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第1話
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「ビクトリア・リシャール! 貴様との婚約を破棄する!」
と王太子であるロベール殿下がわたくしに仰いました。
このお方は……前から馬鹿だとは思っていましたが、まさかここまで馬鹿だとは。
今日は王立学園の卒業記念パーティーで在校生や卒業生だけでなく、保護者の方まで集まるおめでたい日だというのに……
折角の祝いの空気を台無しにしやがって……この馬鹿王太子。
「婚約破棄……ですか。理由を教えてくださいませんか?」
「貴様の顔を見るのに飽きた。一緒にいてもつまらん。それだけだが?」
……はぁ?
ふざけるのもいい加減にしてくれませんか。
「わたくしたちの婚約は、殿下が陛下に直訴したから成立したのをお忘れですか」
「子供の時の話だろう? その時はいいなと思ったんだが、10年も見てたら飽きたんだよ」
こっちは最初から大嫌いでしたよ!!
だれが好き好んで貴方みたいな貧乏くじと婚約したいと思いますか。
昔からこうして我儘三昧。いい加減に我慢の限界ですわ。
そっちがその気なら、こっちにだって考えがあります。
「……陛下」
とわたくしは玉座から様子を見ていらっしゃる、殿下の御父上である国王陛下に話しかけました。
陛下も殿下の宣言を聞いて項垂れた様子。
後悔するならちゃんと王太子の教育をやりなさいよ。
王妃様は陛下との間に殿下を生んですぐに儚くなられた。
だからか陛下は、亡き王妃様との間の一人息子のロベール殿下をたいそうかわいがっておられた。
おかげで殿下は、それはそれは我儘にお育ちになられましたわ。
「契約の内容をお忘れではありませんよね?」
「そ、それは……」
「……何か?」
「……いや。なんでもない」
「では王太子殿下からの婚約破棄のため。契約通りにさせていただきますわ」
ああ、今から楽しみで仕方ないわ。
「おいビクトリア! 私を無視して勝手に話を進め――」
殿下は、その言葉を言い終わる前に、殴り飛ばされてしまいました。
――私の拳によって。
綺麗に壁まで吹っ飛びましたわね。
多少はスッキリしましたわ。
「き、貴様……何をしたかわかっているのか!」
「あなたの顔をぶん殴っただけですが、何か?」
「こ、こんなことして不敬だ! 誰かこいつを捕えよ!」
「――よい」
殿下の声で動こうとした兵士を陛下が静止しました。
まぁ、当然ですわね。
「どうして止めるのですか父上! 王太子である私への不敬ですよ!」
「――今から1時間。お前は王太子ではない」
「……は?」
何を言われたか理解できない殿下は、見事な阿保面をさらしている。
「正確には今から1時間王族の身分をはく奪。ですわ」
「な、なにを言っている……」
「先日陛下に謁見して婚約に関する契約を変更していただきましたの」
殿下との婚姻に関する契約に、殿下から婚約破棄された場合の内容を追加させていただきましたの。
「内容は『宣言から1時間。ロベール殿下のあらゆる身分をはく奪。その間ロベール殿下に危害を加えても、罰せられることはない』というものですわ」
「なっ……そんなこと」
「というわけで皆さま! 今から1時間。この男に溜まった鬱憤を晴らすチャンスですわよ!」
わたくしの声に我に返ったパーティーの参加者は、わたくしの言葉を反芻している。
さあ、会場の皆さまはどうなさるのでしょうね……
わたくしはそんなこと関係なく、これまでの溜まった鬱憤を殿下で吐き出させていただきましょう。
「さぁ、殿下。まだまだこんなものでは済ましませんわよ?」
「ひぃ! く、来るな!」
「逃げないでくださいませんか?」
と魔法で殿下を逃げれないように拘束する。
……思えばいろんなことがありましたわね。
「私と婚約できるだけありがたいと思え!」
と殿下から贈り物は今までもらったことはなかった。
わたくしの方が勉強ができたのを気に入らなかった殿下は
「少し頭がいいからって女のくせに調子に乗るな!」
とことあるごとに罵倒してきた。
式典等で殿下にエスコートされて会場に入ったかと思いきや
「貴様の顔を見ると気分が悪くなるから、どっか行ってろ!」
とわたくしは会場で一人残される日々。
……思い出したらまた腹が立ってきましたわ。
「も、もう……やめ……」
あら?もう虫の息ですか……早すぎてつまらないですわ。
まぁ、だいぶボコボコにしたし……大満足ですわ♪
「あの……ビクトリア嬢」
と背後から声がしたので振り返ると、在校生卒業生全員が集まっておりました。
「あら? 皆様も来たのですね?」
「殿下が、既に危ない気がするのですが……」
「あぁ。このままだと死んでしまうと? ご安心を」
準備は万端ですわ。
王国中の治療師に聖女、市場に出回っているポーションをギリギリまで掻き集めてきましたから。
瀕死の状態でもこの通りポーションを振りかけるだけで元通り♪
「各種武器も取り揃えておりますのでよかったらどうぞ」
と各々武器を手に取る人も出てきた。
「残り56分40秒です」
と律儀に兵士が時間を教えてくれた。
「だそうですからあとは皆さま……ご自由に♪」
「ちょっ……誰か、助け……」
と言われても殿下を助けようとする人は、誰一人として現れなかった。
全員に恨みを買うなんて、よっぽどやらかしてきたのね。
――ざまぁ、ですわ♪
――1時間後
ロベール殿下は聖女、治療師、ポーションのおかげで、身体には傷一つなかった。
1時間の中で殿下を傷つけた人には、もちろんお咎めはなし。
その後は皆何食わぬ顔して以前と変わらず殿下と接している。
その様子に殿下の精神はというと、どうやら大丈夫ではなかったようで……
ロベール殿下しか世継ぎはいらっしゃらない為、御父上の死去したのち国王陛下に即位されましたが、死ぬまで周囲の人間にビクビク怯えて過ごすことになったそう。
――ロベール陛下の即位中は、王国の歴史上で最も争いごとがなく平和な時代であった。
後の歴史書にはこう記されている。
と王太子であるロベール殿下がわたくしに仰いました。
このお方は……前から馬鹿だとは思っていましたが、まさかここまで馬鹿だとは。
今日は王立学園の卒業記念パーティーで在校生や卒業生だけでなく、保護者の方まで集まるおめでたい日だというのに……
折角の祝いの空気を台無しにしやがって……この馬鹿王太子。
「婚約破棄……ですか。理由を教えてくださいませんか?」
「貴様の顔を見るのに飽きた。一緒にいてもつまらん。それだけだが?」
……はぁ?
ふざけるのもいい加減にしてくれませんか。
「わたくしたちの婚約は、殿下が陛下に直訴したから成立したのをお忘れですか」
「子供の時の話だろう? その時はいいなと思ったんだが、10年も見てたら飽きたんだよ」
こっちは最初から大嫌いでしたよ!!
だれが好き好んで貴方みたいな貧乏くじと婚約したいと思いますか。
昔からこうして我儘三昧。いい加減に我慢の限界ですわ。
そっちがその気なら、こっちにだって考えがあります。
「……陛下」
とわたくしは玉座から様子を見ていらっしゃる、殿下の御父上である国王陛下に話しかけました。
陛下も殿下の宣言を聞いて項垂れた様子。
後悔するならちゃんと王太子の教育をやりなさいよ。
王妃様は陛下との間に殿下を生んですぐに儚くなられた。
だからか陛下は、亡き王妃様との間の一人息子のロベール殿下をたいそうかわいがっておられた。
おかげで殿下は、それはそれは我儘にお育ちになられましたわ。
「契約の内容をお忘れではありませんよね?」
「そ、それは……」
「……何か?」
「……いや。なんでもない」
「では王太子殿下からの婚約破棄のため。契約通りにさせていただきますわ」
ああ、今から楽しみで仕方ないわ。
「おいビクトリア! 私を無視して勝手に話を進め――」
殿下は、その言葉を言い終わる前に、殴り飛ばされてしまいました。
――私の拳によって。
綺麗に壁まで吹っ飛びましたわね。
多少はスッキリしましたわ。
「き、貴様……何をしたかわかっているのか!」
「あなたの顔をぶん殴っただけですが、何か?」
「こ、こんなことして不敬だ! 誰かこいつを捕えよ!」
「――よい」
殿下の声で動こうとした兵士を陛下が静止しました。
まぁ、当然ですわね。
「どうして止めるのですか父上! 王太子である私への不敬ですよ!」
「――今から1時間。お前は王太子ではない」
「……は?」
何を言われたか理解できない殿下は、見事な阿保面をさらしている。
「正確には今から1時間王族の身分をはく奪。ですわ」
「な、なにを言っている……」
「先日陛下に謁見して婚約に関する契約を変更していただきましたの」
殿下との婚姻に関する契約に、殿下から婚約破棄された場合の内容を追加させていただきましたの。
「内容は『宣言から1時間。ロベール殿下のあらゆる身分をはく奪。その間ロベール殿下に危害を加えても、罰せられることはない』というものですわ」
「なっ……そんなこと」
「というわけで皆さま! 今から1時間。この男に溜まった鬱憤を晴らすチャンスですわよ!」
わたくしの声に我に返ったパーティーの参加者は、わたくしの言葉を反芻している。
さあ、会場の皆さまはどうなさるのでしょうね……
わたくしはそんなこと関係なく、これまでの溜まった鬱憤を殿下で吐き出させていただきましょう。
「さぁ、殿下。まだまだこんなものでは済ましませんわよ?」
「ひぃ! く、来るな!」
「逃げないでくださいませんか?」
と魔法で殿下を逃げれないように拘束する。
……思えばいろんなことがありましたわね。
「私と婚約できるだけありがたいと思え!」
と殿下から贈り物は今までもらったことはなかった。
わたくしの方が勉強ができたのを気に入らなかった殿下は
「少し頭がいいからって女のくせに調子に乗るな!」
とことあるごとに罵倒してきた。
式典等で殿下にエスコートされて会場に入ったかと思いきや
「貴様の顔を見ると気分が悪くなるから、どっか行ってろ!」
とわたくしは会場で一人残される日々。
……思い出したらまた腹が立ってきましたわ。
「も、もう……やめ……」
あら?もう虫の息ですか……早すぎてつまらないですわ。
まぁ、だいぶボコボコにしたし……大満足ですわ♪
「あの……ビクトリア嬢」
と背後から声がしたので振り返ると、在校生卒業生全員が集まっておりました。
「あら? 皆様も来たのですね?」
「殿下が、既に危ない気がするのですが……」
「あぁ。このままだと死んでしまうと? ご安心を」
準備は万端ですわ。
王国中の治療師に聖女、市場に出回っているポーションをギリギリまで掻き集めてきましたから。
瀕死の状態でもこの通りポーションを振りかけるだけで元通り♪
「各種武器も取り揃えておりますのでよかったらどうぞ」
と各々武器を手に取る人も出てきた。
「残り56分40秒です」
と律儀に兵士が時間を教えてくれた。
「だそうですからあとは皆さま……ご自由に♪」
「ちょっ……誰か、助け……」
と言われても殿下を助けようとする人は、誰一人として現れなかった。
全員に恨みを買うなんて、よっぽどやらかしてきたのね。
――ざまぁ、ですわ♪
――1時間後
ロベール殿下は聖女、治療師、ポーションのおかげで、身体には傷一つなかった。
1時間の中で殿下を傷つけた人には、もちろんお咎めはなし。
その後は皆何食わぬ顔して以前と変わらず殿下と接している。
その様子に殿下の精神はというと、どうやら大丈夫ではなかったようで……
ロベール殿下しか世継ぎはいらっしゃらない為、御父上の死去したのち国王陛下に即位されましたが、死ぬまで周囲の人間にビクビク怯えて過ごすことになったそう。
――ロベール陛下の即位中は、王国の歴史上で最も争いごとがなく平和な時代であった。
後の歴史書にはこう記されている。
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