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第四章
4-11
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私は手に持った毒針を、王の首の後ろにぷつっと突き刺した。
「うぐっ」
フェーブ王は、くぐもった声を出すと目を白くしてそのまま前に倒れていく。媚薬を飲んだ私がまさか、毒針を持っているとは想像もしていなかったのだろう。
さて、ここからどうしようかと思った時、ドアを叩かれるのと同時にダストン王太子殿下の声が聞こえる。
「陛下、至急お伝えしたい義がございます。ドアを開けていただけますか?」
身体の上に乗っているフェーブ王をどかせると、私はよろよろとしながらもドアに近づいていく。カチャン、と鍵を開けるとそこにはダストン殿下とクレイグが扉の外に立っていた。
二人はサッと部屋の中に入ると、床に倒れているフェーブ王をみてパタン、とドアを閉じた。
「クローディア、これは」
クレイグが私に声をかける。私ははぁはぁとだんだんと苦しくなってくる息を整えつつ、ダストン殿下に向かって話した。
「で、殿下。これは私の仕込んだ毒針です。ただ、これは麻酔作用のみで、三時間ほど気を失うだけです」
「では陛下は意識を失っているだけなのか」
「はい、脈は正常です」
ダストン殿下はフェーブ王に近づくと、その手首をもって脈を確認した。
「確かに、気を失っているようだが……これほど即効性のあるものとは」
「はい、ただ長時間は持ちません。遅効性のあるものは、一日以上眠らせることができます。遅効性の毒と即効性の毒を混ぜ、同時に大量に摂取すると二度と目覚めることはありません。それらは解毒剤が効きません」
私は先ほど見せた小瓶の毒であることを説明する。まさか、フェーブ王で実践することになるとは思っていなかったが、ここに倒れていることが証明になる。
私はだんだん鼓動が早くなるのを感じて、思わずクレイグの手をとった。
「クローディア、何か飲まされたのか? 苦しそうだが……」
クレイグは、私の口紅のついたワイングラスを見ると、チッと舌打ちをした。
「ク、クレイグ……ワインに仕掛けられていて。でも、飲まないと油断させられなくて……」
はぁ、はぁとだんだんと息が荒くなる。毒に慣らしている身体だけれど、早く吐き出すか何かしなければいけない。
「水……、水が」
「わかった」
そう言って、クレイグは水差しの水をコップに含むと、私に飲むように口元に持ってきた。だが、受け取る力も飲む力もでない。それを見た彼は、グイっとコップの水を飲むと、私に口移しで飲ませてくれる。
ゴクッ、ゴクッと飲むと、また口移しで飲ませてくれる。その間、ダストン殿下は何かを考えるようにして床に横たわる陛下を見ていた。
「殿下、遅効性の毒を使えば一日、眠らせることができます」
そう言って、私は自分のスカートの中に忍ばせていた毒針を取り出した。これがそうです、と伝えると殿下は「刺してくれ」と私に命じた。
もう一度、首の裏にそれを刺すと、またしてもピクッとフェーブ王の身体が揺れた。即効性で眠らせた後、遅効性を使えば効果は長い。
「殿下、後のことはお任せします。私たちの提案を、どうかお考え下さい」
そう伝えると、殿下は「わかった」と言って私達の方を向いた。
「クローディア殿、媚薬を盛られたのであろう。陛下は短絡的に考えすぎる。どうせクローディア殿を襲えばその宝が手に入るとでも思ったのだろう。情けない……」
そう言って立ち上がると、殿下はクレイグに「どの部屋がいいか」と尋ねられた。
「殿下、至急馬車を用意してください。王宮に私たちが残れば、疑いがかかります。それは後々、良くない噂となるでしょう」
そう言ってクレイグは私を横抱きにすると立ち上がり、殿下の指示を受けた者と一緒に歩き始めた。私はだんだんと苦しくなっていく呼吸をはくはくとさせながら、クレイグの手のぬくもりを求めるようになる。
頭の中が痺れ始めた時には、馬車は私たちの宿泊しているホテルに到着していた。
「うぐっ」
フェーブ王は、くぐもった声を出すと目を白くしてそのまま前に倒れていく。媚薬を飲んだ私がまさか、毒針を持っているとは想像もしていなかったのだろう。
さて、ここからどうしようかと思った時、ドアを叩かれるのと同時にダストン王太子殿下の声が聞こえる。
「陛下、至急お伝えしたい義がございます。ドアを開けていただけますか?」
身体の上に乗っているフェーブ王をどかせると、私はよろよろとしながらもドアに近づいていく。カチャン、と鍵を開けるとそこにはダストン殿下とクレイグが扉の外に立っていた。
二人はサッと部屋の中に入ると、床に倒れているフェーブ王をみてパタン、とドアを閉じた。
「クローディア、これは」
クレイグが私に声をかける。私ははぁはぁとだんだんと苦しくなってくる息を整えつつ、ダストン殿下に向かって話した。
「で、殿下。これは私の仕込んだ毒針です。ただ、これは麻酔作用のみで、三時間ほど気を失うだけです」
「では陛下は意識を失っているだけなのか」
「はい、脈は正常です」
ダストン殿下はフェーブ王に近づくと、その手首をもって脈を確認した。
「確かに、気を失っているようだが……これほど即効性のあるものとは」
「はい、ただ長時間は持ちません。遅効性のあるものは、一日以上眠らせることができます。遅効性の毒と即効性の毒を混ぜ、同時に大量に摂取すると二度と目覚めることはありません。それらは解毒剤が効きません」
私は先ほど見せた小瓶の毒であることを説明する。まさか、フェーブ王で実践することになるとは思っていなかったが、ここに倒れていることが証明になる。
私はだんだん鼓動が早くなるのを感じて、思わずクレイグの手をとった。
「クローディア、何か飲まされたのか? 苦しそうだが……」
クレイグは、私の口紅のついたワイングラスを見ると、チッと舌打ちをした。
「ク、クレイグ……ワインに仕掛けられていて。でも、飲まないと油断させられなくて……」
はぁ、はぁとだんだんと息が荒くなる。毒に慣らしている身体だけれど、早く吐き出すか何かしなければいけない。
「水……、水が」
「わかった」
そう言って、クレイグは水差しの水をコップに含むと、私に飲むように口元に持ってきた。だが、受け取る力も飲む力もでない。それを見た彼は、グイっとコップの水を飲むと、私に口移しで飲ませてくれる。
ゴクッ、ゴクッと飲むと、また口移しで飲ませてくれる。その間、ダストン殿下は何かを考えるようにして床に横たわる陛下を見ていた。
「殿下、遅効性の毒を使えば一日、眠らせることができます」
そう言って、私は自分のスカートの中に忍ばせていた毒針を取り出した。これがそうです、と伝えると殿下は「刺してくれ」と私に命じた。
もう一度、首の裏にそれを刺すと、またしてもピクッとフェーブ王の身体が揺れた。即効性で眠らせた後、遅効性を使えば効果は長い。
「殿下、後のことはお任せします。私たちの提案を、どうかお考え下さい」
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そう言って立ち上がると、殿下はクレイグに「どの部屋がいいか」と尋ねられた。
「殿下、至急馬車を用意してください。王宮に私たちが残れば、疑いがかかります。それは後々、良くない噂となるでしょう」
そう言ってクレイグは私を横抱きにすると立ち上がり、殿下の指示を受けた者と一緒に歩き始めた。私はだんだんと苦しくなっていく呼吸をはくはくとさせながら、クレイグの手のぬくもりを求めるようになる。
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