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第四章

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「ん……ここ……」

 眩しい朝の光を感じて、目を開けると見慣れぬ天井が見える。あぁ、そうだった。私は今、フェイルズ国にいることを思い出す。久しぶりに、短い時間ではあったが熟睡して夢を見なかった。

「おはよう、クローディア。身体の方は大丈夫か?」

 何も着ていない身体には、白い上掛がかかっているだけだ。その私を、もう既にきっちりとスーツを着込んだクレイグが私を心配そうに見つめている。

「媚薬はもう抜けたと思うけれど……、後遺症が残っていないか、後で医者に診てもらおう」

 そう言って、彼は私の髪を梳くように手を伸ばす。

「ああっ……私っ……」

 いきなり昨夜の自分の痴態を思い出して、思わず顔が赤くなる。私は昨日、フェーブ王に媚薬を盛られて、そしてクレイグに何度も強請ったのだ。

 自分の行った数々の行為に、媚薬のせいとはいっても恥ずかしすぎてクレイグの顔を見ることが出来ない。

「クローディア、これを飲んで」

 彼は私に蓋の空いた小瓶を渡す。匂いを嗅ぐと、これが避妊薬であることがわかる。

「クレイグ……これ」

「いいから、今は飲むんだ」

 私が飲むのをためらっているのを見て、彼は小瓶を私から奪うと中身をぐっと口に含み、私の唇にあててきた。口移しされて、ごくり、と飲んでしまう。

 じわり、と苦い味が口いっぱいに広がった。

「クレイグ……夕べは——」

「謝るな、クローディア。夕べの君は、媚薬の作用が強すぎた。——ああするしか、なかった」

 短く息を吐いたクレイグが、小瓶の中身が空になったことを確認して私に言う。

「ゆっくりしたいところだけど、もうホテルを出た方がいい。いつフェーブ王の追っ手がかかるかわからない」

 恥じ入る私に向かい、彼は少し焦った顔をして私を見つめる。すると彼は、隣にある私の部屋からトランクケースを持って来て替えの下着などが揃っている。

「すまないが、直ぐに何か着て出国しよう。いいかい、馬車を探してくるから、私が戻るまでは部屋からでないように」

 そう言ってから、彼の行動は素早かった。私が着替えをして荷物の整理をしている間に、フェイルズ国から出国する準備を済ませてしまった。





 それから、私たちはエール王国に戻り情勢が動くのを待った。

 ダストン王太子殿下が、あの後どうしたのか詳細はわからない。だが、二週間後に発表されたのはフェーブ王の崩御と、それに伴う戦争の放棄であった。

 フェイルズ国は、ダストン王太子がその後王位に就くことになり、ようやく戦争のない日常を取り戻した。敗戦国としての賠償など問題は多々あったが、今は新しい鉱山の発掘などがされ国も安定してきた。その安定した政権を支えているのは、ある商会の力が大きいと噂されるようになっていた。


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