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出逢い そして救出
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迷うことなく隣室の玄関のドアを蹴破った蒴也は狭い室内を一瞥し小さな浴室に視線を向ける。
未だ続く金切り声と鳴き声がそこから聞こえてくるからだ。
そこに見えるのは目を疑うような光景だった。
鬼の形相か般若の面かと言うような女が金切り声を上げながら、狭い浴室の外まで水が飛び散る程の水圧で男とも女とも見分けがつかない小さな体にシャワーを浴びせているのだ。
普段は冷静沈着を絵に描いたような蒴也の脳内で、何かがプチッと切れる音がした。
シャワーを持った女を片手で放り投げ、浴室の床に落とされた冷水だけが溢れ出すシャワーを止める。
冷水のせいなのか、怯えのせいなのか震える子供の中心を見れば小さいながらも男の証が縮こまっているのが解る。
『吐いた 汚い 美由紀 洗う』
解るような解らないような単語を並べ、少年は意識を失った。
蒴也から遅れること、ほんの数秒で吾妻が部屋に飛び込んだ時には 全身ずぶ濡れの細く小さな少年を蒴也が腕に抱きこんでいた。
『若っ!』
吾妻の声に我に返った蒴也は何かを耐えるような口調で、片付けた荷物の中から毛布とバスタオルを持ってくるよう指示を出した。
冷えきった少年の長い髪と体を丁寧に拭い 毛布で包むと蒴也は少年を横抱きし部屋を後にする。
自身が使っていた部屋に戻ることなく階段を降りれば、既に麻生が周囲に警戒しながらワンボックスカーのスライドドアの前で待機している。後部座席に少年を抱いたまま乗り込めば、ほとんど遅れることなく吾妻が姿を現した。
『片付けは終わっています。このまま事務所に?』
蒴也の顔と腕の中の少年を見比べながら吾妻が問う。
『いや、1度自宅に戻ってくれ』
蒴也の考えを正確に汲み取ったのだろう。
吾妻は助手席に乗り込み、運転手に指示を出すと後部座席の蒴也を振り返る
『麻生が気を回して外で待機していたから良かったようなものですが、一瞬でもお一人での行動は謹んでください。』
蒴也とて今が危険な時期であることは承知している。しかし、この腕の中にいる少年を、あの異常な空間から一刻も早く切り離したいと思ったのだ。
そうは言っても、得たいの知れない少年を同乗させたことに何も言わない吾妻は、何を考えているのだろう。優秀な若頭補佐は、直ぐに答えをくれる。
『再度調査致します。』
しかし、アパートの部屋を借りる前に隣室のことは調べているはずだ。
『申し訳ありません。隣の部屋に子供がいるなど、全く把握できておりませんでした。私の調査不足です。』
蒴也とて、そこを責めるつもりはないのだが、吾妻は己が平身低頭することで蒴也の行動に、気持ちに寄り添うことを示してくれる。
付き合いの長い補佐役は、常に一番の理解者でもある。
運転席には一介の組員もいる中、立場上ここで蒴也が吾妻に謝罪の言葉をかけるべきではない。それは蒴也も吾妻も理解している。
だが、吾妻に限って調査不足など考えられない。表からも裏からも綿密な調査をかけているはずだ。
それでも存在すら明らかにならなかった腕の中の少年はいったい何者なのだろう。
野生動物並みに勘の鋭い蒴也にさえ危険な臭いは一切感じとることができない。
『そうだな。この子と、あの女のこと、もう一度調べてみてくれ。』
未だ続く金切り声と鳴き声がそこから聞こえてくるからだ。
そこに見えるのは目を疑うような光景だった。
鬼の形相か般若の面かと言うような女が金切り声を上げながら、狭い浴室の外まで水が飛び散る程の水圧で男とも女とも見分けがつかない小さな体にシャワーを浴びせているのだ。
普段は冷静沈着を絵に描いたような蒴也の脳内で、何かがプチッと切れる音がした。
シャワーを持った女を片手で放り投げ、浴室の床に落とされた冷水だけが溢れ出すシャワーを止める。
冷水のせいなのか、怯えのせいなのか震える子供の中心を見れば小さいながらも男の証が縮こまっているのが解る。
『吐いた 汚い 美由紀 洗う』
解るような解らないような単語を並べ、少年は意識を失った。
蒴也から遅れること、ほんの数秒で吾妻が部屋に飛び込んだ時には 全身ずぶ濡れの細く小さな少年を蒴也が腕に抱きこんでいた。
『若っ!』
吾妻の声に我に返った蒴也は何かを耐えるような口調で、片付けた荷物の中から毛布とバスタオルを持ってくるよう指示を出した。
冷えきった少年の長い髪と体を丁寧に拭い 毛布で包むと蒴也は少年を横抱きし部屋を後にする。
自身が使っていた部屋に戻ることなく階段を降りれば、既に麻生が周囲に警戒しながらワンボックスカーのスライドドアの前で待機している。後部座席に少年を抱いたまま乗り込めば、ほとんど遅れることなく吾妻が姿を現した。
『片付けは終わっています。このまま事務所に?』
蒴也の顔と腕の中の少年を見比べながら吾妻が問う。
『いや、1度自宅に戻ってくれ』
蒴也の考えを正確に汲み取ったのだろう。
吾妻は助手席に乗り込み、運転手に指示を出すと後部座席の蒴也を振り返る
『麻生が気を回して外で待機していたから良かったようなものですが、一瞬でもお一人での行動は謹んでください。』
蒴也とて今が危険な時期であることは承知している。しかし、この腕の中にいる少年を、あの異常な空間から一刻も早く切り離したいと思ったのだ。
そうは言っても、得たいの知れない少年を同乗させたことに何も言わない吾妻は、何を考えているのだろう。優秀な若頭補佐は、直ぐに答えをくれる。
『再度調査致します。』
しかし、アパートの部屋を借りる前に隣室のことは調べているはずだ。
『申し訳ありません。隣の部屋に子供がいるなど、全く把握できておりませんでした。私の調査不足です。』
蒴也とて、そこを責めるつもりはないのだが、吾妻は己が平身低頭することで蒴也の行動に、気持ちに寄り添うことを示してくれる。
付き合いの長い補佐役は、常に一番の理解者でもある。
運転席には一介の組員もいる中、立場上ここで蒴也が吾妻に謝罪の言葉をかけるべきではない。それは蒴也も吾妻も理解している。
だが、吾妻に限って調査不足など考えられない。表からも裏からも綿密な調査をかけているはずだ。
それでも存在すら明らかにならなかった腕の中の少年はいったい何者なのだろう。
野生動物並みに勘の鋭い蒴也にさえ危険な臭いは一切感じとることができない。
『そうだな。この子と、あの女のこと、もう一度調べてみてくれ。』
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