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第六章 山口観光騒動記

第百九十二話 ヒカリの才能開花

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 ヒカリ達とすみれの戦いが始まりを告げられ、零夜はサポートに入る事になった。まず先手を取ったのはすみれ。ライオンに鞭を向けたと同時に、指示を開始する。

「ライオン、奴等に噛みつきなさい!」
「ガオオオオ!」

 ライオンはそのまま倫子達に襲い掛かるが、彼女はウィザードガントレットから熱湯の球を生成し始める。温度は普通のお茶の温度と同じとなっているが、人間ぐらいだとある程度は普通に飲めるのだ。

「それっ!」

 倫子は熱湯の球をライオンに向けて投げ飛ばし、彼の口の中にそのまま入れ込んだ。すると熱湯が舌に当たってしまい、球は破裂して口の中に充満してしまった。

「グアアアアアア!」

 ライオンは当然熱湯によって舌を火傷してしまい、その苦しさのあまり転げ回ってしまった。これはかなりきついだろう。

「作戦成功!ライオンは猫科目なので、猫と同じく熱いお湯に弱い。よってお湯を飲む事ができない猫舌だからね!」

 倫子はウィンクしながらガッツポーズを取った直後、日和が動き出したと同時に、跳躍しながらの蹴りを決める態勢に入っていく。

「これはおまけ!フライングスマッシュキック!」
「がっ!」

 日和の空中回し蹴りがすみれの側頭部に激突し、彼女はスリランカゾウから落下してしまった。当然背中に地面を強打してしまい、激痛が全身に走るのも無理なかった。

「お、おのれ……よくもやってくれたわね!メガラダピスよ、やれ!」
「グアアアアアア!」

 すみれの合図でメガラダピスが動き出し、ミミ達に突進しながら襲い掛かってくる。
 メガラダピスはかつてマダガスカルに棲息していた大型の原猿。巨大なキツネザルで体重は八十超えから百四十ぐらいだ。

「メガラダピスを放ってきたみたいね。けど、そうはさせない!」
「な!?」 

 ところがエヴァがメガラダピスの猛攻を両手で止めてしまい、そのまま掴んで投げ飛ばしてしまった。怪力のエヴァを甘く見ていたのが盲点であり、メガラダピスはすみれに向けて飛んできたのだ。

「こっちに来ないで!ぐはっ!」
「ナイスヒット!」

 メガラダピスはすみれに直撃して弾き飛ばしてしまい、エヴァは指を鳴らしながら喜んでいた。メガラダピスの重さですみれは勢いよく飛ばされるのも無理なく、地面を引きずりながら倒れたのだ。

「どうやら私達を甘く見ていたみたいね。こんなので倒せるのかしら?」
「ぬぐぐ……」

 美津代の余裕の挑発にすみれの怒りは大きくなっていく。やられた挙げ句馬鹿にされると、黙っていられなくなるのも無理はない。

「こうなったら黙ってられないわ!スリランカゾウ、やりなさい!」
「バオオオオオ!」

 すみれの合図でスリランカゾウが動き出し、そのまま前進しながらヒカリ達に向かってくる。しかし、またしてもエヴァが前に出てゾウを持ち上げようとする。

「そーれ!」
「「「おおーっ!」」」

 なんとエヴァはゾウを簡単に両手で持ち上げてしまい、お客から驚きの声が響き渡る。これにはすみれも呆然としてしまうのも無理はないだろう。

「まさかゾウまで持ち上げしてしまうなんて……こうなったら最後の手段!オオナマケモノ、やっちゃいなさい!」
「「「オオナマケモノ!?」」」

 すみれの合図でオオナマケモノが動き出し、それにミミ達は驚きを隠せずにいた。オオナマケモノは絶滅動物なのに、まさか復活しているなんて信じられないだろう。しかし、目の前にいるのは間違いなく本物である。

「オオナマケモノは流石にまずいわね……」
「まさか復活していたとは想定外と言えるし、どう対策すれば……」
「私の怪力なら大丈夫だけど?」
「いや、他の方法があるか考えるから」

 日和達がオオナマケモノに対して危機感を覚える中、エヴァは余裕の笑みで力こぶを見せる。確かにエヴァの怪力ならオオナマケモノも対処できるが、彼女に頼らなくても他の方法がある筈だ。
 するとヒカリがいきなり前に出て、息を大きく吸い込み始める。

「ヒカリさん!?何を考えているのですか!?」
「まさか自殺行為!?馬鹿な事は止めてください!」
「まさかいきなり出てくるなんて好都合ね。なら、思いっきり踏み潰しなさい!」

 予想外の展開にジェニー達が驚く中、すみれはチャンスとばかりにヒカリを潰す事を命じる。オオナマケモノが動き出したと同時に、ヒカリは目を見開いて大声で叫び始める。

「皆、いい加減に目を覚まして!!」
「「「!?」」」

 ヒカリの大声が辺り一面に響き渡り、彼女の目は涙目となっていた。すると地面から光が次々と飛び出し始め、オオナマケモノ達の催眠を解除していく。まさに奇跡と呼べる展開となるが、これに皆が驚くのも無理なかった。

「催眠が……消えていく……」
「今の技は一体……」

 ジェニー達がこの光景にポカンとしながら固まる中、零夜は今の技が何なのかを判明。そのまま全員に視線を移しながら説明する。

「あれはシャインリカバリー!地面から光が次々と飛び出し、すべての状態異常を広範囲で治してくれる。催眠効果も即効で治してしまう奇跡の技だが、それが使えるのはごく僅かだ」
「じゃあ、ヒカリさんは新技を披露したのですね!まさか奇跡を起こすなんて……凄いです……!」

 零夜からの技の説明に、ジェニーは今の光景を見ながら納得の表情をする。ヒカリが自殺行為をするかとハラハラしたが、まさかの展開で奇跡を起こしてくれた。その姿に彼女が憧れるのも無理はなく、追い付ける為に今後も努力するだろう。

「そ、そんな事って……絶対に……あり得ない……」
 
 一方、すみれは予想外の展開に驚きを隠せず、あっとという間にピンチになってしまった。顔には大量の冷や汗が流れていて、周りには催眠を解かれた動物達が彼女を睨み付けているのだ。

「ひえええええ!」

 すみれは必死にその場から逃げようとするが、動物達が怒りで追いかけてくる。すると彼女の前方にヒカリが姿を現し、最大の一撃を与える構えに入り始めた。

「あなたはこれで終わり!ダイナマイトアッパー!」
「がはっ!この私が……ここで……」

 強烈な威力のアッパーがすみれの顎に炸裂し、殴り飛ばされた彼女の身体から煙が飛び出した。煙が風によって吹き飛ばされると、そこにいたのは黒いボンテージと鞭だけ。これがすみれの正体なのだ。

「まさかすみれの正体がこのボンテージと鞭だなんて……残酷な運命を歩んでいたかもね……」

 ヒカリは悲しそうな表情をしながら、ボンテージと鞭に視線を移していた。敵同士と言えども、姿を変えられて戦う事を命じられていた事には同情せざるを得なかっただろう。
 すると、拍手喝采が鳴り響いている方を見ると、お客さん達がヒカリに対して拍手をしていた。彼女の活躍で動物達の催眠が解けていて、刺客まで倒した事は見事としか言えなかったのだろう。

「皆、ありがとう!」

 ヒカリが笑顔で応えた直後、スタンプカードが目の前に姿を現した。そのまま自動的にスタンプが映され、周南エリアも見事クリアしたのだ。

「周南もクリアしたけど、もしかすると動物達の洗脳を解いたのが切欠じゃなかったのかな?」
「そうかもね。もしかすると私……ビーストテイマーになれたのかな?」

 アミリスの推測にヒカリも同意する中、自身はビーストテイマーになれたのか疑問に感じていた。今の技で動物達の目を覚ましたとは言えども、操る事が出来たりするのはまだ取得していないのが現状だ。

「いや、まだまだこれからだ。ヒカリがビーストテイマーになるには、更に勉強しておかないとな!」
「勉強……勘弁してよ~……」
「「「ハハハハハ!」」」

 零夜からのアドバイスにヒカリはヘナヘナと座り込み、ミミ達はその様子に笑い合っていた。
 こうして周南も無事にクリアし、残るエリアはあと三つとなった。因みに動物達は檻の中に戻って行き、絶滅動物達はヒーローアイランドに転送されたのだった。
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