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第50話 斬鉄の刃!

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 剣と刀のぶつかり合いにより火花が散る。

 着地したイスカは、ギュン! と身を回転させて、ルドルフの足を狙っての斬撃を放った。

「阿呆が!」

 ルドルフは足を振り上げ、妖刀ミコバミを狙って、踏みつけによる武器破壊をお見舞いしようとする。

 だが、イスカの攻撃のほうが早かった。

 ザシュッ!

 ミコバミの刃が、足の防具を貫通し、ルドルフの脛を切り裂く。

「ぐおおお⁉︎」

 ルドルフは膝をついた。足から血が溢れ出す。

「まさか⁉︎ ミコバミは斬鉄剣なのか⁉︎」

 クイナが驚きの声を上げるのとともに、イスカは怒涛の如き攻撃を繰り出した。相手がガードしようとお構いなしに、刀による乱舞を放つ。

 ミコバミの前では、完全武装の鎧も意味をなさない。ルドルフは全身を切り刻まれ、絶叫を上げた。切り裂かれた鎧の隙間より血を噴き出させ、ヨロヨロと後ろへよろめいていく。

「エエェイ!」

 イスカは縦一文字に、刀を振り下ろした。咄嗟に、ルドルフは身を後方へとそらし、刃をかわす。が、完全にはかわしきれず、兜を割られた。ついでに額も傷つけられ、血が滲み出てくる。

 満身創痍。

 それでもルドルフは、仁王立ちし、イスカと相対する。さすがは元騎士、ちょっとやそっとのことでは心は折れない。

「ヌゥン!」

 豪快に剣を振り、イスカの胴体を真っ二つに叩き斬ろうとする。

 その剣を、イスカはミコバミで受け止めて、いなし、返す刀で逆にルドルフの胴体を斬りつける。

「ぐふ!」

 ルドルフは呻きつつも、間合いを詰めてきたイスカに対して、根性で裏拳を放った。

 顔面を鉄拳で殴られて、イスカは真横へと吹っ飛ぶ。ラックに激突し、積んであるアイテムがガラガラと雪崩落ちる、その中へと埋もれてしまう。

「俺の大砲(カノン)を喰らうがいい!」

 ルドルフは手を広げ、イスカが倒れている場所へと向かって、衝撃波を発射した。

 ドォォォン!

 轟音とともに、崩れて積み重なっていたアイテムがバラバラに砕け散る。

「イスカ君⁉︎」

 ニハルが悲鳴に近い声を上げた。

 とどめを刺した、と思っているルドルフは、ふははは! と大声で笑う。

 だがしかし、背後から殺気を感じて、ルドルフはハッとなった。

「後ろ、だとお⁉︎」

 振り返ったルドルフの胴体を、いつの間にか俊速で移動して、背後に回り込んでいたイスカが、斜め袈裟斬りにザンッ! と斬る。

「ぐああああ!」

 ルドルフは叫び、よろめいた後、仰向けに倒れた。

「か、勝った……!」

 ニハルは喜びの声を上げる。

「すごい! イスカ君! 勝ったんだね!」

 駆け寄り、愛するイスカに抱きつこうとするニハル。

 だが、倒れているルドルフの側へと寄った瞬間、

「まだだあああ!」

 ルドルフは身を起こして、ニハルの体をガッシリと捕まえると、猛然と駆け出した。

 虚を突かれたイスカ達は、その行動を防ぐことはできなかった。

 あっという間にルドルフは保管庫から飛び出して、階段を駆け上がっていく。

「奴め! どこへ逃げるつもりだ!」

 クイナは怒号を上げ、近くに落ちている新しい刀を拾うと、駆け出した。

 あわせて、イスカもクイナと並んだところで、走り出した。

「イスカ! 妖刀の呪いはもう大丈夫なのか⁉︎」
「うん……なんとか、慣れてきた……! でも、気を抜くと、またみんなにいやらしいことしちゃいそうで……!」
「この戦いが終わったら、好きなだけ触らせてやる! それまで辛抱してくれ!」

 保管庫を飛び出したイスカとクイナは、ルドルフが逃げた先を確認する。床には点々と血が落ちており、わかりやすい。

「あっちだ! あの階段から、上に行ったらしい!」
「何をする気なんだ、ルドルフ……!」

 階段を駆け上がっていく。

 どこまで行っても、血の跡は上を目指している。やがて、屋上へとたどり着いた。

 ドアを開けて、屋上に飛び出ると、端っこのほうで、ニハルを抱き締めたルドルフが、ゼェハァと荒い息をついている。

「舐めおって……! 俺を誰だと思っている! 元帝国騎士団の部隊長を務めた、ルドルフだぞ!」
「観念しろ! いまのイスカに、お前では勝てない!」
「ふん! 呪われた武器なんぞの力を借りて、何を粋がっているのか!」

 ルドルフはニハルをさらに強く抱き寄せた。

「何をする気だ、ルドルフ!」
「くくく! 決まってるだろう! 飛び降りるのだよ!」
「なっ⁉︎」

 驚くクイナの目の前で、ルドルフは、屋上から空中へと身を投げた。ニハルを抱きしめたままだ。

「ニハルさーーーん⁉︎」

 まさかの道連れか⁉︎ と仰天したイスカとクイナは、慌てて屋上の端へと駆け寄って、手すりから身を乗り出し、下のほうを見る。

 墜落する、その寸前で、ルドルフは地面に向かって「大砲(カノン)」を放った。ドドオオン! とすさまじい音が鳴り響き、砂漠の砂が巻き上げられ、煙と化す。

 やがて、砂煙が晴れたところで、ルドルフ達の姿が露わになった。

 ルドルフは、平気な様子で、砂の上に立っている。着地の瞬間、「大砲(カノン)」で、衝撃を和らげたのだ。

「ダメだ! 逃げられてしまう!」

 下へ降りる手段のないクイナ達にはどうすることもできない。

 かと思いきや、

「僕が行く!」

 イスカはためらいもせず、手すりを乗り越えて、空中へと身を躍らせた。

「イスカーーー!」

 クイナの叫び声が響き渡る中、イスカの体は、遥か眼下の砂漠へ向かって吸い込まれていった。
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