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アレンへのお願い

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 外にいる3人を見ていると、レオンが鞭を剣のように固め、師匠に切り付けていた。応じる師匠も、細長い剣で受けている。ソルも、レオンと入れ替わるようにソルに剣を振っている。ああ、師匠がやっぱり流した。強い。

ああ、師匠が笑っている。あの顔は、遊んでいる顔だ・・・レオンもソルも、真剣な顔をして切り付けているけど、全てかわされている。反対に、サボの繰り出す攻撃を避けきれていない。

また、血が流れている。でも、致命傷ではない。サボは、動けるだけの余力を残させて、相手をしている。

「どうしてこう、みんな戦ってばかりなのよ!誰が戦えと言った!誰が!」

 ギリ、と歯をかみしめる。止めに行きたいが、今はこの部屋を離れることができない。

 イライラしていても仕方ない。ララクライン嬢の様子を見てみると、少し苦しいのか、脂汗を流していた。

「ララクライン様、頑張ってください。もう、呪いは解けましたよ。」

「―――はぁ、ソル・・ディ  さ・ま。」

 ソルの名前を呼んでいる。手を握ってあげると、キュッと、握り返してくれた。眠りが浅くなってきて、夢でも見ているのだろうか。苦しい夢なのだろうか。そうでないと、いいけど。

 思えば、ララクライン様の何も、私は知らない。帝国に影響力の強い公爵家の一人娘。美しくウェーブした金髪と、可愛らしい容姿。ソルの隣に立っても、遜色ない容姿。できれば、ソルの助けになるような、内面も美しい方であると、嬉しいのだけど。

 そう思ってお顔をみていたら、少し首を動かし、目を開いて、瞬きをした。

「ララクライン様!」

「あ・・・私。ここは・・」

 目覚めたばかりだ。まだ、記憶が曖昧なのだろうか。

「ララクライン様、呪いは解けました。もう、大丈夫です。」

「あ。アイリス様?私、大丈夫って、呪いが解けたのですか?」

「はい、全て綺麗に消しました。明日の婚約式に行けますよ。ソルの隣に、立つのはララクライン様です。」

 まだ、ぼんやりとされているが、私は園庭の様子が気になる。ララクライン嬢は、麻酔から覚めたばかりで心配だが、今は外で戦っているバカな男達を、止めなければ。

「ララクライン様、すみませんが、園庭が気になります。3人が、なぜか喧嘩を始めていますので、止めに行きたいと思います。」

「そうですか、よくわかりませんが、急ぎましょう。私も起き上がります。肩を貸してください。」

 私たちは、非常用通路を使い、園庭に急いだ。ララクライン様は、まだふらふらしていたけれど、頑張って歩いてくれた。

 園庭にたどり着くと、そこには、ソルとレオンが、ところどころ血を流しながら、ボロボロになって肩で息をしていた。師匠には、呼吸に乱れは全くなかった。余裕で立っている。

 周囲には、目を覚ました様子の王制復古派の面々もいた。

「ソルディーエル様!」

 ララクライン嬢が、駆け寄ろうとする。心配なのだろう、サボの圧倒的な力に、ソルはなおも歯向かおうとしていた。

「ララクライン嬢、無事なら、そこでお待ちください。」

「ソルディーエル様・・・ララは、ララは、お傍で生きたいと思っています。どうか、私を選んでください。愛しているんです。」

 彼女の必死な告白が、ソルに届けばいいのに。ソルは、その告白さえ無視して、サボになお、切り込もうとしていた。

「師匠、どうして?止めてください。このままじゃ――」

 こんな状況を見るために、頑張ってきたわけではない。何のために、呪いを解いたというのか。

「アイリス、僕が君を攫うよ、と言ったら、はは、二人とも必死になって、僕を止めようとしているよ。」

 二人の攻撃を躱しながら、尚且つサボは二人を切り付けていた。

「師匠!私、師匠とは一緒に行きません。レオンを愛しているの!」

 私も必死になって叫ぶ。レオンに届いてほしい。

「アイリス、待っていろ。明日の為だ!」

 熱血バカには、届いていなかった。どうして、男はやっぱり話を聞いてくれない。

「アイリス、君は、スイレン姫だ。王国にとって、大切な姫だ。」

ソルが苦しそうに叫ぶ。叫びながらも、戦いを止めない3人。どうかしている。私の意思は、無視されるのか。

「ソル、私、貴方と王国の為には生きられない。王国、王国って言っているけど、もう王国は滅びたの!私は幻に付き合う気はない!」

 彼にも、もう目を覚まして欲しい。私は、王国の偶像になるつもりはない。

「ス、スイレン姫様・・・なんてことを。」

 王政復古派の者だろうか、私の名を呼ぶ。

私は、自分の相棒を取り出す。

「アレン、お願い。」

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