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21話 宿敵
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川本先生と共に平本が行ってしまったため、あいつから何かを聞くことはできなくなった。今この場には、松原と俺と徳丸だけがいる。
「おいおい…」
俺が口に出す。
「松原、お前めちゃくちゃ悲惨な運命辿って生きてんじゃねえか。知らなかったよ」
「別に知らなくてもいいだろう。どうせいつか噂になるだろうなとは思ってたんだ」
松原は遠くを見つめて呟いた。
俺は頭を整理することにした。
取り敢えず今まで聞いたことを簡潔に説明すると、松原には愛美と言う名前の幼馴染(しかも年上)がいて、その人は1年生のある日学校でレイプされた。犯人は当時の3年生であり、徳丸は新人時代にその人たちを担当した。しかし犯人側は弁護士(中田という)を雇っていて、その結果端した金で強引に解決させられてしまった。
徳丸には昔からロリコン趣味があり、愛美さんの事件を担当して以来そのトラウマが変な方向に走るようになってしまい、自分が女生徒を襲う立場になってしまった(今回が最初ではあるが)。が、その時駆けつけた俺と松原でそれを止め、無事誰も苦しまずに済ませることができた。
話は戻る。いつ頃判明したのかはわからないが、愛美さんは父親不明の子を妊娠していた(恐らく親はあの3年生の誰かだろう)。そして愛美さんの両親と松原の両親はそれを松原に隠していた。なぜなら、それを松原が知ってしまうとひどく悲しんでしまうためであった。そのため松原が愛美さんの妊娠及び出産を知ったのは生まれてきた子供がある程度成長した後になってしまった(松原曰く「離乳食が食べられるぐらい」)。松原自身、自分だけ愛美さんの苦しみを知らなかったことにかなり絶望しており、また愛美さんも松原を拒むようになったため、やり場のない気持ちが今も心にくすぶっている──
というのが今まで俺が聞いた話だ。
つまりこの事件の発端は愛美さんをこの場所に連れ込んで犯した3年生であり、彼らを担当した中田という弁護士であり、そしてこの事件を隠蔽した学校関係者全てということになる。上級生が下級生を襲ったなどという事件が普通世に出回らないはずがないから、何らかの取引で揉み消したとしか考えられない。
「おいおい…」
俺は思わず同じセリフを反芻してしまっていた。
敵はもっと大きかったのだ。
やがて掃除を告げるチャイムが鳴る。
だけど、とてもこの学校を掃除する気にはなれなかった。
「おいおい…」
俺が口に出す。
「松原、お前めちゃくちゃ悲惨な運命辿って生きてんじゃねえか。知らなかったよ」
「別に知らなくてもいいだろう。どうせいつか噂になるだろうなとは思ってたんだ」
松原は遠くを見つめて呟いた。
俺は頭を整理することにした。
取り敢えず今まで聞いたことを簡潔に説明すると、松原には愛美と言う名前の幼馴染(しかも年上)がいて、その人は1年生のある日学校でレイプされた。犯人は当時の3年生であり、徳丸は新人時代にその人たちを担当した。しかし犯人側は弁護士(中田という)を雇っていて、その結果端した金で強引に解決させられてしまった。
徳丸には昔からロリコン趣味があり、愛美さんの事件を担当して以来そのトラウマが変な方向に走るようになってしまい、自分が女生徒を襲う立場になってしまった(今回が最初ではあるが)。が、その時駆けつけた俺と松原でそれを止め、無事誰も苦しまずに済ませることができた。
話は戻る。いつ頃判明したのかはわからないが、愛美さんは父親不明の子を妊娠していた(恐らく親はあの3年生の誰かだろう)。そして愛美さんの両親と松原の両親はそれを松原に隠していた。なぜなら、それを松原が知ってしまうとひどく悲しんでしまうためであった。そのため松原が愛美さんの妊娠及び出産を知ったのは生まれてきた子供がある程度成長した後になってしまった(松原曰く「離乳食が食べられるぐらい」)。松原自身、自分だけ愛美さんの苦しみを知らなかったことにかなり絶望しており、また愛美さんも松原を拒むようになったため、やり場のない気持ちが今も心にくすぶっている──
というのが今まで俺が聞いた話だ。
つまりこの事件の発端は愛美さんをこの場所に連れ込んで犯した3年生であり、彼らを担当した中田という弁護士であり、そしてこの事件を隠蔽した学校関係者全てということになる。上級生が下級生を襲ったなどという事件が普通世に出回らないはずがないから、何らかの取引で揉み消したとしか考えられない。
「おいおい…」
俺は思わず同じセリフを反芻してしまっていた。
敵はもっと大きかったのだ。
やがて掃除を告げるチャイムが鳴る。
だけど、とてもこの学校を掃除する気にはなれなかった。
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