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第五章
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しおりを挟むブリス王国の王都に戻ったのは、レーヴァンの葬儀が予定されていた日であった。ただ、本人が無事に生きていることが判明したので、葬儀から生還を祝うパーティーへと変更した。死んだと思っていた者が生き返ったのだ、それは王都でも喜ばしいこととして非常に話題となっていた。
が、その祝いの前に集まった私と両親と、クレイグとレーヴァン。五人で今後のことを決めると言う。
「レーヴァン、よくぞ生きて帰って来てくれた」
「閣下、ご心配をおかけしました。遅くなりましたが、無事に生還することができました」
父は実の息子のように可愛がっていたレーヴァンの生還を、心待ちにしていた。父はレーヴァンの肩を抱き、しばらくぶりに会えたことを喜んでいる。
「お母様、ブリス王国まで来てくださり、ありがとうございます。でも、どうして……?」
実は五人が一同に揃うのは今回が初めてだ。特に母は、父と離婚して以来一度も来たことがない。本当ならば私の結婚式という、商会にとっても重要なお披露目会に向けて忙しい人が、わざわざブリス王国まで来たのはどうしてだろう。
私とレーヴァンは父の屋敷に到着すると、旅先から着替える間もなくこの客室に案内された。
「クローディア。実はお前達と相談する必要が出来た。ただその前に、お前の意見が知りたい。クローディアはどう思っているんだ。クレイグ君との結婚式を目前として、レーヴァンが生還した」
「閣下、それについては」
「ルートザシャ公爵、まずは」
クレイグとレーヴァン、二人が同時に父の言葉を遮った。本来であれば、高位である父を遮ることができるのは同じ公爵位である母だけだ。それだけ二人とも、必死なのだろう。私を守ろうとしてくれる。
「お父様、お母様。クレイグ、そしてレーヴァン。私の意見を言わせて」
「「クローディア」」
クレイグもレーヴァンも、私の名を呼んだ。本当は二人ときちんと時間をとってから、話そうと思っていたけれど、五人が一同で集まることも早々ない。私は父と母、同時に話せるこの機会を逃したくなかった。
「私、二人を諦めることが出来ない。ううん、二人とも愛している」
「ディア……」
「クローディア」
多分、この私の結論を二人とも予想していたのだろう。それほど驚くこともなく皆、静かに私の話を聞いてくれた。
「私、レオンから言われたの。私の心には、レーヴァンでなければ埋められない穴があるって。それと同じように、クレイグでなければ埋めることのできない穴もあるの。私、二人とも愛している。…………どうしたらいいのかわからないけれど、二人を平等な形で夫にしたい。卑怯なことはわかっているけれど、出来ればそうしたいと思っている」
父も母も、私の話を静かに聞いていてくれた。元をただせば、二人が争うように婚約者を決めたことが今の状況を作り出した。その撒いた種が成長して、今、娘である私にのしかかっている。そして、私は摘み取ることに決めたのだ。両方とも、私のものとして。
「クローディア。お前の意見を尊重すると、タチアナとも決めていた。そうか、二人を選ぶのか」
「もちろん、私だけで決めることも出来ないし、レーヴァンとクレイグの気持ちも聞かないといけないのだけど」
そう言ったところで父は私の話を中断し、執事に命じて三つの書状を持って来るように命じた。
「ところでお前達に、見せたい書状がある」
執事が持ってきた書状はそれぞれ豪奢な箱に入っていた。箱についている紋章から、それがどこから発行されたものかがわかる。
「そんな……お父様。どういうことですか、これは」
「私たちも驚いたよ。まぁ、だからこうしてタチアナも、クレイグ君もやって来たということだ」
その三つの書状は、それぞれ三つの国の王家からのものだ。ブリス王国、エール王国、フェイルズ国。偶然、三国の王家が同時に私に書状を書くわけがない。そこには裏で外交が動いたことを表している。
ゴクリ、と思わず喉を鳴らす。内容によってはルートザシャ公爵家、シュテファーニエ公爵家の両家がとりつぶしとなってもおかしくはない。
「お父様、読んでもよろしいですか」
「あぁ、レーヴァン、君も読みたまえ」
箱から書状を取り出し、順に読んでいく。時候の挨拶から始まるが内容は簡潔に書かれていた。
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