上 下
267 / 276
第八章 激闘!トーナメントバトル

第二百六十五話 グラディアスへの帰還

しおりを挟む
 一回戦の戦いから数日後、零夜達は次の舞台であるグラディアスへ向かう事に。彼等はトキコが用意したワープゲートに飛び込み、そのままグラディアスにある平原に到着したのだ。

「久々のグラディアス!いい場所ね!」

 倫子は笑顔で背伸びをしながら、この世界に帰ってきた事を実感している。ミミ達も同様に笑顔で深呼吸していて、コーネリア達は平原に寝転んで日向ぼっこをし始めたのだ。

「お前等な……これから戦いが始まるっていうのに……」

 零夜は倫子達の行動に呆れ、紬達は苦笑いしてしまう。今から真剣な戦いが行われるのに、日向ぼっこなどの気分転換をするのは極めて異常と言えるだろう。

「まあまあ。彼女達も悪気があるわけじゃないし、ゆっくりさせる必要があるだろう」
「そうだぜ。東も気分転換にランニングするぞ!」
「しょうがないな……」

 ヒューゴと三上の誘いに対し、零夜は苦笑いしながら気分転換をする事を決断。すると何処からか変な音楽が流れてきた。その曲を聞いたアミリスはすぐに分かり、音のした方に視線を移していく。

「この曲……あの人に間違いないわ!」

 アミリスはすぐにこの曲の正体が分かり、ルリカ達も一斉に曲の方に視線を移す。同時にふんどし踊りの達人であるフリーマンが姿を現し、零夜達に近付いてきたのだ。

「ようこそ、準決勝の会場であるグラディアスへ!私がフリーマンだ!」
「フリーマン……あっ!エムール様が話していた変態男じゃないか!」

 フリーマンの自己紹介を聞いた零夜は、彼の事を思い出してしまう。ミミ達も後ずさってフリーマンから距離を取り、ヒューゴ達は唖然としながら彼を見ていた。

「ほう。エムールから話は聞いているみたいだな。さあ、君もふんどし踊りをやってみようじゃないか!」
「誰がするか!こんな踊りをしたら、恥ずかしさで外も歩けなくなるわ!」

 フリーマンの誘いに対し、零夜は大声でツッコミ叫ぶ。こんな踊りなんか覚えてしまったら、バカになってしまうのも時間の問題と言えるだろう。
 するとトキコがフリーマンに近付き、真剣な表情で彼を睨みつけていた。こんな事をしている場合ではないと判断しているのだろう。

「フリーマン?そろそろ案内を……」
「そうだな。では、会場に案内するとしよう。付いてきたまえ」

 フリーマンはすぐに現在の状況を確認し、零夜達を連れて試合会場へと向かい出す。彼の案内で問題なく進む事が出来たが、モンスター達が引いている光景には唖然とするしか無かった。モンスター達の様子を見れば、あんな変態男には近付きたくないのだろう。

 ※

「着いたぞ!ここだ!」

 数分後に目的地にたどり着き、零夜達はフリーマンが指差す方を見る。目の前には大きなバトルコロシアムが建てられていて、そこから熱気が十分に伝わっているのだ。

「ここが……準決勝の試合会場か……」

 零夜は真剣な表情でバトルコロシアムに視線を移していて、隣にヒューゴが彼の肩を叩く。彼もまた真剣な表情をしていて、この戦いに臨んでいるのだ。
 
「その通り。この会場こそブレイブスタジアム。グラディアスの最大闘技場と言われていて、多くの戦いが繰り広げられていた。魚闘士と網闘士、猛獣との戦い、更には公開処刑までも……」
「最後の方は言わないで!怖がるから!」

 ヒューゴの説明を聞いたミミ達は公開処刑に反応してしまい、思わずガタガタ震え始めてしまう。彼女達は怖い話は苦手であり、その映画などを見ただけで逃げ出してしまうのだ。

「ご、ごめん……だが、この試合で戦うのは確かだ。今まで以上に激しい試合も予測されるし、意地と意地のぶつかり合いがメインとなるだろう」
「その通りだ。このバトルオブスレイヤーは一筋縄ではいかない戦いとなるが、ここにいる皆は誰もが諦めずに最後まで立ち向かう覚悟がある」

 ヒューゴと風子の説明に零夜達も同意し、気を引き締めながらブレイブスタジアムに視線を移す。決勝に進む為にも負けられない一戦である以上、全力を尽くして戦う事が大前提となるだろう。

「確かにそうですね。では、参りましょう!」

 零夜達はそのままブレイブスタジアムに向けて歩き出し、最大の戦いへと身を投じ始める。これまで培った経験と技術を、全てぶつけ合う為に……

 ※

 それから一時間後、ブレイブスタジアムは満員となっていて、誰もがトーナメントの行く末を楽しみにしていた。しかも全ての世界に配信を行っている為、誰もがこの大会に釘付けとなっているのだ。
 控室ではミミ達が準備を終えている中、零夜は倫子を抱き締めながら落ち着かせている。すっかり試合前のルーチンとなっているこの行動は、何処からどう見ても付き合っているのかと誤解されそうな気がするが。

「むう……」

 ミミとエヴァはこの光景を見て頬を膨らましていて、アミリス達は苦笑いしながら彼女を落ち着かせている。零夜の女難はこの様子だと終わるのは何時になるのか。

「もう大丈夫!やるからには勝ちに行かへんと!」
「よし!出動開始だ!」

 零夜の合図で彼等は一斉に控室から移動し始め、試合ステージへと向かい出す。これが零夜達のトーナメントの初陣となり、彼等の成長を確かめる一戦が行われようとしていたのだった。

 ※

「さあ、まずは準決勝第一試合!メテオファルコンズ入場!」

 ステージの実況席ではラビリンがリングアナの役目を兼任していて、彼女の合図と同時に音楽が鳴り響いた。
 西口の入場ゲートから三上率いるメテオファルコンズが姿を現し、冷静な表情をしながらステージへと向かい出す。一回戦ではココアの活躍でスノーホワイトを下し、準決勝での戦いはどう繰り広げるのかに注目だ。

「続いてブレイブペガサスの入場!」

 東口からはブレイブペガサスが姿を現し、大歓声が響き渡る。彼等の活躍は既にグラディアスにも知り渡っていて、この世界にもファンが多いのが特徴。大事な初戦を無事に突破できるかが、今後の命運を分ける戦いになるだろう。

「いよいよ始まる準決勝第一試合。ブレイブペガサスVSメテオファルコンズ!共に過ごした者達との避けられない戦いが……今、幕を開こうとしています!」

 ラビリンの実況と同時に歓声が響き渡る中、ステージが光り輝きながら姿を変える。そのままステージは草原となり、凸凹の道も無くなって平面となっているのだ。

「今回のステージは草原。シンプルな試合会場となり、実力が試される戦いとなります!しかし作戦もカギとなりますので、それによって運命も変えられる事が可能です!」

 ラビリンの実況に観客席の皆が納得する中、零夜達はすぐに作戦を整えながら配置に着く。零夜、エヴァ、ソニアが攻め込み、残りは守りに専念。守備を堅めにする作戦に出たのだ。
 対する三上達も同じ作戦を取り始め、いよいよ戦いのゴングが鳴ろうとしていた。

(東。悪いが勝つのは俺達だ。この戦いでお前を超えてやる!)
(俺達は此処で立ち止まる理由にはいかない。ザルバッグを倒してアークスレイヤーを終わらせる為にも……勝つ!)

 三上と零夜は心の中で決意したと同時に、戦いのゴングが鳴り響く。準決勝第一試合が幕を開けたと同時に、観客も大歓声をしながら興奮し始めたのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター
ファンタジー
殺気を利用した剣術の達人である男、最上 悟(さいじょう さとる)。彼は突然、異世界に転移してしまう。その異世界で出会った魔物に魔人と呼ばれながら彼は魔物と異世界で平和に暮らす事を目指し、その魔物達と共に村を作った。 だが平和な暮らしを望む彼を他所に魔物達の村には勇者という存在が突如襲い掛かるのだった――― 【ただいま修正作業中の為、投稿しなおしています】

十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨
ファンタジー
クリアしなければ、死ぬこともできません。 妙な部屋で目が覚めた大量の人種を問わない人たちに、自称『運営』と名乗る何かは一方的にそう告げた。 難易度別に分けられたダンジョンと呼ぶ何かにランダムに配置されていて、クリア条件を達成しない限りリスポーンし続ける状態を強制されてしまった、らしい。 そんな理不尽に攫われて押し付けられた人たちの強制ダンジョン攻略生活。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

進め!羽柴村プロレス団!

宮代芥
大衆娯楽
関東某所にある羽柴村。人口1000人にも満たないこの村は、その人口に見合わないほどの発展を見せている。それはこの村には『羽柴村プロレス』と呼ばれるプロレス団があるからだ! 普段はさまざまな仕事に就いている彼らが、月に一度、最初の土曜日に興行を行う。社会人レスラーである彼らは、ある行事を控えていた。 それこそが子どもと大人がプロレスで勝負する、という『子どもの日プロレス』である。 大人は子どもを見守り、その成長を助ける存在でなくてならないが、時として彼らの成長を促すために壁として立ちはだかる。それこそがこの祭りの狙いなのである。 両輪が離婚し、環境を変えるためにこの村に引っ越してきた黒木正晴。ひょんなことから大人と試合をすることになってしまった小学三年生の彼は、果たしてどんな戦いを見せるのか!?

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冷酷魔法騎士と見習い学士

枝浬菰
ファンタジー
一人の少年がドラゴンを従え国では最少年でトップクラスになった。 ドラゴンは決して人には馴れないと伝えられていて、住処は「絶海」と呼ばれる無の世界にあった。 だが、周りからの視線は冷たく貴族は彼のことを認めなかった。 それからも国を救うが称賛の声は上がらずいまや冷酷魔法騎士と呼ばれるようになってしまった。 そんなある日、女神のお遊びで冷酷魔法騎士は少女の姿になってしまった。 そんな姿を皆はどう感じるのか…。 そして暗黒世界との闘いの終末は訪れるのか…。 ※こちらの内容はpixiv、フォレストページにて展開している小説になります。 画像の二次加工、保存はご遠慮ください。

処理中です...