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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百三十一話 鬼ヶ島への突入

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 零夜達四人は空を飛びながら鬼ヶ島に向かっているが、この辺りは敵がいないので安心して進めるだろう。しかし、何処かに潜んでいるので油断は禁物だ。
 ケイコは目を光らせて敵をサーチするが、今のところは大丈夫の様だ。

「今のところは敵についてはいないみたい。けど、鬼ヶ島に着いたら敵がいるから気を付けてね。思わぬ形で襲撃する恐れもあるから」

 ケイコからの注意に皆が頷き、全員が前を向いて鬼ヶ島に視線を移す。鬼ヶ島からは異様な雰囲気が立ち込められているだけでなく、悪のオーラも漂っているのだ。
 ケイコはサーチアイと鷹の目を持つキジの鳥人戦士で、飛行能力はかなりの実力を持つ。スパイ活動としては成績も良いので、暗殺者を目指して日々努力しているのだ。

「ケイコがいてくれて助かったわ。私も戦闘面ではレベルを上げているし、彼女に負けずに役に立たないと!」

 マツコはケイコがいる事に安堵するが、自身も負けられないと気合を入れる。彼女とは友でありながらライバルでもある為、切磋琢磨しながら頑張っているのだ。
 更にマツコは戦闘が得意なので、如意棒を使った攻撃を得意としている。更には筋斗雲を呼び出したり、毛を抜いて様々な物に変化させる事も。孫悟空に憧れているので、このような技を必死で取得しているのだ。
 
「二人のやる気を見ると私も負けられません。私も零夜様のパートナーである以上、精一杯張り切ります!」

 ルリカも負けじと気合を入れ始め、零夜の為に戦う事を決意する。彼女は光太郎を失ってから零夜と契約していて、今では彼の無二のパートナーとなっている。仲間を失う同じ悲劇を起こさない為にも、彼女は更に強くなる事を心から決意しているのだ。

(この様子だと三人は大丈夫と言えるし、頼りになる存在に近付いているだろう。しかし、ここで成長したとしても、油断は禁物だ。あの鬼達は何をしでかすか分からないし、強敵である可能性もあるからな……)

 零夜は心の中で呟きながら、今後の戦いを真剣な表情で考え始めた。恐らく鬼ヶ島での戦いについてだが、敵もそう簡単に甘くない。むしろ何かを考えているに違いないだろう。

「話はそこまで。ようやく鬼ヶ島に着いたわ」

 ケイコが指刺す方に視線を合わせると、鬼ヶ島の海岸付近が見えていた。波打ち際がとても激しく、ギザギザの岩場が多くある。ここで海水浴をしようとしても、怪我をしてしまうのでお勧めできないのだ。

「ここが鬼ヶ島……凄いところですね。見た目だけでもゾッとしてしまいます……」

 ルリカは目の前にある鬼ヶ島の全体図を見て、冷や汗を流しながらゴクリと息を呑んでしまう。
 元からこの島は鬼達の住処であり、悪さをする奴等が殆ど。その為危険な鬼達がわんさか出てくるので、恐怖のあまり冷や汗を流してしまいそうだ。

「この先に危険な鬼達が出てくるのも時間の問題。冷静に進みながら行動するぞ」
「ええ。用心して進みます!」

 零夜は真剣な表情でルリカ達にアドバイスをし始め、彼女が拳を強く握りしめながら応えていた。マツコとケイコも頷きながら応えていて、自らの任務を果たそうと強く決意をしているのだ。
 零夜達は鬼ヶ島に到着したと同時に、島の領土にゆっくりと着地する。彼等が辺りを見回しながら行動しようとしたその時、岩場の陰からモンスター達が姿を現したのだ。

「こんな時にモンスターが出てくるなんてね。しかも、数が多く出ているわ」
「けど……日本の昔話に出てくる奴等じゃないし、ごちゃ混ぜの展開になるのはちょっとね……」

 マツコは腕を鳴らしながら戦闘態勢に入ろうとしているが、ケイコは出現しているモンスターの種類に唖然としている。何故なら出現しているモンスターは、インプとゴブリンの二種類しかいないのだ。しかも色違いのレアな敵もいるみたいだが、目的があるとしたらそれどころでは無いだろう。

「無駄話はそこまでだ!すぐに攻撃を仕掛けるぞ!」
「了解です!」

 零夜の合図と同時に、彼等はそのまま敵に向かいながら攻撃を仕掛け始める。インプとゴブリン達もそれぞれの武器を構えながら、目の前にいる侵入者を倒しに向かい出したのだ。

「私達を甘く見ると痛い目に遭うわ!伸びろ、如意棒!」

 マツコは如意棒を伸ばしたと同時に、華麗に振り回しながらインプ達を蹴散らしていく。
 アクロバティックな動きで敵を翻弄しつつ、周囲への範囲攻撃も繰り出していく。運動神経抜群である彼女だからこそ、この技は誰もできないだろう。

「私も負けられないわ!マジックスパーク!」

 ケイコは右手からスパークを発射し、襲い掛かるゴブリン達に次々と直撃させていく。するとスパークを喰らってしまった敵は風船の様に膨らんでしまい、次々と破裂して消滅したのだ。
 ケイコの魔術が上級レベルであるからこそ、彼女にしかできない技なのだ。

「私も負けられない!ここで一気に攻めさせてもらうわ!ブレイドスラッシュ!」

 ルリカも負けじと剣を変化させ、光り輝くロングソードへと変化させた。そのまま剣を振りながら、襲い掛かるインプ達を次々と斬り倒していくのだ。
 ルリカの剣術はヒーローアイランドで鍛えてから上達していて、今では玄人を超える最強レベルに近づいている。もしかするとこの実績が認められ、選ばれし戦士になるにも時間の問題だろう。

(あいつ等、すごく成長しているな……俺が出なくても大丈夫だし、ここは様子を見ておくとするか)

 零夜はルリカ達の行動に感心しつつ、自身は安全な場所へと移動しながら様子を見る事に。自身のパートナーとその仲間が成長している姿に、心から感心しているのだ。
 そのままルリカが最後のインプを倒し、ここにいるモンスターは全滅したのだ。

「零夜様!こちらは終わりました!あまり大した事なかったです!」
「まあ、私達にかかれば余裕だけどね!」
「このぐらいの敵はもう大丈夫だから!」

 ルリカ達は笑顔の表情をしながら、零夜に声をかけている。そのまま彼は彼女達の下に近づき、それぞれの頭を優しく撫で始めた。ここまで成長している事が、とても嬉しかったのだろう。

「よくここまで成長したな。だが、油断は禁物と言えるだろう。まだ中の敵が残っているからな」

 零夜は洞穴を指さしながら、まだ敵がいる事を説明する。その奥では鬼達の声が聞こえていて、どんちゃん騒ぎをしている様だ。つまり彼等を倒さない限りは、この戦いは終わらないと言えるだろう。

「つまり奴等を倒さない限りは、四天王を倒した事にならないみたいね。むしろここからが本番である以上、必ず鬼達を倒すわ!」
「私も緊張している部分はあるけど、ここで倒れる輩ではないからね。最後まで諦めずに立ち向かう。それが私の答えよ!」

 マツコとケイコは目的を果たすまで、最後まで戦う事を決断。ここまで進んで引き返すような輩ではないので、頼りになる存在と言えるだろう。

「二人がここまで成長するなんて……見事としか言えないですね」
「そうだな。ここで立ち止まらずに突き進むからこそ、俺達と言えるからな。すぐに洞穴の中に入るぞ!」

 零夜の合図と同時に、彼等は鬼達がいる洞穴の中へと入り始めた。同時に四天王の一人である鬼達との戦いが始まろうとしていて、緊迫感の空気が漂い始めたのだった。
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