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第二章

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「これで、良しっと」

 手をパンパンとはたくと、私は今縛り上げた男を見る。昨日、ルフィナ嬢がいたために反撃できなかった男三人だ。今朝から、どうやら黒装束の男は出かけているらしい。

 ルフィナ嬢も一緒に連れて行かれたので、身代金と引き換えにするためルフィナ嬢を父の所に連れて行ったのだろう。無事に保護されるといいのだけど。

 そうなると、この屋敷には今ゴロツキの三人しかいない。黒装束の男が出かけている隙に男たちを毒針で襲い縛り上げた。油断していた男たちは、最早私の敵ではなかった。

 その後、牢につながれていた女性達を一斉に逃す。

 今から騎士団が来て保護されると、誘拐された事実が残ってしまう。そのことで却って、傷ついてしまう女性もいるかもしれない。

 そのため、自分の足で帰ることを望むかどうか彼女達に聞くと、全員がその方が助かると答えた。やはり誘拐されたことを大げさにしたくないのだろう。

「さて、と。これで黒装束の男が帰ってくるのが先か、組織が来るのが先か。どうせなら、一緒に来て欲しいけど」

 そう呟いているうちに組織の集団と思われる馬車と一緒に、黒装束の男が馬に乗って帰って来た。どうやら道案内をしていたらしい。玄関に入ると、男はゴロツキの男たちを呼ぶようにして屋敷の中に入って来た。

 そのまま組織の人間も一緒に屋敷に入るようだ。私は二階の窓から見て人数を数える。どうやら十人ほどが屋敷に入り、外の馬車を見ている者も何人かいる。男たちの持っている武器を見ると、やはり荒事に慣れている組織のようだ。

「おーい、どこだ? ちっ、どこかで休んでいるのかもしれん。仕方ない、俺が案内する。女達は地下牢に閉じ込めているから、こっちだ」

 黒装束の男が組織の人間たちを地下へ案内をはじめた。よし、予定通りだ。

 私は彼らが地下に入っていったのを確認して、仕掛けを使う準備すると、外で何やら争う声が聞こえてきた。

「あっ、マズイ! もう騎士団が来ちゃった!」

 どうやら騎士団は、馬車で待機していた組織の一員を叩きのめしているようだ。

「ひゃー、も、もう仕方ない!」

 ちょっと早いけれど、私は地下牢に仕掛けた爆薬の導火線に火をつけた。チリチリと仕掛けまで火が走っていく。


 ——ドォォン—— 

 間を開けて、もう二つ

 ——ドォォン——  ——ドォォン—— 

 よし、三つとも作動した! 上手くいけば、全員が痺れているに違いない。

 だが、自分で確認に行く前に、私は外にいる騎士団の所に走っていく。きっと今頃、爆発音で驚いているに違いないから、それが私の仕掛けであることを伝えたい。

 ホールを出て、外に出るまであと一歩のところで私はレーヴァンを見つけた。

「レーヴァン、あのね!」

「クローディア!」

 彼がそう叫んだ途端、私は何者かに後ろを取られ首に刃物をあてられているのを感じた。——黒装束の男だ。

「貴様、今、この女をクローディアと呼んだか」

 周囲が静かになる。騎士団員も、私がクローディアであることを知っていて、今回、誘拐されたことを知っているのだから慎重になっている。

「レーヴァン……」

「女、静かにしろ。今朝、お前達に渡した方は、どうやら違ったようだな。売り物となるはずだった女達もなぜかいないし、仕方がない。お前には一緒に来てもらうぞ」

 そう言うと男は、私の首筋にナイフをあてたまま、屋敷の奥へ連れて行こうとする。

 くっ、とレーヴァンが悔しそうな顔をしている。黒装束の男は、私の仕掛けた痺れ薬の入った爆薬に少しはやられているようだ、息を苦し気に短く呼吸している。

 ——いける。

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