました。それにずっと見ていました。それで確信しました。ユーグ様はとんでもない変態であると」
「なんでそうなる!!??」
「シエナ様といちゃいちゃしていたとき、ご主人様はとても楽しそうにされていました。それはもう鼻の下が馬になっておりましたし。『もふもふタイム』をしているとき以上に吐き気を催す邪悪な顔でした。申し訳ありません、身の毛もよだつ生理的嫌悪感をいだきました。なので、男性にも欲情される変態なのだと。かわいくて性欲が満たせれば誰でもよいのかと分析いたしました」
「間違ってるよその分析!」
「今まで研究一筋な人生だったのでしょう? でしたら溜まるものも溜まりすぎて爆発しそうになっているのでしょう?」
「女の子がそんなはしたないことをのたまうなよ!」
「客観視していた私ですらそうだったのですから、ご主人様のお側にいたシエナ様はもっとお辛かったのかと」
「だあああ! もう! 何度も言ってるだろ! あいつはただの親友! 俺が好きなのはルウだけ! あのときは仕方なく付き合っただけで、ルウに無理やり脳内変換していたんだよ! それでごまかしていたんだよ!」
「気持ち悪いです」
「誰のせいだよおおおおおおおお!!」
わかってくれてたんじゃなかったの? あ、というか今好きって言っちまった! 『もふもふタイム』できなくなっちまった。 ちくしょう。
「朝から大声を出して、疲れませんか?」
「うん、疲れた」
お前のせいだよ、なんて言う元気ももうない。工房に行く前に、少し落ちつくために体を伸ばして瞼の上から眼球を揉む。
「片付けます」
手早く食器を重ねて動きだしたルウは、なぜか俺の隣にやってきた。そして、なにをおもったか尻尾を俺の顔に載せてきた。え、天国? 匂いとか毛並みとか肌触りとか。手で触れるのとは違う感触と快感。おもわずそぉ~っと手を伸ばしたけど、尋常じゃない力で防がれた。
「まったく。ご主人様はどうしようもない人です。四六時中奴隷のことを好きだと言って。私でなかったら逃亡していたところです。今も私一人に食器を片付けさせて。お一人でリラックスなさって」
「え、ルウ?」
「机の汚れが落ちませんね。少し力を入れて時間をかけなければいけません。しかしご主人様はどうぞお気になさらず。本当は少しは手伝えと心の底で願っていますが私は正しい奴隷ですので。ご主人様からどんな精神的苦痛を受けようと職務をまっとうします」
「とりあえず役得ってこと? 掃除をしているフリをしながら、俺を癒やしてくれてるってこと?」
「女心を知ってください。お掃除やめますよ?」
ごめんなさい。心の中で謝って、なすがままに任せる。くねくね動く尻尾がまるで顔全体をマッサージしてくれているみたいで心地よい。このまま寝てしまいそう。いや、いっそのこと永眠してもいいかも。
「ご主人様は~、変態です~。女装騎士よりも~、魔道士よりも~。奴隷が好きな~、ウェアウルフが好きな~変態です~」
抑揚のない歌を口ずさんでいるけど、それすら心がほぐされていく一つの要因でしかない。それ外じゃ歌わないでほしいけど、ある意味俺にとっては赤子の子守歌と同等なくらい必要なもの。
もしかしたら、ルウは嫉妬したのかもしれない。だとしたら、不可解な態度も言動も頷ける。かわいい。好き。まだ完全に好きではないんだろう。けど、俺の好意が無駄じゃないって嬉しくなる。ああ、もう今日は研究しないでずっとこうしていようか。ルウと二人でキロ氏のところへ行って、駄弁って愛を囁いて。最近はただでさえ忙しくてろくに二人で過ごせていなかったし、うんそれがいい。
ルウにそう提案したとき、玄関のほうからドンドンドンドン! というけたたましい音が響いてきた。無視しようとおもったけど、しきりに打ち鳴らされ、音と数が増していく。そこはかとなく苛立った俺は文句をいう剣幕で扉を開きにむかった。開けると同時に怒鳴りかけたけど、意外なやつだったので面喰らってしまう。
卵を少し大きくしたような外観。胡麻みたいに小さくつぶらなお目々。爬虫類をおもわせるごつごつとした体表。長く伸びた鼻に猫みたいな口。頭には牛と竜の角が混じった独特なシルエットが生えている。虫みたいに薄く、コウモリのような邪悪な羽根。短い手足。そして長く細い鼠と馬の鬣をミックスさせた尻尾。あらゆる生物をごちゃ混ぜにしてどの分類にも属さない異形。けれど産まれたときからこんな見た目だってはっきりわかる不自然さがない奇妙な気持ちの悪い生き物。
シエナの使い魔、ネフェシュだ。
「なんだ、どうしてお前が来たんだ」
既存の生物、生態系、種族。どこにも属さない不可思議なこの使い魔は前々から興味を持っていた。解剖とか実験とまではいかないけど、できれば体表とか体毛、血を採取させてもらいたいと常々おもっている。最近はお互い顔を合わせる機会がなかった。というかネフェシュが避けているふしがあった。今も虫みたいな音を纏って飛んでいるけど、あからさまに距離がある。
「火急の用件だ。ユーグ。あんたにあることを伝えにきた」
表情ではわからないけど、落ち着いた青年めいた声にはどこか切迫感がある。シエナがいないのが、おかしいとかんじた。とりあえず部屋の中に招こうとしたけど、それどころじゃないと伝えたそうに留まり続けている。
「ご主人様、いかがなされましたか・・・・・・・・・うわなんですかその生き物。気持ち悪い。もしかして新しい奴隷ですか?」
「ああ、こいつはネフェシュ。この子は俺の奴隷でルウ」
互いに代わって紹介したけど、ネフェシュは一瞥しただけですぐに視線を俺に戻す。それにイラッとした。おいこら俺のいとしのルウにあいさつはどうした。かわいいとか美しいとか感想は? お前の主からどんな躾をされているんだ。この場で捕らえて実験するぞ。
「なんだか変なことを企てているのかもしれんが。事は急を要する。すぐにここを離れろ。いや、帝都からもだ」
「は? いきなりなんだ?」
「説明している暇はない。このままじゃあんた死ぬぞ」
「はぁ???」
意味がわからん。なんで俺が捕まらないといけないんだ。
「ともかく、金目のものだけ持ってこい。道中俺が説明する。主の命令で助けにきた。主はなんとか騎士隊を遅らせようとしているところだ。早くしろ」
信じたくはないが、どうやら事実らしい。自然と昨日の出来事が想起される。シエナのやろう、まさかとんでもないことに巻き込みやがったのか。
「すまん」
ネフェシュにも心当たりがあったのか。しかしいまだ混乱している俺もルウも動くことができない。
「魔法士ユーグが住んでいるのはここか!」
何人かの足音と荒々しい甲冑音が。ネフェシュは舌打ちをしてから逡巡。そのまま「すまん」とだけ言い残して遙か彼方まで飛び去っていった。そのまますぐに騎士隊に囲まれて身動きすらできない緊張感が漂う。
「魔法士ユーグ、貴様を逮捕する」
紋様が刻まれた足枷と手枷があれよあれよと付けられていく。おそらく魔法を封じるための魔導具か、体内にある魔力との繋がり、放出される穴が塞がれた感触がした。
「即刻引きたてい」
「ちょ、ちょっとまった。逮捕ってなんで? 罪状は?」
「それは取り調べのときにわかる。そら、キリキリ歩きやがれこの魔道士(予定)野郎!」
乱暴に押されて蹴られて、為す術なく従うしかない。
「ご主人様!」
ハッとする。ルウが立ち尽くしていた。なんて声をかければいいんだろう。心配するな。すぐに帰ってくる。大丈夫。どんな言葉ならあの子を安心させられるだろう。
「家にある食べ物は私が全部食べてもよろしいですか?」
「そこおおおおおおおおおおお!? 心配なところそこおおおお!?」
「おい叫ぶな! さっさと歩け!」
「ルウ! 待っててくれ! 無実だから誤解はすぐに解けるから! そうしたらまた一緒にご飯たべよう!」
「いえ、このまま戻ってこなくても大丈夫です。食事も一人分作るだけですみますしお掃除や家事もしないでぐうたらしてサボれるので」
「お願いだから待っててくれよおおおおおおおおおおお!! 頷いてくれよおおおおおお!!」
騎士に無理やり引きずられながら、連行されていく俺をまるで研究所に行くときみたいに見送るルウ。そこはかとなく悲しい。けど、きっと大丈夫だろう。どんな嫌疑だろうと、俺にやましいことは一切ないのだから。それに、騎士であるシエナもいる。心配することなんてなにもない。
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