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第六章 山口観光騒動記

第二百九話 凱旋のバトルオブスレイヤー

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 零夜達ブレイブペガサスと殿町達デビルキラーズのバトルオブスレイヤーは、彼とミミの故郷である山口市で行う事になった。二人にとっては地元凱旋試合となるが、相手がアークスレイヤーとなると勝たなければいけないのだ。
 ルリカ達は観客席に移動していて、他の観客も席に座っている。しかし、アークスレイヤーの観客はいない為、完全ホームとなっているのだ。

「いよいよ始まりますね……零夜様、頑張ってください!」
「ミミー!春川家の意地を見せてくれー!」
「零夜!しっかりしなさいよー!負けたら分かっているわねー!」

 ルリカ達の声援が響く中、ラビリンがマイクを構えながら姿を現す。同時にテレビ中継も始まっているので、全世界がこの戦いを視聴しているのだ。

「さあ、いよいよ始まります!今回のバトルオブスレイヤーは、ブレイブペガサスとデビルキラーズの世紀の一戦!ブレイブペガサスの戦いを伝えるのは、実況と司会のラビリンです!お願いします!」

 ラビリンの自己紹介に観客達から歓声が響き渡り、彼女は手を振りながら笑顔で応えていた。彼女の実況と司会はファンは多く生み出していて、四分の一の観客が彼女目当てに来ているのだ。

「審判には神々からの使いであるトキコさんです!今日も宜しくお願いします!」
「任せて!厳格な審判は私がどうにかするから!」

 審判のトキコはウインクしながら応えていた直後、それぞれの入場ゲートからシグナルが発せられる。どうやら入場の準備ができたとの事だろう。

「それでは、選手入場!まずはデビルキラーズです!」

 ラビリンの合図と同時にメタルバンドの音楽が鳴り響き、ゲートから殿町を筆頭としたデビルキラーズが姿を現す。彼等は一列で入場しているが、その動きはバラバラとなっているのだ。
 出場するメンバーについてはこの通りである珍しくないですね。名取さん痛いの。

デビルキラーズ
キャプテン:殿町亮太
羽田道之助
坂巻小吉
沼田大二郎
花山炭五郎
乗川太郎
乗川次郎
グリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチン

「悪の刺客、ここにあり!デビルキラーズ!」
「引っ込めー!」
「また来やがったな、この問題児共が!」

 当然観客からはブーイングの嵐が鳴り響き、デビルキラーズに向かって物が投げつけられる始末。あまり人気がないのが証拠で、当然殿町はワナワナと震え出してしまう。

「ブーイングは当然の事だ……普通に勝てば良いんだよ」
(((大丈夫か……?)))

 殿町は平然としながら耐えているが、その様子に羽田達は心配そうな表情をしてしまう。この戦いにどう影響を与えるのか気になるところだ。

「続きまして、ブレイブペガサスの入場です!」

ブレイブペガサス
キャプテン:東零夜
春川ミミ
藍原倫子
国重ヒカリ
エヴァ
アミリス
ソニア
ジャンヌ・ダルク

「運命を切り拓くニューエース軍団!ブレイブペガサス!」
「「「ワアアアアアア!」」」

 ラビリンの実況と同時に、ブレイブペガサスに対して観客から大歓声が沸き起こる。地元出身の戦士が二人いるとなると、ブレイブペガサスを応援したくなる事に我慢が出来なくなったのだ。

「頼んだぞ、東!」
「春川、行けー!」
「我等地元の希望だ!絶対に勝てよ!」

 観客達からの大歓声に対し、零夜は冷静に頷きながらミミ達に視線を移す。地元の人達の期待がかかるプレッシャーもあるみたいだが、零夜は目の前の敵を倒す事に集中力を高めているのだ。

「この戦いで勝てば課題はクリアとなる。しかし、相手は因縁の敵。やるからには容赦なく本気で倒すぞ!」
「「「おう!」」」

 零夜からの宣言にミミ達は一斉に応え、それぞれの役割である配置に移動し始める。バトルオブスレイヤーは相手陣地の攻めと味方陣地の守りに分かれて行動する為、偏りのない戦法をどう繰り広げるのか大事になるだろう。
 まずはブレイブペガサスから。攻めは零夜、ミミ、ソニア、エヴァの四人。守りは倫子、ヒカリ、アミリス、ジャンヌの四人となる4ー4である。バランスの良さが取れていて、基本的なオーソドックスと言えるだろう。
 対するデビルキラーズは攻めが殿町、羽田、沼田の三人、守りは坂巻、花山、乗川兄弟、ラスプーチンの五人である3ー5の態勢である。守りを少し固くする態勢を考えているが、罠を仕掛けてくるので要注意だ。

「準備は良い?では、試合開始!」

 トキコの合図と同時に戦闘が始まり、大歓声が響き渡る。同時に戦士達が駆け出しながら、敵陣地を目指し始めたのだ。

「最初から一気に攻める!狙うは東だ!」
「俺もそっちに向かう!」
「おい、待て!東を倒すのは俺だ!」

 羽田と沼田は零夜を倒そうと向かってしまい、それに殿町も慌てながら零夜を倒そうとしている。彼等は零夜を倒そうと躍起になっていて、守りの方も零夜を倒そうとウズウズする者が続出していくだろう。

「デビルキラーズは東零夜を狙おうと先走っている!これはどうやら東争奪戦が始まるのか!?」
「これはどうやら決まったな……奴等は本当に馬鹿としか言えないな……」

 ラビリンの実況が響き渡る中、観客席には神室の姿もいた。この様子に彼はため息をつくしかなく、呆れた表情をしているのだ。
 バトルオブスレイヤーは各々の戦力だけでなく、仲間との連携と絆が試されるチームワークの試合だ。ブレイブペガサスのチーム連携がとても良く、自身の役割を活かしながら戦いを繰り広げている。しかしデビルキラーズは大した連携力はなく、皆が零夜を狙おうとしているのが欠点なのだ。

「明らかに狙いは俺か!本当にしつこいとなると、守備に入っている奴等も……」

 零夜が真剣な表情で今後の展開を推測した途端、敵陣の方で新たな動きがあった。坂巻、花山、乗川兄弟まで守りの役割を捨ててしまい、そのまま零夜を倒そうと動き出してしまったのだ。

「あーっと!坂巻、花山、乗川兄弟まで!守りを捨てて自らの欲望の為に突っ走った!」
「やっぱり奴等は俺を恨んでいるのか!ソニア、敵陣を攻めてくれ!ラスプーチンは魔術系を得意とするが、お前の刃なら倒せる!」
「任せとけ!罠もすべて破壊するからよ!」

 ソニアは単独で敵陣を攻めに向かい出し、残ったのは零夜、ミミ、エヴァの三人となった。すると殿町達七人が姿を現し、零夜を睨みつけながら戦闘態勢に入り始める。狙いは零夜でミミとエヴァは眼中にないのだ。

「となると……ここは一人ずつ前に出て相手になろう。まずは誰が出るつもりだ?」

 零夜からの真剣な質問に対し、まずは羽田が前に出る。羽田は腕を鳴らしながら戦闘態勢に入っていて、真剣な表情をしながら獲物を睨みつけていた。その様子だと最初から飛ばすつもりだろう。

「まずは俺が行くぜ。あと、このルールについてだが、俺達には特別なルールを仕組んでいるんだよ」
「特別なルール?まさか不正とかじゃないだろうな?」

 零夜は羽田の説明に疑問に感じ、彼を真剣な表情で睨みつける。それに羽田は首を横に振りながら否定していて、本当の説明を伝え始める。

「そいつは違うな。俺達は脱落したら……そのまま消滅して死ぬ事になるんだよ……」
「「「!?」」」

 羽田からの衝撃的な事実に、零夜達だけでなく観客達までも驚きを隠せずにいた。アークスレイヤーは失敗したら死を以て償うのが決まりであり、殿町達もそれを覚悟していた。バトルオブスレイヤーの戦いは始まったばかりだが、いきなりの展開で波乱が起きようとしたのだった。
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