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第21話 バニーに変身大作戦⁉

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「えええええ⁉ なんでえ⁉」

 仰天するイスカ。

 その叫び声を聞いて、うるさそうにライカは顔をしかめた。

「別に驚くことでもないでしょ。ちょっと考えれば、すぐその考えになるじゃない」
「いや、そうはならないって!」
「どうして」
「アイヴィーさんはともかく……僕は、男だよ⁉ バニーの格好なんて……!」
「あなた、見た目は女の子だから、十分いけるわよ」
「そういう問題じゃなくって……!」

 さすがにこれは、ニハルもアイヴィーも、ライカの真意を測りかねて、二人揃ってツッコミを入れてきた。

「ねえ、ライカ。私がカジノへ行くんじゃダメなの?」
「そうだよ。オレなんかがバニーガールの格好しても、ちんちくりんになるだけだぜ」

 それらに対して、ライカは的確に返していく。

「おねーさまはダメ。もう顔が割れてるから。そういう意味では、私もダメ。そうなると、カジノを内部から切り崩せるのは、そこの二人だけ、ってことになるわ」
「だから、オレにバニーガールは似合わない、って」
「大丈夫。あなたも美人だから、絶対に似合う」
「胸だって、お前らほどのサイズはないし……」
「見たところDカップかな。十分あるじゃない」
「だ、だけど、そんな恥ずかしい格好、できるかよ」
「誰かがやらないと、おねーさまが、ずっとルドルフの追手に悩まされることになるよ?」

 ぐぬぬ、とアイヴィーは呻いた。ニハルのことを考えつつも、逡巡している様子だ。

「本当に、それしか、方法はないの?」

 一方で、イスカは少しばかり覚悟を決めた表情で、ライカに尋ねてきた。

「いまのところ、カジノに潜入できそうなのはあなた達だけだもの」
「アイヴィーさんだけだとダメ? 本当に、僕もバニーにならないといけない?」
「潜入任務に慣れているならまだしも、あなた達、どっちも素人でしょ。素人一人だけで潜り込むなんて、危険すぎるわ。二人ひと組で行動しないと」

 その時、邸の中から、アイヴィーの恋人達が姿を現した。いつまでも外にいるアイヴィーのことを心配してやって来たのだ。

「お姉様、大丈夫? さっきからずっと、外にいるけど……」

 三人娘のリーダー格、ナキアが、声をかけてくる。

 それを見て、ライカは、「あれ、他にも女の子いるんじゃん」と呟いた。

「なーんだ。てっきり、女子ってここにいるだけかと思ってた。それだったら、その人達に潜入させてもいいかもね」
「おい! こいつらはダメだ! こいつらを危険な目には遭わせないぞ!」

 アイヴィーは慌てて、ナキア達の前に立ち塞がった。

「気が変わった! やってやるよ! バニーガールでもなんでも!」
「え⁉ お姉様が、バニーガール⁉」

 ナキアはときめきの眼差しで、恋人であるアイヴィーのことを見つめている。他二人の女子も同じだ。アイヴィーのバニーガール姿を想像して、興奮しているのだろう。いまにも鼻血でも出しそうな雰囲気だ。

「オレの大事な女達に危ない真似させるくらいだったら、オレがやってやらあ!」
「その心意気、ナイスね」

 グッ、とライカは親指を立てて、アイヴィーのことを褒めた。

 それから、イスカのほうへと顔を向ける。

「で? あなたはどーするの? やるの? やらないの?」

 少しばかり、答えるのをためらっていたイスカだったが、やがて意を決して口を開いた。

「や、やるよ。僕だって、ニハルさんを守るためだったら、なんだってやってやる!」

 イスカの言葉を聞いた盗賊団の面々は、ざわざわとどよめいた。まさかの男がバニーガールの格好をする、という展開に動揺しつつも、しかしイスカの可愛らしい外見だったら相当キュートなバニーになるのではないか、という予想もあり、中には好色の目でイスカを眺めている者もいた。

「よーし、決まりね! そうしたら、まずはバニースーツを調達するところから――」
「ライカ。その案、やっぱりダメ」
「ふえ⁉」

 すっかりその気になっていたライカは、いきなりニハルから駄目出しを喰らって、素っ頓狂な声を上げてしまう。

「だって、イスカ君とアイヴィーに、二人だけで、カジノへ潜り込んでもらうんでしょ。そんなの、危なすぎるよ」
「でも、おねーさま、そうでもしないと、ルドルフを倒すことなんて――」
「他に方法を考えて。とにかく、それだけは、ダメだから」

 いつもは優しいニハルが、この時ばかりは頑固な態度を見せた。もうこれ以上話をするつもりはない、とばかりに、きびすを返し、邸の中へと入っていく。

 なんだか白けた空気が、場に残った。

「あー……いや、悪くなかったと思うぜ、お前の計画」

 ちょっとライカのことがかわいそうになったか、アイヴィーは慰めの言葉をかけた。

 ライカは、しかし、この程度では動じてないわ、とばかりに、ツーンとした表情を見せてきた。

「別に。一発目のアイディアが採用されるとは思ってなかったもん。また新しい作戦を考えればいいだけの話だから。同情なんてしないで」

 そう強気に言い放つと、彼女もまた邸の中へと入っていった。

「わりとオレ、その気になってたんだけどなー」
「僕も……方法はともかく、カジノへ潜り込む手段としては間違ってないと思っていたから……」
「ニハルのバカ。変な気をつかいやがって。もう、平和でのほほんとしたスローライフを送っていられるような状況じゃなくなっているんだぞ」

※ ※ ※

 アイヴィーの発言は、まさに的を射ていた。

 ちょうどその時、邸の後ろに広がる森の中に、ひっそりと身を隠している女が一人。

 彼女は、険しい眼差しで、木陰から邸のほうを窺っている。

 そして、目的の人物を発見すると、澄んだ声音でその相手の名を呟くのであった。

「見つけたぞ……イスカ……!」
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