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第一章
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「は?」
突然の申し出に、ウィルティム様は口を思わずポカンと開けてしまった。
「あ、フリでいいです、恋人のフリだけです。仮の恋人です!」
「あの、話が見えないのだけど」
狼狽えたウィルティム様に、私は事の成り行きを説明した。
「えっと、今、第一王子殿下が婚約者を選定するためのお茶会が開かれていて、私も何故か選ばれていて。でもって、何故かウィルストン王子にロックオンされているみたいで、でも諦めてほしいの。普通に言っても聞いてくれそうにないので、いっそのこと恋人がいれば、諦めてくれるかな~って。だから、恋人のフリをして欲しいのだけど、ダメ?」
確か、お願い事をするときは上目遣いで首を傾げるのがいいらしい。
見上げていると、少し目を泳がせたウィルティム様が、ゴホン、と咳を一つしてから質問してきた。
「君は、ウィルストン王子が嫌いなのか?」
改めて聞かれるが、やはり答えは同じだ。
「人として、ということの前に、王子の婚約者という立場が無理です。それが嫌なんです」
「そっか、王子の婚約者が嫌なんだね。では、王子の人となりを好きになれば、大丈夫なのかな」
最後のところは呟くようだった。
「えっ? 何か言われましたか?」
「あ、いや、こっちの一人言だよ。ええっと、仮の恋人ってことだけど、俺としては、本物でも構わないけど?」
「はっ、はい?」
「本物の、恋人になろうって、話」
想像していなかった答えに、思わずドキンとしてしまう。
「えっと、それは、それで問題があるかもしれませんし」
ここでチラッとお兄様を見る。
さっきから、私とウィルティム様のやりとりを傍観しているが、次期伯爵としてはやはり妹には堅実なところに嫁入りして欲しいだろう。
貴族ではないウィルティム様と、あれこれあっては問題になるかもしれない。
そう思っていると、ディリス兄さんが口を開いた。
「よし、リアリム。ウィルティムに期限付きの恋人になってもらう、で、どうかな?」
「期限付き?」
「あぁ、そうだ。とにかく、殿下がお前に執着しなくなればいいのだから、期間はそれまで。それでいいか?ウィルティム。その後のことは、また二人で決めればいい」
「お兄様がいいと言ってくれるなら、嬉しい」
「ああ、それでいい」
ウィルティム様だけに負担が行きそうだけど、それでいいのかなぁ
「あー、ウィルティム。当たり前だけど、節度ある付き合いにしてくれよな。ある程度は目をつむるけど」
「ははっ、わかっているさ。お前の大切な妹君だからな」
「ウィルティム様、今更こんなこと言って何ですが、ご迷惑ではありませんか?」
「迷惑? そんなことないよ。君を口説く期間を貰えたと思って、頑張るよ」
「はっ、はい???」
く、口説く期間?そんなことしなくても、既にウィルティム様に落ちています、私。
「うん、じゃぁ、早速デートを申し込まないと、な」
「デート?」
「あぁ、デート。街歩き。今度の休日に、王都を一緒に巡ろう。よし、休みの日を確認してくるから、わかったらまた知らせるよ」
そう言って、ウィルティム様は駆け足で去って行った。
「お、お兄様、これで良かったのかなぁ、私、何か早まってしまったような」
「ん? まぁ、いいんじゃないか? お前の気持ちも前向きになれれば、それが一番だからな」
ディリスお兄様は、そう言った途端私の顔を見てため息を吐いた。
私はそのため息の意味を気にすることなく、ウィルティム様とのデートを想像しては浮かれていた。
もうちょっと、気を付けていればわかったことなのに。
ウィルティム様の背丈と、ウィルストン殿下の背丈が一緒だったこと。
髪の色は違っていても、髪の長さが一緒だったこと。
他にも共通点が多かったのに、私は気が付いていなかった。
まさか、ウィルストン殿下の仮の姿が、ウィルティム様だったことを。
ディリスお兄様をはじめ、騎士様たちにとって、暗黙の了解であったことなど。
私は気が付かずに、頭の中はウィルティム様でいっぱいのお花畑になっていたのだった。
突然の申し出に、ウィルティム様は口を思わずポカンと開けてしまった。
「あ、フリでいいです、恋人のフリだけです。仮の恋人です!」
「あの、話が見えないのだけど」
狼狽えたウィルティム様に、私は事の成り行きを説明した。
「えっと、今、第一王子殿下が婚約者を選定するためのお茶会が開かれていて、私も何故か選ばれていて。でもって、何故かウィルストン王子にロックオンされているみたいで、でも諦めてほしいの。普通に言っても聞いてくれそうにないので、いっそのこと恋人がいれば、諦めてくれるかな~って。だから、恋人のフリをして欲しいのだけど、ダメ?」
確か、お願い事をするときは上目遣いで首を傾げるのがいいらしい。
見上げていると、少し目を泳がせたウィルティム様が、ゴホン、と咳を一つしてから質問してきた。
「君は、ウィルストン王子が嫌いなのか?」
改めて聞かれるが、やはり答えは同じだ。
「人として、ということの前に、王子の婚約者という立場が無理です。それが嫌なんです」
「そっか、王子の婚約者が嫌なんだね。では、王子の人となりを好きになれば、大丈夫なのかな」
最後のところは呟くようだった。
「えっ? 何か言われましたか?」
「あ、いや、こっちの一人言だよ。ええっと、仮の恋人ってことだけど、俺としては、本物でも構わないけど?」
「はっ、はい?」
「本物の、恋人になろうって、話」
想像していなかった答えに、思わずドキンとしてしまう。
「えっと、それは、それで問題があるかもしれませんし」
ここでチラッとお兄様を見る。
さっきから、私とウィルティム様のやりとりを傍観しているが、次期伯爵としてはやはり妹には堅実なところに嫁入りして欲しいだろう。
貴族ではないウィルティム様と、あれこれあっては問題になるかもしれない。
そう思っていると、ディリス兄さんが口を開いた。
「よし、リアリム。ウィルティムに期限付きの恋人になってもらう、で、どうかな?」
「期限付き?」
「あぁ、そうだ。とにかく、殿下がお前に執着しなくなればいいのだから、期間はそれまで。それでいいか?ウィルティム。その後のことは、また二人で決めればいい」
「お兄様がいいと言ってくれるなら、嬉しい」
「ああ、それでいい」
ウィルティム様だけに負担が行きそうだけど、それでいいのかなぁ
「あー、ウィルティム。当たり前だけど、節度ある付き合いにしてくれよな。ある程度は目をつむるけど」
「ははっ、わかっているさ。お前の大切な妹君だからな」
「ウィルティム様、今更こんなこと言って何ですが、ご迷惑ではありませんか?」
「迷惑? そんなことないよ。君を口説く期間を貰えたと思って、頑張るよ」
「はっ、はい???」
く、口説く期間?そんなことしなくても、既にウィルティム様に落ちています、私。
「うん、じゃぁ、早速デートを申し込まないと、な」
「デート?」
「あぁ、デート。街歩き。今度の休日に、王都を一緒に巡ろう。よし、休みの日を確認してくるから、わかったらまた知らせるよ」
そう言って、ウィルティム様は駆け足で去って行った。
「お、お兄様、これで良かったのかなぁ、私、何か早まってしまったような」
「ん? まぁ、いいんじゃないか? お前の気持ちも前向きになれれば、それが一番だからな」
ディリスお兄様は、そう言った途端私の顔を見てため息を吐いた。
私はそのため息の意味を気にすることなく、ウィルティム様とのデートを想像しては浮かれていた。
もうちょっと、気を付けていればわかったことなのに。
ウィルティム様の背丈と、ウィルストン殿下の背丈が一緒だったこと。
髪の色は違っていても、髪の長さが一緒だったこと。
他にも共通点が多かったのに、私は気が付いていなかった。
まさか、ウィルストン殿下の仮の姿が、ウィルティム様だったことを。
ディリスお兄様をはじめ、騎士様たちにとって、暗黙の了解であったことなど。
私は気が付かずに、頭の中はウィルティム様でいっぱいのお花畑になっていたのだった。
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