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第六章 山口観光騒動記

第百八十八話 岩国城とシロヘビ

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 ソフトクリームを堪能した零夜達は、そのまま岩国城へと向かい出す。そこへはロープウェイで行く事になり、零夜達もそれに乗って移動していた。

「定員は三十名までだから、俺達は十七名いる。問題なく登れるな」
「ええ。早く岩国城に着かないかな……」

 アミリスが窓の外を眺めながら、岩国城に着く事を楽しみにしていた。すると、ロープウェイがまもなく岩国城に辿り着こうとしていて、それを告げる音声も鳴り始める。

「さっ、そろそろ降りる準備をしましょう!」
「おう!」

 零夜達はすぐにロープウェイから降りる準備を始め、この先にある岩国城へと視線を移す。エヴァ達は日本の城を観光するのは初めてなので、ソワソワしているのも無理はない。ロープウェイはそのまま岩国城へと辿り着こうとしていた。



「これが岩国城……」
「凄い……」
「日本の城って、私達の世界とはちがうんだ……」
 
 ロープウェイから降りた零夜達は、岩国城の天守閣に視線を移す。その高さにエヴァ達は見惚れる様に見ていて、穏やかな風が彼女達の髪を揺らしていた。

「確か掲示板が……あったわ!」

 アミリスはキョロキョロ辺りを見回すと、岩国城に関する掲示板があるのを見つける。彼女達は掲示板の前に移動し、その内容を確認し始める。

「この城は初代岩国藩主である吉川広家きっかわひろいえによって作られたわ」
「吉川広家か……確か彼は関ヶ原の戦いで、徳川と内通したという事で知られているな」

 掲示板の内容を見る中で、零夜は吉川広家について関ヶ原の戦いでの出来事を話し始める。
 吉川広家は関ヶ原の戦いで西軍に所属していた。しかし、毛利家の存続の為に徳川と内通をしていたのだ。其の為、戦いでは西軍の狼煙にも応じず、動かずに弁当を食べていたのだ。それによって存続できたが、領地は減らされてしまったのだった。

「空の弁当箱と言われていた説もあるわね。まあ、それによって存続はできたけど、西軍についた事で領地を減らされてしまった。皮肉過ぎるとしか言えないわね……」

 アミリスは真剣な表情をしながら零夜の話に納得していたが、他の皆はうんざりしながら聞いていた。二人の話についていけず、置いてけぼりになってしまったのは言うまでも無い。

「話はそこまでにして、さっさと中に入りましょう!」
「「「賛成!」」」
「おい、待ってくれよ!」
「ちょっと!置いてかないで!」

 マリーの合図で彼女達は城の中に向かってしまい、零夜とアミリスは慌てながら後を追いかける。まあ、彼女達を置いてけぼりにした事で、自業自得と言えるだろう。



 桃山南蛮造りの天守閣内に入った零夜達は、展示されている錦帯橋の精密模型、写真、武具や甲冑などを見ていた。特に零夜は熱心に武具を見ていて、次の戦闘の際に使えるんじゃないかと確認している。

「見事な武器だ……今後の戦いにおいては必要な事かも知れないな……」

 零夜は展示されている武具を見ながら、冷静に分析しながら確認していた。それにミミ達は苦笑いするのも無理なく、そこまでする事かと呆れているだろう。

「零夜君。アークスレイヤーとの戦いの気持ちは分かるけど、今は観光だから落ち着いて」
「おっと!すみません……熱中し過ぎて……」

 倫子からの指摘に零夜は慌ててしまい、すぐに頭を下げながら謝罪する。それに倫子は微笑んでいて、彼の頭をよしよしと撫でる。

「気持ちは分かるし、武器も今後の為に必要となるからね。それよりも天守閣の屋上に向かいましょう!」

 倫子の合図に全員が頷き、そのまま屋上へと進み始める。屋上までの時間は僅か数分となっていて、問題なく辿り着く事が出来た。そこは展望台となっていて、岩国市街の眺望を楽しむことができるのだ。

「見て!あそこに岩国錦帯橋空港がある!」
「どれどれ?」

 コーネリアが指差す方を見ると、なんと目の前に岩国空港錦帯橋の姿が見えて、飛行機が飛び立っていたのだ。遠くからだととても小さいが、その迫力は凄いと言えるだろう。
 天守閣からは岩国錦帯橋空港だけでなく、吉香公園、城下町、錦帯橋から岩国市内一面、岩国航空基地、瀬戸内海の島々や四国、宮島までが一望できるのだ。

「凄い景色……」
「トラマツやノースマンも連れていけば良かったかもね……羨ましがるのも無理ないし」

 ルリカ達が景色に見惚れている中、キララはトラマツとノースマンの事を思い出していた。城の中はペット禁止なので、彼等はそれに該当する。まあ、動物だから仕方がないだろう……

「じゃあ、次の場所に行きましょう。シロヘビの館があるから」

 美津代の合図と同時に、彼女達は次の場所であるシロヘビの館に移動し始める。岩国の名所旅行も終盤に入ろうとしていたのだ。



 零夜達はシロヘビの館に入り、シロヘビ達がいる生体展示に来ていた。全身は白く光沢があり、目だけは赤いルビーのようだ。

「シロヘビは昔から山口県岩国市に集中して生息し、「神様の使い」として崇められてきたわ。開運・金運のご利益があるとされ、大切に保護されているからね」

 ミミの説明を聞いたソニアと杏はピクリと反応し、シロヘビに視線を移す。まさかこのヘビが開運・金運のご利益を起こすとは驚くのも無理はない。

「なるほどな……まさかこのヘビがご利益をもたらすとは……」
「国の天然記念物と指定されているし、皆から大切にされているからな。この場所に来て正解だったかもな!」

 ソニアはシロヘビを見ながら真剣な表情をしていて、杏は笑顔でエヴァ達に呼びかける。それに皆も頷いたその時、スタンプカードが零夜のバッグから飛び出してきた。

「あっ、スタンプカード!」

 全員がスタンプカードに視線を移した途端、岩国と柳井エリアの場所にスタンプが自動的に押された。これで岩国と柳井エリアはクリアしたのだ。

「良かった!無事にクリアしたみたいね!」
「よし!この調子で次のエリアもクリアするぞ!」
「「「おう!」」」

 零夜の合図と同時に、エヴァ達は拳を上げながら応える。今後も刺客が来るかも知れないが、自分達なら大丈夫だと心から思っているのだった。



 一方、とある場所では神室がデビルキラーズのリーダーと話をしていた。
 彼の名前は殿町亮太とのまちりょうた。落ちこぼれのフリーターだったが、異世界に転移して神室と出会う。そこで様々な物や人を強化させる能力を手に入れ、仕事人軍団「デビルキラーズ」を結成したのだ。

「第一の刺客は失敗したな。次は誰を出すんだ?」
「奴等は下松に行きます。そこは水の動きを得意とする川松に任せていますので、奴なら問題ないと言えるでしょう」

 殿町は次の刺客である川松がいる事を説明し、零夜達は奴に倒される事を説明する。川松は水の中の動きが得意となると、零夜達は苦戦を強いられるだろう。

「しかも、奴等は健康パークに行くとなると、倒されるのも時間の問題だな。期待しているぞ」
「はっ!」

 神室からの期待に殿町は一礼しながら答え、すぐに川松に連絡する。だが、この時の彼は知らなかった。自らの自信によって、その計画が崩れようとしている事を……
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