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特殊性癖?②

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「そこが……痛いのですか?」
「あ、ああ」

 痛いと言っているけれど、この前のような黒い靄はみえない。それでも奥に隠れているのかもしれないと、私は手を伸ばして布地の上から昂りに触れる。

「うっ」
「あ、ごめんなさい! 痛いのに、触ってしまって」

 ちょっと触れただけなのに、こんなにも痛がるなんて。大丈夫かな……

「違う、君が触れると……その……感じてしまい、出そうになる」
「出そうになる?」

 首をかしげると、ルドヴィーク様は頬をそっと赤く染めて「頼むから、それを俺に言わせないでくれ……」と呟いた。

「アリーチェ、俺は君の中で果てたい」
「え、あっ、はい」

 返事をした途端彼は、膝立ちになっておもむろに夜着を脱ぎ始める。白い上着を脱ぐと、まるで彫刻のように筋肉の筋の浮かんだ肌が現れた。上半身だけでも、傷が無数についている。彼が騎士となって戦いに従事した証だ。

 そして下穿きにも手を伸ばすと、腰の部分からそれをサッと下ろして全裸になる。

「……っ、あ」

 私の目の前には、一度見たあの昂りが再び現れた。傘の部分はてらてらと濡れ、陰胴は血管が浮かび上がり猛々しい。下にぶらさがる睾丸ははちきれんばかりに膨らみ、中に溜まった精子を放出しようと待ち構えている。

「はぁ……アリーチェ、もう挿れたい」
「え、えぇ」

 わかる、これを挿れてと言ったのは私だから、わかる。でも……

 ちょっと怖いけれど、ルドヴィーク様の目が血走っている。まるで最後までできなければ、どうにかなってしまいそうな勢いを感じ、彼のためにも気持ちを入れ直した。

「ここに、挿れて」

 震える膝を開いて、自分の一番恥ずかしい部分を彼に見せつける。先ほどのキスと愛撫で、下腹部は疼きもう濡れきっていた。

 私の戸惑いを無視するかのように、息を荒げた彼が屹立の先端を入り口に擦りつける。

 ――とうとう、来るのね……!

 ドキンと心臓が跳ね、血が全身を巡っていく。初めては痛いと聞くけれど……相手に任せるようにと言われている。熱が触れはじめ、ツプリといり始めたところで――

「うっ」

 ビクンっと身体を震わせたルドヴィーク様が、息を止めている。生暖かい液体が私の身体に飛び散ったことに気がつくまで、数秒かかり――

「え」

 もわっと立ち上る精の匂いに、彼が挿入前に爆発させてしまったことを思い至る。パイずりの時もそうだったけど、今回もかなり早い。

「……早漏?」
「違う!」

 瞬時に否定した彼は、顔を真っ赤にしながらも濡れた布を手に取った。

「俺は……違う、と思う。君に慣れれば……二回目からは、もう少し持つはずだ」
「はぁ」

 目元を赤らめたまま、ルドヴィーク様は私の身体を拭き始める。精液のついた夜着を脱いでくれと言われ、彼の目の前で全てを取り払った。

「あの……これで、いいですか?」
「ああ」

 布地を脇にある小机に置くと、彼は再び雁首をもたげ始めた男根を握りしめている。

 いかにも二回戦目に突入しようとする彼を前にして、私は言うべきことを伝えないと、と声を上げた。

「あのっ、もっとグラマラスな女性を好まれても……私にはネトラレの性癖はありません! ……それと、もしミセツケの癖もお持ちでも……ちょっと、私には」

 無理ですと言いたいけれど、それで嫌われてしまうのも怖い。できれば初めての夜は普通に抱いて欲しいけれど、経験豊富なルドヴィーク様のことだから、特殊性癖を持っていて、昼間の占い師を招いているかもしれない。

「は? 今、なんと言った?」

 彼はあんぐりと口を開け、私を驚いた顔で見つめてきた。

「ですから、ネトラレとかミセツケの性癖があるようでしたら」
「それは何だ?」

 ルドヴィーク様は心の底からわからないといった顔をしている。もしかすると、この癖を知らない?

「ネトラレと、ミセツケです」

 てっきり有名なものだと思い込んでいたけれど、違うのだろうか。アミフェ姉さまはあんなにも好きなのに。でも彼は眉根を寄せ、戸惑った顔をしている。

「それは……閨の手法なのか?」
「そうかもしれませんが、ネトラレはパートナーのいる相手を寝取ったり、寝取らせたりすることで興奮を高める性癖です。ミセツケは、まぐわっている様子をだれかに見せつけることで性的に昂ることです」
「はぁ」
「いろいろなパターンがありますが、今回ですとルドヴィーク様ご本人が私と違う相手とまぐわうことで私がネトラレを体験し、それを私にミセツケることで興奮するのかと思い」
「なんでそうなる!」

 途中で私のことばを遮るようにして、ルドヴィーク様は私の手を握りしめる。まるで熱がうつるようだ。
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