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新たな生活
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暫く体を起こしていた陽だが、やはり疲れてしまったのだろう。
蒴也が風呂から上がる前には座ったまま船を漕ぎ始めた。
軽い体をベッドに横たえ、そっと掛布を掛ければ穏やかな寝息が聞こえる。
駐車場で待機する麻生を上まで上がらせ、キッチンの片付けを言い付ける。
麻生は、まだ20代半ばと若いが吾妻が直接仕込んだだけのことはある。寡黙だがよく気の利く男で組の中でもメキメキと頭角を現している。
風呂から上がった蒴也と、陽を寝かせた吾妻がソファに座れば、蒴也の前にはロックアイスたっぷりのミネラルウォーターを、吾妻の前には温かいコーヒを置いて、要領よくキッチンを片付け始めた。
『いくつかご報告致します』
麻生がいるのだ。自然と若頭と若頭補佐の会話になる。
辰星会が確と炎星会を押さえたこと。炎星会は呆気なく解散を言い渡されたこと。創世会本部から明星会への報酬は幸田会長の計らいで蒴也個人へと渡されたこと。
それらを報告する頃には、片付けが終った麻生は、マンションの向かいにある創作和食店の器を手に
『駐車場で待機致します』
と頭を下げ引き上げて行った。
『炎星会の連中、このまま静かになるのか?』
吾妻の報告を最後まで黙って聞いていた蒴也だが、当然の懸念を口にする。
やはり警戒は怠れない。炎星会が解散となっても危険因子が取り除かれたことにはならない。それどころか、箍が外れた連中が自棄になることは想像に易い。
インテリヤクザの類いである明星会も喧嘩が弱いわけではない。腕の立つ組員も多いが、何よりも頭脳戦では長けている。
これまでも情報網を駆使して駆け引きの末、小さな火種を大火にする前に消し止めてきた。
血の気の多い炎星会のことだ。それほど浅はかな連中だとは思いたくないが短絡的な復讐に打って出る可能性は低くない。
『若も軽率な行動はくれぐれもお控えいただききますよう』
先日、陽を救出した際の振る舞いに対する解りやすい当て擦りだ。短く息を吐いた吾妻が、この話はここまでだと話の矛先を変える。
『それから、中野咲恵の件ですが』
予想通りの調査結果を伝えれば、蒴也に安堵の表情が見える。
佐伯からの提案とは言え、中野咲恵がヤクザに拒否反応を示すようであれば、この話は暗礁に乗り上げる。ヤクザに向けられる世間の目が温かいものではないことを蒴也も吾妻も十分理解している。
しかし佐伯のことだ。この話を持ちかけた時点で中野咲恵が了承すると踏んでいるのだろう。安易な助言をかますような男ではない。
明朝には顔を見せると言った佐伯に口利きを依頼すると言うことで話は簡単に纏まった。
一刻も早く陽の顔を見たい佐伯は、きっと明日も早くから顔を出すのだろう。
蒴也が風呂から上がる前には座ったまま船を漕ぎ始めた。
軽い体をベッドに横たえ、そっと掛布を掛ければ穏やかな寝息が聞こえる。
駐車場で待機する麻生を上まで上がらせ、キッチンの片付けを言い付ける。
麻生は、まだ20代半ばと若いが吾妻が直接仕込んだだけのことはある。寡黙だがよく気の利く男で組の中でもメキメキと頭角を現している。
風呂から上がった蒴也と、陽を寝かせた吾妻がソファに座れば、蒴也の前にはロックアイスたっぷりのミネラルウォーターを、吾妻の前には温かいコーヒを置いて、要領よくキッチンを片付け始めた。
『いくつかご報告致します』
麻生がいるのだ。自然と若頭と若頭補佐の会話になる。
辰星会が確と炎星会を押さえたこと。炎星会は呆気なく解散を言い渡されたこと。創世会本部から明星会への報酬は幸田会長の計らいで蒴也個人へと渡されたこと。
それらを報告する頃には、片付けが終った麻生は、マンションの向かいにある創作和食店の器を手に
『駐車場で待機致します』
と頭を下げ引き上げて行った。
『炎星会の連中、このまま静かになるのか?』
吾妻の報告を最後まで黙って聞いていた蒴也だが、当然の懸念を口にする。
やはり警戒は怠れない。炎星会が解散となっても危険因子が取り除かれたことにはならない。それどころか、箍が外れた連中が自棄になることは想像に易い。
インテリヤクザの類いである明星会も喧嘩が弱いわけではない。腕の立つ組員も多いが、何よりも頭脳戦では長けている。
これまでも情報網を駆使して駆け引きの末、小さな火種を大火にする前に消し止めてきた。
血の気の多い炎星会のことだ。それほど浅はかな連中だとは思いたくないが短絡的な復讐に打って出る可能性は低くない。
『若も軽率な行動はくれぐれもお控えいただききますよう』
先日、陽を救出した際の振る舞いに対する解りやすい当て擦りだ。短く息を吐いた吾妻が、この話はここまでだと話の矛先を変える。
『それから、中野咲恵の件ですが』
予想通りの調査結果を伝えれば、蒴也に安堵の表情が見える。
佐伯からの提案とは言え、中野咲恵がヤクザに拒否反応を示すようであれば、この話は暗礁に乗り上げる。ヤクザに向けられる世間の目が温かいものではないことを蒴也も吾妻も十分理解している。
しかし佐伯のことだ。この話を持ちかけた時点で中野咲恵が了承すると踏んでいるのだろう。安易な助言をかますような男ではない。
明朝には顔を見せると言った佐伯に口利きを依頼すると言うことで話は簡単に纏まった。
一刻も早く陽の顔を見たい佐伯は、きっと明日も早くから顔を出すのだろう。
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