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10.目障りな女の代わりを用意すれば済む話じゃない♪~ラビニアside

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やっとあの女、アシュリーがいなくなってくれたわ。
帝国へ行ったからさぞかしひどい目にあっていることでしょうね。

……いい気味だわ。



小さいころからあの女は目障りだった。

勉強も碌にできないくせに、自分より早く生まれた王妃の子供というだけで、時期女王と呼ばれることが。
私は勉強なんてしなくても簡単にできるというのに、やっぱり平民の血が混じってるから出来が悪いのが生まれたのかしら。
おまけに野蛮な騎士団に混じって騎士の真似事なんてして、馬鹿じゃないの?

お母様だって。

「ラビニア。貴方がこの国の女王になるの。あんな平民の子じゃなくて。由緒正しき、侯爵家と王家の血を引く貴方がね」
「はい。お母様」

そう言ってたもの。
王家に汚らわしい平民の血が混じったものがいることが間違いだわ!
時期女王にふさわしいのは、この私なんだから!

あいつが帝国で辱めにあっている姿が見れないのが不満だけど、もう私には関係ないことね。




ラビニアはいい気分を更に引き立てようと、侍女から出された紅茶を口に入れる。

「……なにこれ?」
「王女殿下? どうかなさいましたか?」

ラビニアは、お付きの侍女の言葉に耳を貸さずに床にティーカップを投げ捨てる。
ガシャン! と激しい音とともに、ティーカップは粉々に割れる。

「こんな泥水みたいなもの飲ませてどういうつもり?」
「申し訳……ありません」
「なんでいつもみたいなお茶を出せないわけ? あたしのこと舐めてるの?」
「そんなことは決して……」
「じゃあどういうこと?」
「それは……」

そういわれても侍女は答えられない。
なぜなら、今までラビニアに出すお茶を用意していたのは、この侍女ではないからだ。
そう、今までお茶を用意していたのは、アシュリーのお付きの侍女だったアリアだった。

この侍女は、自分でお茶を用意するのがめんどくさくて、お茶を出すことしか満足にできないアリアに、すべてやらせていた。

「すぐに新しいものを淹れてきなさい!」
「はいっ……!」

ラビニアは、せっかくの気分を台無しにされた怒りもあって、侍女に新しい紅茶を淹れさせる。

最も、今までアリアがお茶を用意していたわけで、アリアがいない今、ラビニアがいつも飲んでいたおいしいお茶を飲むことは、もうできないのだが。




それから新しく侍女が持ってきていたお茶も、やはりラビニアは気に入ることはなかった。

「……あなた、もういらないわ」
「え?」
「お母様に頼んで、貴方の縁談組んであげるから、さっさと私の前から消えてくれない?」
「縁談……?」

ラビニアに仕えている侍女は、皆子爵以下の下級貴族の次女以下の令嬢である。
ラビニアに取り入って甘い蜜を得ようとしている人たちばかり。
ラビニアも王女という身分なので、そのことに関しては、母である側妃リーテルマから教えられている。

「私たちは、高貴な身分なの。だから三流貴族は皆私たちの奴隷なの。役立たずはきちんと処分しないとね」
「分かりましたわ。お母様」

その教えにのっとって、目の前の侍女は処分しないと。
ラビニアはそう考えた。

「貴方みたいな無能は、そうね……成金の三流貴族がお似合いね」

縁談相手の下級貴族は、王族であるラビニアとのつながりを。
ラビニアは、その縁談相手の貴族から結納金を受け取る。
どちらにも利益のある名案だと、ラビニアは考えた。

「貴方の実家にも悪くない話だし、流石私ね。我ながらいいアイディアだわ」
「そんな……」
「早速お母様にお話しないと……」

と言い部屋を出ていこうとするラビニアを、必死で止めようとする侍女。

彼女は今ままで、ラビニアのお付き侍女であることを笠に着て、王宮内で他の侍女に対して高圧的に当たることができたから。
それがなくなるどころか、ラビニアの怒りを受けて王宮を追放される、といった噂はあっという間に貴族中でひぃろまるだろう。

そうなったら、彼女の貴族夫人としての社交界は終わったも同然であろうことは、目に見えている。

「お、お待ちくださいっ! それだけは何とか……」
「私、貴方をお茶を淹れてくれるためだけに、側に置いたの。それができない役立たずは要らないの。早くお金になってくれない?」
「何でも、何でもいたしますから……ラビニア様のお側に……」
「へぇ……何でも、ねぇ……」

その言葉を聞いたラビニアは、何かをひらめいたようだ。

「ほんとに何でもしてくれるのね?」
「は、はい……」
「そう、じゃあ……」

というとラビニアは、侍女の耳元に自身の顔を近づけると。

「…………」
「!? ……そ、それは……」

彼女の耳元で何かを話している。
その内容に驚く侍女。

「できないの?」

ラビニアのいうことを聞くか、下級貴族のもとへ強制的に嫁がされるか。
侍女に拒否権はなく……

「か、かしこまりました……」

彼女は、自身の着ている服のボタンに手をかけ、それを外していく。
足元に落ちる侍女の服。

「そうよ。あの女がいないなら、代わりを用意すれば済む話じゃない♪」



ラビニアの部屋からは、バチンッ!という、何かを叩いている音が、何度も響いていた。

それに反応するように、女性のすすり泣く声も微かにしている。
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