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第六章 山口観光騒動記
第百九十三話 因縁の男
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「失敗ばかりだな……使えない奴等だ……」
とある場所では神室が苛つきながら拳を震わせていて、殿町がガタガタと震えながら冷や汗を流していた。自身が放った刺客が三人共倒されてしまい、残るは四人となってしまった。零夜達を甘く見ていたのが原因となるが、この後の四人はそう簡単にはいかないだろう。
「奴等を甘く見ていた私にも原因があります。次は防府天満宮へと向かわれますが、そこには因縁がある者を用意しています」
「因縁がある者?」
殿町は気を切り替えながら冷静に説明し、それに神室は疑問に思いながら首を傾げる。零夜達の中に因縁がある者がいるとなれば頼もしいが、誰も因縁があるのかは不明である。後は実力があれば問題ない。
「ええ。確か寮母さんです。あの人、昨年旦那さんを亡くしていたみたいですが……その旦那さんを殺した人を用意していますので……」
殿町はニヤリと笑いながら、詳しく説明する。それを聞いた神室は納得しながら頷いた直後、辺り一面に強い風が吹き始めたのだった。
※
それを知らない零夜達は、徳山から防府まで電車で向かっていた。次の目的地は防府天満宮なので、ここで一日目を終える予定だ。
「今日は防府天満宮にお参りしたら終了ね」
「ええ。御朱印を買うのを忘れずにします。とても楽しみですので!」
アミリスは冷静に予定を確認していて、ジェニーは御朱印を買う事を忘れずに心掛ける。旅行期間は三泊四日だが、一日目で三つのエリアを制覇していた。このまま行けば余裕で問題なくクリアできるだろう。
「そろそろ防府に着くみたいだな。すぐに降りる準備をするぞ!」
「「「はーい!」」」
ソニアの合図に全員が頷き、彼女達はそのまま次の駅である防府に降り始めた。すると美津代が零夜の服を引っ張り、悲しそうな表情をしていた。それを見ていた零夜は彼女の気持ちを察し、そのまま肩を抱き寄せ始める。
「美津代さん、行きましょうか」
「ええ」
零夜は美津代と共に電車から降り始め、ミミ達と共に防府駅の出口に向かい出す。二人の様子に彼女、エヴァ、ルリカは頬を膨らますが、アミリスは美津代の様子がおかしい事に疑問を抱いていた。
※
零夜達は防府駅からバスに乗り換え、そのまま防府天満宮へ。しかし美津代は浮かない顔をしていて、零夜から離れようとしなかった。
「どうしたのですか、美津代さん。何かおかしいですが……」
「う、うん……実は……」
ルリカが心配そうな表情で美津代に質問してきて、彼女は俯きながら事の結末を説明し始める。その話を聞いたルリカ達は、驚きを隠せなかった。
※
「旦那さんが通り魔の男にナイフで刺されてしまい、殺されていたなんて……」
「しかも、ここで殺されていたなんて驚いたわ……」
防府天満宮に辿り着いたエヴァ達は、美津代の旦那が亡くなった場所である階段前に来ていた。そこには多くの花束が置かれていて、通り魔事件追悼の碑も建てられていた。
美津代の旦那である国平勇人は、昨年の六月に彼女と結婚。今年の三月に防府に出張で来ていたが、天満宮にお参りに行く時に通り魔によって刺されてしまった。彼の死に美津代は深い悲しみで大泣きしてしまい、今でもその時の心の傷が残っているのだ。
「ええ……私はあの人が亡くなってから、辛い思いをしていた。けど、零夜君と出会ってから、その悲しみは少しづつ消えていったわ。でも、ここに来ると……また悲しみが……」
美津代は我慢できずに泣いてしまい、ミミはよしよしと彼女の頭を撫で始める。するとジェニーが美津代に近付き、彼女をムギュッと抱きしめ始めた。
「確かに旦那さんを亡くしたのは辛いと言えますし、私も村の皆と離れ離れになってしまいました。でも、ヒカリさんや零夜さん、美津代さんなどの仲間がいるからこそ、今の私がいます!」
ジェニーは美津代を抱き締めながら、彼女を精一杯励ましている。ジェニーもアルフレッドに囚われて村の皆と離れ離れになっていたが、ヒカリ達との出会いがあるからこそ、過去を乗り越えて今の彼女がいるのだ。
「だから美津代さんも元気出してください。私達が傍にいますから」
「ありがとう、ジェニーちゃん……」
美津代はジェニーに抱き着きながら、嬉し涙を流す。確かに勇人を失った事は辛いが、今は零夜や皆がいる。そう思えると寂しさも無くなり、自身が恵まれている事を実感していくのだ。
「じゃあ、美津代さんが落ち着き次第、お参りに行きましょう。その分私達も彼女を支えておかないとね」
ヒカリの提案に全員が頷き、美津代とジェニーの周りを囲み始める。そのまま美津代を慰めながら、彼女の頭や背中を撫でていた。
(美津代さん、良かったな……こんなにも仲間に恵まれて……)
この様子に零夜が微笑む中、美津代は零夜に視線を合わせてきた。そのままジェニーから離れて彼に近付き、彼の手を取り始める。
「美津代さん?」
「お願いがあるけど、良いかな?」
「「「?」」」
美津代からのお願いに零夜だけでなく、皆も首を傾げていた。しかしこの様子を陰から見ていたある人は、嫉妬の表情をしながら舌打ちをしていたのだ。
※
「で、なんで俺の背中に擦りつきながら歩くのですか?」
その後、零夜達は階段を登り終えたが、美津代は零夜の背中にしっかりと抱き着いていた。周囲から見ればカップルの行為だと思われていて、恥ずかしさで顔が赤くなるのも無理はない。
おまけに身体を密着されたら、ますます顔が赤くなってしまう。
「ごめんね……こうでもしないと落ち着かないの……なら、前に移動する?」
「それでも構いませんが……」
零夜はチラリと横を見ると、ミミ、エヴァ、ルリカの三人が嫉妬のオーラを出していた。あの行為を見れば嫉妬するのは当然の如く、怒りも発生してしまうのも無理はないだろう。
「美津代さんばかりズルい!私だってやりたいのに!」
「私も零夜に抱き着きたい!」
「私もです!変わってください!」
「おい、落ち着け!」
ミミ達は我慢できずに零夜と美津代の元に駆け寄り、一気に争奪戦となってしまった。これに倫子達は苦笑いするのも無理なかったその時、アミリスが敵の気配を素早く感じ取った。
「敵が来るわ!構えて!」
アミリスの合図で全員が戦闘態勢に入ったその時、上空から一人の男が姿を現した。その男は黒いパーカーと黒いズボンの全身姿で、手にはナイフを構えていた。
「死ねェェェェェ!」
「させません!」
「うわっ!」
男はナイフを構えながら零夜達に襲い掛かるが、ルリカが盾を構えてカウンターバリアを発動。それに男は弾き飛ばされてしまい、ナイフは手から離れて地面を転がった。
「今よ!乱れひっかき!」
すかさずキララが動き出し、強烈な鉤爪で男の顔を引っ掻いた。今の一撃はとても痛く、男が悶絶するのも無理ない。
「まだまだ!アンタが降参するまで殴り続けるわ!」
更にマーリンが馬乗りになったと同時に、男の顔面に次々とパンチを浴びせる。武器については杏が回収し終えていて、既にカタールにあるオーブに入れられてしまった。
「これでアンタは終わりよ。大人しく降参しなさい!」
「畜生……」
マーリンからの忠告に男は観念してしまい、降参を認める。同時にアミリスが縄を取り出し、男を縛り上げてフードを取る。その顔を見た美津代は驚きを隠せず、冷や汗まで流していた。
「この人……間違いないわ!」
「知っているのですか!?」
「ニュースで見たけど……勇人さんだけでなく、多くの人を殺していた通り魔事件の男よ!」
「「「ええっ!?」」」
美津代からの説明に零夜達は驚きを隠せなかったのも無理なく、男は首を横に向けながら俯くしかなかった。
とある場所では神室が苛つきながら拳を震わせていて、殿町がガタガタと震えながら冷や汗を流していた。自身が放った刺客が三人共倒されてしまい、残るは四人となってしまった。零夜達を甘く見ていたのが原因となるが、この後の四人はそう簡単にはいかないだろう。
「奴等を甘く見ていた私にも原因があります。次は防府天満宮へと向かわれますが、そこには因縁がある者を用意しています」
「因縁がある者?」
殿町は気を切り替えながら冷静に説明し、それに神室は疑問に思いながら首を傾げる。零夜達の中に因縁がある者がいるとなれば頼もしいが、誰も因縁があるのかは不明である。後は実力があれば問題ない。
「ええ。確か寮母さんです。あの人、昨年旦那さんを亡くしていたみたいですが……その旦那さんを殺した人を用意していますので……」
殿町はニヤリと笑いながら、詳しく説明する。それを聞いた神室は納得しながら頷いた直後、辺り一面に強い風が吹き始めたのだった。
※
それを知らない零夜達は、徳山から防府まで電車で向かっていた。次の目的地は防府天満宮なので、ここで一日目を終える予定だ。
「今日は防府天満宮にお参りしたら終了ね」
「ええ。御朱印を買うのを忘れずにします。とても楽しみですので!」
アミリスは冷静に予定を確認していて、ジェニーは御朱印を買う事を忘れずに心掛ける。旅行期間は三泊四日だが、一日目で三つのエリアを制覇していた。このまま行けば余裕で問題なくクリアできるだろう。
「そろそろ防府に着くみたいだな。すぐに降りる準備をするぞ!」
「「「はーい!」」」
ソニアの合図に全員が頷き、彼女達はそのまま次の駅である防府に降り始めた。すると美津代が零夜の服を引っ張り、悲しそうな表情をしていた。それを見ていた零夜は彼女の気持ちを察し、そのまま肩を抱き寄せ始める。
「美津代さん、行きましょうか」
「ええ」
零夜は美津代と共に電車から降り始め、ミミ達と共に防府駅の出口に向かい出す。二人の様子に彼女、エヴァ、ルリカは頬を膨らますが、アミリスは美津代の様子がおかしい事に疑問を抱いていた。
※
零夜達は防府駅からバスに乗り換え、そのまま防府天満宮へ。しかし美津代は浮かない顔をしていて、零夜から離れようとしなかった。
「どうしたのですか、美津代さん。何かおかしいですが……」
「う、うん……実は……」
ルリカが心配そうな表情で美津代に質問してきて、彼女は俯きながら事の結末を説明し始める。その話を聞いたルリカ達は、驚きを隠せなかった。
※
「旦那さんが通り魔の男にナイフで刺されてしまい、殺されていたなんて……」
「しかも、ここで殺されていたなんて驚いたわ……」
防府天満宮に辿り着いたエヴァ達は、美津代の旦那が亡くなった場所である階段前に来ていた。そこには多くの花束が置かれていて、通り魔事件追悼の碑も建てられていた。
美津代の旦那である国平勇人は、昨年の六月に彼女と結婚。今年の三月に防府に出張で来ていたが、天満宮にお参りに行く時に通り魔によって刺されてしまった。彼の死に美津代は深い悲しみで大泣きしてしまい、今でもその時の心の傷が残っているのだ。
「ええ……私はあの人が亡くなってから、辛い思いをしていた。けど、零夜君と出会ってから、その悲しみは少しづつ消えていったわ。でも、ここに来ると……また悲しみが……」
美津代は我慢できずに泣いてしまい、ミミはよしよしと彼女の頭を撫で始める。するとジェニーが美津代に近付き、彼女をムギュッと抱きしめ始めた。
「確かに旦那さんを亡くしたのは辛いと言えますし、私も村の皆と離れ離れになってしまいました。でも、ヒカリさんや零夜さん、美津代さんなどの仲間がいるからこそ、今の私がいます!」
ジェニーは美津代を抱き締めながら、彼女を精一杯励ましている。ジェニーもアルフレッドに囚われて村の皆と離れ離れになっていたが、ヒカリ達との出会いがあるからこそ、過去を乗り越えて今の彼女がいるのだ。
「だから美津代さんも元気出してください。私達が傍にいますから」
「ありがとう、ジェニーちゃん……」
美津代はジェニーに抱き着きながら、嬉し涙を流す。確かに勇人を失った事は辛いが、今は零夜や皆がいる。そう思えると寂しさも無くなり、自身が恵まれている事を実感していくのだ。
「じゃあ、美津代さんが落ち着き次第、お参りに行きましょう。その分私達も彼女を支えておかないとね」
ヒカリの提案に全員が頷き、美津代とジェニーの周りを囲み始める。そのまま美津代を慰めながら、彼女の頭や背中を撫でていた。
(美津代さん、良かったな……こんなにも仲間に恵まれて……)
この様子に零夜が微笑む中、美津代は零夜に視線を合わせてきた。そのままジェニーから離れて彼に近付き、彼の手を取り始める。
「美津代さん?」
「お願いがあるけど、良いかな?」
「「「?」」」
美津代からのお願いに零夜だけでなく、皆も首を傾げていた。しかしこの様子を陰から見ていたある人は、嫉妬の表情をしながら舌打ちをしていたのだ。
※
「で、なんで俺の背中に擦りつきながら歩くのですか?」
その後、零夜達は階段を登り終えたが、美津代は零夜の背中にしっかりと抱き着いていた。周囲から見ればカップルの行為だと思われていて、恥ずかしさで顔が赤くなるのも無理はない。
おまけに身体を密着されたら、ますます顔が赤くなってしまう。
「ごめんね……こうでもしないと落ち着かないの……なら、前に移動する?」
「それでも構いませんが……」
零夜はチラリと横を見ると、ミミ、エヴァ、ルリカの三人が嫉妬のオーラを出していた。あの行為を見れば嫉妬するのは当然の如く、怒りも発生してしまうのも無理はないだろう。
「美津代さんばかりズルい!私だってやりたいのに!」
「私も零夜に抱き着きたい!」
「私もです!変わってください!」
「おい、落ち着け!」
ミミ達は我慢できずに零夜と美津代の元に駆け寄り、一気に争奪戦となってしまった。これに倫子達は苦笑いするのも無理なかったその時、アミリスが敵の気配を素早く感じ取った。
「敵が来るわ!構えて!」
アミリスの合図で全員が戦闘態勢に入ったその時、上空から一人の男が姿を現した。その男は黒いパーカーと黒いズボンの全身姿で、手にはナイフを構えていた。
「死ねェェェェェ!」
「させません!」
「うわっ!」
男はナイフを構えながら零夜達に襲い掛かるが、ルリカが盾を構えてカウンターバリアを発動。それに男は弾き飛ばされてしまい、ナイフは手から離れて地面を転がった。
「今よ!乱れひっかき!」
すかさずキララが動き出し、強烈な鉤爪で男の顔を引っ掻いた。今の一撃はとても痛く、男が悶絶するのも無理ない。
「まだまだ!アンタが降参するまで殴り続けるわ!」
更にマーリンが馬乗りになったと同時に、男の顔面に次々とパンチを浴びせる。武器については杏が回収し終えていて、既にカタールにあるオーブに入れられてしまった。
「これでアンタは終わりよ。大人しく降参しなさい!」
「畜生……」
マーリンからの忠告に男は観念してしまい、降参を認める。同時にアミリスが縄を取り出し、男を縛り上げてフードを取る。その顔を見た美津代は驚きを隠せず、冷や汗まで流していた。
「この人……間違いないわ!」
「知っているのですか!?」
「ニュースで見たけど……勇人さんだけでなく、多くの人を殺していた通り魔事件の男よ!」
「「「ええっ!?」」」
美津代からの説明に零夜達は驚きを隠せなかったのも無理なく、男は首を横に向けながら俯くしかなかった。
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