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妖銃アレン

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寮に帰り、一人になって、落ち着いて考えてみた。昨日から、いろんな情報が一度に来て、私は混乱していた。

「ねぇ、アレン。私、どうしたらいいの?アンケートに、なんて書けばいいの・・・」

 アンケートの締め切りはもうすぐやってくる。それまでに、決めないといけない。

ソルか、レオンか。そして今や、師匠のサボを選ぶという選択肢も増えた。こんなこと、誰にも相談できない。家族である父に話しても、王国支持者なので、ソル一択なのは明らかだった。

レオンから「俺を選べ」なんて言われたことは、恥ずかしくて誰にも言えない。今まで、会えば喧嘩ばかりしてきたのだ。甘さを増量されても、今も自分はレオンのプロポーズを半分も信じられない。

まして、サボ。サボを知っている人は、限られている。亡国の姫である自分が、妖銃使いを目指して指導を受けている相手が、サルベニア王国の滅亡への引導を渡したサボであることは、秘密であった。

「そういえば私、昨日は二人とキスをして、今朝はキス以上もして・・・。なんて週末だろう。これがいわゆるビッチ、というのかな。」

 男性を弄んでいるつもりはないが、結果的に3人の男性からプロポーズされている。しかも騎士に、魔術師に銃士。女性にとって、結婚する相手としては理想以上の人材だ。

今までは、『赤の日』に帝国の選んだ相手、・・・多分ソルと婚約し結婚する。そうとしか思っていなかった。それが今や、どうして私が選ぶことになっているのだろう。いつもの癖で、妖銃アレンを触りながら、青、赤、茶色・・・それぞれの男性の眼の色を思い浮かべ、ため息をついた。

緊張からの疲れが出たのか、二日酔いの影響か、アイリスは昼間であったが、いつの間にか眠っていた。

「・・・あい・す・・・」

 誰か、懐かしい声が呼んでいる。

「・・アイリス・・・」

「アイリス、アイリス!」

 大きな声で呼ばれた気がする。アイリスはぼうっとしながら、誰が自分を呼んでいるのか、目を開いた。

霞のかかった先には、黒いレースを使った、華やかでありながら上品な服を着た、ふくよかな、お年を召した女性の方を見た。優しそうな、黒い眼をしている。

「はい、アイリスですが、私を呼ばれましたか。」

「あぁ、良かった。やっと話ができたわ。貴方、本当に鈍感なんだもの。」

「あの、私のことを、ご存じなのでしょうか?」

「ご存じも何も、いつも一緒にいるじゃない。今日も、足にくっついていたでしょ。」

 いつも一緒で、足にくっつけている・・・それは妖銃アレンしかいない。

「アレン?―――もしかして、アレンなの?」

「そうよ、いつも私に話しかけているでしょ。貴方のことは、何でも知っているわよ。」

 妖銃アレンが、自分に話しかけている・・・銃と会話ができるなんて、どれだけ凄い妖銃なのだろうか。

「私、アレンっていうくらいだから、もっとこう・・・おじ様のような方を想像していました。女性だったのですね。」

 本当は、レオン風に言えば「スケベなおっさん」を想像していたとは、言えなかった。

「あら、想像と違っていて、ごめんなさいね。スケベなおっさんだったら、貴方の太ももも、大歓迎よね。」

 そう言うと、ケタケタと笑っていた。なかなか陽気な妖銃のようだ。
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