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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百四十三話 鎧騎士の隠された真実

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「嘘だろ……本当にネコなのか!?」
「死んでいた筈だと思っていたのに……まさか生きているなんて……」

 鎧騎士が持つ鳥籠の中にいるネコの姿に、ロバ達は驚きを隠せずにいた。行方不明となっていた筈なのに、まさかここで再会するとは思わなかっただろう。
 ネコに至ってはすまなさそうな表情をしていて、ロバ達に視線を向けながら一礼をする。黙って出ていった事について申し訳無さを感じているだろう。

「ごめんなさい……黙って出て行って……」
「ネコが無事ならそれでいいけど、なんでこうなったんだ?鳥籠の中に入っているのが気になるし」

 ネコの謝罪にロバは笑顔で応え、なんで捕まっているのか疑問に感じていた。この事についてはイヌ達も同様で、気になるのも無理はない。

「実は私、バンドの方向性の違いを感じてしまい、黙って出て行ったの。何処に住もうか考えていたけど、あの古い城が目に入って……」
「捕まって今に至るという事ね。まさかあなたが捕まるとは想定外だったけど」

 ネコの説明を聞いたニワトリは納得の表情をする。一部は呆れて唖然としてしまう者もいるが。
 ネコは家出の途中に古い城に泊まろうと判断していた為、鎧騎士がいる事を知らずに入ってしまった。見つかって捕まえられるのは当然であるが、危険を察知していればこんな事にはならなかっただろう。

「だが、無事で良かった。後は鎧騎士をどう倒すかだな……」
「あれだけでかいと流石にな……僕達じゃ話にならないよ……」

 イヌは鎧騎士の大きさに冷や汗を流してしまい、ロバは思わず冷や汗を流してしまう。鎧騎士の大きさは十メートル以上ある為、倒すのには一苦労と言えるだろう。下手をすれば潰されてしまう事もあり得るのだ。

「かなり手強そうだけど、立ち向かうしかないからな」
「やっと四天王まで来た以上、ここで引く理由にはいかないぜ」
「その通りよ。私もこんなところで引いてしまったら、選ばれし戦士のパートナーとして失格だからね!」
「やるからには勝つのみ!皆、行くわよ!」

 ミミ達は一斉に鎧騎士に立ち向かい、最後の四天王との戦いが始まった。すると鎧騎士は右手に剣を構え、振り下ろしながら攻撃を仕掛けてきたのだ。しかも左腕に鳥籠を抱えたまま。

「チッ!危なかったぜ……ん?」

 ソニアが鎧騎士の攻撃を回避した直後、すぐに鳥籠に視線を移す。ネコが籠の中にいると攻撃しづらく、下手したら気を取られてやられてしまうだろう。

(ここはネコの救出を先にした方が良いな。奴は鳥籠の中にいて、頑丈となっている。となると……アタイがやるしかない!)

 ソニアは自ら真剣に考え、素早くネコを救出しに向かい出す。鎧騎士は剣を振りながら彼女を倒そうとするが、ことごとく躱されてしまった。彼女は盗賊なので素早さがとても高く、回避率がとても高い。だからこそ今の攻撃も余裕で回避できるのだ。

「見えた!」

 ソニアは跳躍したと同時に背中の翼を広げ、そのままネコのいる鳥籠へと向かい出す。すかさず懐から針金を取り出し、そのまま鍵穴に差し込んでカチャカチャと開け始める。

「鳥籠の鍵なんか軽いんだよ!アタイに掛かれば一発さ!」

 すると鳥籠の鍵が解除され、ネコは脱出に成功。そのままソニアに抱き着いたと同時に、彼女達は空を飛びながら鎧騎士から離れたのだ。

「助けてくれてありがとう!なんとお礼を言ったらいいか………」
「気にするなよ。それよりも楽器は持っているか?あの演奏が力になるが……」
「大丈夫!肌見放さずに持っているから!」

 ネコのお礼にソニアは笑顔で応え、逆に彼女に質問する。彼女達のバンド演奏は力になるだけでなく、鎧騎士を倒せる手がかりになると判断したのだろう。
 それにネコは笑顔で応えたと同時に、彼女達は地面に着地した。その場にロバ達が一斉に駆け出し、ネコとの再会を喜んだ。

「無事で良かった!本当に無事で良かった!」
「心配したんだからな!」
「皆、迷惑かけてごめんね……」
「気にしないで!これで四人揃ったし、ここから再び始めましょう!」

 ロバ達はネコと再会した事に、涙ながらに喜んでいた。行方不明である筈が生きている事を知り、ようやく再会できた事に涙を流さずにはいられなかった。
 ネコも涙を流しながら謝罪し、赤ずきんは涙目で微笑んでいた。これでようやくバンドメンバーが完全に揃い、本格的に動き出そうとしているのだ。

「よし!今から演奏開始だ!アタシ達の音楽を聴いてくれ!」

 赤ずきんの合図でロバ達は楽器を構え、精一杯演奏し始めた。それはまさに力になる演奏で、辺り一面に音楽が鳴り響いているのだ。
 当然ソニア達の力が増幅し始め、動きのキレも良くなってくる。音楽の力は無限大である為、ここからが戦いの本番と言えるだろう。

「力が湧いてくる……これが音楽の力なのね」
「四人は私がいなくても大丈夫みたいだし、やるからには……」
「叩きのめさないとね!行くわよ!」

 ミミとキララは素早く駆け出したと同時に、跳躍して鎧騎士に立ち向かう。すると彼女達はお互い背中合わせでくっつきながら回転し始め、ドリルの様に頭部へと向かおうとしているのだ。
 ドリルの動きは螺旋を元にしていて、回転する事に威力が上がってくる。ミミとキララの回転もドリルの様に素早く、今でも破壊しようとする勢いを保っているのだ。

「「ドリルクラッシュ!」」

 二人の回転攻撃は鎧騎士の頭部に直撃し、勢いよく回転しながら破壊しようとしていた。更に摩擦によって頭部に熱が入り始め、全身に熱が伝わろうとしているのだ。

「熱い熱には水が効果的だ!すぐに離れろ!」
「「了解!」」

 杏の合図でミミとキララが鎧騎士から離れた直後、彼女は水の爆弾を投げ飛ばす。爆弾は頭部に当たって爆発を起こし、水が辺りに散らばっていく。
 すると、頭部に罅が入り始め、そのまま全体に伝わり始める。熱を帯びた鉄に対して急速で冷やせば、耐えきれなくなってヒビ割れてしまうのだ。

「キララ!最後の一撃はお前が決めろ!」
「これで終わり!アイアンキック!」

 最後はキララの強烈ドロップキックが炸裂し、頭部の一部が砕かれてしまう。それによって彼女は鎧の中に入り込む事が出来たが、いきなり真下に落下し始めたのだ。

「きゃあああああ!!」

 キララは悲鳴を上げながら落ちていき、とある場所に不時着してしまった。あまりの高さなのでお尻が痛くなるのも当然だ。

「痛い……ん?」

 キララが泣きそうになったその時、目の前に扉を発見する。気になった彼女はすぐに扉を開けると、そこはコクピットの様な部屋が待ち構えていた。ファンタジー世界でありながらSF展開となるのは想定外で、彼女がポカンとするのも無理なかった。

「まさか侵入者が出てくるとはな……どうやらセキュリティが甘いみたいだな」
「そ、その声は!?」

 キララが声のした方に愕然とする中、コクピットにいる者はその姿を見せる。その正体を見たキララは目に涙を浮かべていて、驚きを隠せないのは当然であるのだ。

「なんでアナタがここにいるの!?裕太郎!」

 そう。コクピットにいる者の正体は、かつてキララの仲間としていて、アークスレイヤーによって死んでいた裕太郎だったのだ……
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