ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第六章 山口観光騒動記

第百九十四話 通り魔事件の真相

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 襲い掛かった男が通り魔事件の犯人である事に驚きを隠せず、誰もがざわつくのも無理はない。男の名前は早川徹。年齢に関しては二十代後半で、黒い短髪なのだ。

「で、早川と言ったな。俺達を殺そうとしていたのは刺客として来たみたいだが、何故通り魔事件を起こしたのか説明してもらおうか!」

 零夜は真剣な表情で早川を睨み付けていて、エヴァ達も真剣に話を聞こうとしていた。周りにいる客はざわつくのも無理はなく、一部は写真を撮ったり、警察に連絡していた。

「ああ……あれは……あの事件を起こす昨日だったな……」

 早川は空を見上げながら、事件の昨日の事を語り始める。それが通り魔事件に繋がる重要な話となるので、零夜達は真剣に聞き始めた。



 当時の早川はバイトをしていたが、何故かクビになってしまった。どうやら店長の機嫌を損ねたらしく、それだけでクビになっていたのだ。

「クソッ!なんで俺がクビになったんだよ!ただ機嫌を損ねただけで、いくら何でもおかしいだろ!あそこはブラック企業なのかよ!」

 早川は悔しそうな表情をしながら歩いている中、すぐに空を見上げる。空は夕暮れで太陽は沈もうとしているのだ。

「またバイト先を探さないとな……ん?」

 早川は隣の方を見ると、そこには勇人がスマホで電話をしながら歩いていた。仕事帰りでホテルに向かうところだ。

「美津代、俺は大丈夫だから。それじゃ」

 勇人がスマホを切ってそのままホテルへと向かい、その様子を見た早川はすぐに前を向いて歩いていた。

(あの人、付き合っているのだろうか気になるが……そんな事よりもあの店長だ!クビにしたのならこっちだって考えがあるからな。明日は地獄を見せてやる!)

 早川は心から店長の殺意を決意したと同時に、そのまま何処かへと走り去って行った。これが翌日の事件になるとは、思いも知らなかっただろう。



 それから翌日、防府天満宮では屋台の設営が終わっていて、店長が仕込みの準備をしていた。いわゆる普通の饅頭の屋台だが、かなりの人気を誇っているのだ。

「あのバイトがいなくなってから、また一人で働かなきゃいけなくなった。まあ、あいつがいなくてもどうにかなるだろ!」

 店長が笑いながら仕込みをしようとしたその時、背後から早川が襲い掛かり、彼の背中をドスッと突き刺してしまった。

「が……!」
「言ってくれるな……クソ店長!」

 早川はナイフを引き抜いたと同時に、店長の首筋を切断して殺害。そのまま店長は前のめりに倒れて死んでしまい、早川はその場から走りながら逃げていく。

「邪魔だ!どけ!」
「きゃっ!」
「うわっ!」

 早川はナイフを振り回しながら、邪魔する輩を次々と切り裂いて逃げていく。次々と人が倒れる中、勇人までも早川によって切り裂かれて倒れてしまう。それが原因で彼は亡くなってしまったのだ。

「あとは逃げればこっちの物だ!捕まってたまるか!」

 階段を降りた早川は、その場から急いで駆け出しながら逃げていた。すると彼の目の前にゲートが現れたが、そんな事は気にせず中に入っていく。ゲートはそのまま消えてしまい、あとに残ったのは酷過ぎる惨劇の結末だった……



「その後、俺は殿町という奴と出会い、そこで世話になっていた。で、今に至るという訳だ……」

 早川の話が終わりを告げたが、零夜達は怒りでワナワナと震えていた。店長を殺しただけでなく、邪魔する輩をナイフで次々と殺した事が判明。勇人もそれに巻き込まれて死んでしまったとなると、早川の行為に怒りを感じるしかなかったのだ。

「店長については分かるが、罪の無い人まで殺す必要はあったのか!?そのお陰で勇人さんは亡くなってしまい、美津代さんは深い悲しみを刻み込んでしまったんだ!」

 零夜の怒りの叫びが響き渡り、美津代は目に涙を浮かべながら口を抑えていた。関係ない人まで殺してしまう事は決して許されない事であり、零夜は当然黙っている理由にはいかなかったのだ。
 しかし、早川は平然としながら前を向いていた。縛られている状態であるにも関わらず、余裕の表情をしているのだ。

「そうかよ。だが、俺はここで倒れる理由にはいかねえんだよ!殿町から貰った新たな力で暴れてやる!」

 早川が自力で立ち上がった直後、彼は黒いオーラに包まれて身体を変化し始めた。突然の光景に客はスマホでパシャパシャ撮る中、後ずさる人もいたのだ。

「あいつも刺客であるのなら、倒すしか方法はないだろう。油断は禁物だ!」
「ええ。どんな姿になるのでしょうか……」

 ソニアの合図にジャンヌが応える中、早川の姿に冷や汗を流してしまう。彼が真の姿に変わるのなら、凶悪な姿が想像できるだろう。
 すると煙が収まったと同時に、早川の姿は新たな姿に変わり果てていた。姿はインプとなっているが、身体は人間サイズで背中に羽が生えている。ヒューマンインプと呼ばれる種族だが、甘く見ると痛い目に遭うだろう。

「これが早川の新たな姿……なんか怖いとしか言えないわね……」
「こうなると戦うしかないみたいね。皆、準備はいい?」
「「「了解!」」」

 マリーは早川の新たな姿に冷や汗を流し、コーネリアは戦闘合図を出しながら呼びかける。同時に彼女達は戦闘態勢に入り、早川を倒そうと決意を固めているのだ。

「零夜君、いつもの」
「あっ、はい!」

 倫子は零夜に抱き着いたと同時に、感触を確かめながら落ち着いていく。胸の高まりがドクンドクンと感じていく中、すぐに彼から離れて戦闘態勢に入り始めた。
 倫子がダイナマイツから去ってから、戦闘前にこのルーチンは欠かせなくなっている。零夜だけでなく、日和もその担当をしているのだ。

「零夜君、いつもごめんね。藍原さんの面倒を見てくれて」
「いえいえ。このぐらいお安い御用ですよ」

 日和からの謝罪に零夜が苦笑いする中、美津代は彼に近付いてポンポンと肩を叩いてきた。恐らく先程の行為をしてもらいたいのだろう。

「私もお願い……まだ悲しみが……」
「美津代さんまで……しょうがないな……」

 零夜が美津代を抱き締めた途端、彼女は彼の両手をガッチリと掴んできた。そのまま自身の黒いジーンズの尻ポケットに零夜の両手を入れ、彼をそのまま強く抱き締めた。

「美津代さん!?一体何を!?」
「これが私のやり方なの……けど、本当はキスしようかなと思って……」

 驚く零夜に美津代が頬を染めながら視線を合わせようとしたその時、ミミが間に入って中断させる。これ以上進んだら恋の進展だけでなく、戦闘中になるとやられてしまう可能性もあるからだ。

「これ以上馬鹿な事するな!ほら、戦闘に入る!」
「むう!いい所だったのに……」

 ミミのツッコミに美津代が頬を膨らませた後、彼女は如意棒を構えながら戦闘態勢に入る。自身の大切な人を殺したのであるならば、自ら倒さなければ意味ないのだ。

「あなたは絶対に許さない。勇人さんの仇は必ず取る!そして、零夜君とさっきの続きを行う為にも!」
「「「最後の言葉は余計だから!」」」

 美津代の真剣な表情での宣言に、ミミ達が一斉にツッコんでしまう。仇を取るのは良い事だが、先程の続きを行う事に関してはどうかと言えるだろう。
 そのまま早川との戦いは、第二ラウンドに突入しようとしているのだった。
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