ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第五章 ハルバータの姫君

第百七十七話 覚醒のアメリア

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「これが俺の過去だ」

 紅蓮丸は自らの過去を語り終え、その話に零夜達は驚きを隠せずにいた。まさか事故によって転生し、憎しみと怒りによって今の姿になったのは想定外だっただろう。

「自身の夢を打ち砕かれて、その恨みを晴らす為に四人を殺した……実際には九年掛かったみたいだな」

 零夜は冷静な表情で紅蓮丸の過去を振り返り、夢を打ち砕いた四人を殺した期間を計算する。選ばれし戦士とアークスレイヤーとの戦いが始まったのは数ヶ月前で、紅蓮丸が転生したのは九年前の頃。考えてみれば計算は合っていると言えるだろう。

「そうだ。一人は見つけたが、他の三人は別の次元に避難していた。次元を行ける転移魔術の取得には、長い年数が必要だった。様々な経験をしてからようやく次元を行き来できる様になり、奴等を一人残らず殺したからな……」

 紅蓮丸は零夜の質問に正確に解答し、転移魔術を覚える為に時間が掛かった事を告げた。
 次元から次元に行く転移魔術を覚えられるのはごく僅か。取得するには最低でも十年は掛かると言われている。紅蓮丸は復讐と怨念の力もあってからか、九年でようやく次元を行き来できる様になったのだ。

「それからアークスレイヤーとの戦いが発生している事を知り、奴等だけでなく、選ばれし戦士達まで殺していた……アークスレイヤーを倒すのは良いが、選ばれし戦士まで殺すのはやり過ぎだ!」

 零夜は紅蓮丸の行為を一部同意するが、選ばれし戦士達への殺害はやり過ぎだと批判。敵味方の区別をつける事なく、次々と悪意のある者を殺害する行為は極悪人その者。正義の域を超え、全世界からの敵と見なされているのも無理はない。

「テメェ等……俺のやり方が気に食わないってのか……だったら全員殺してやるよ!」

 紅蓮丸は怒りのオーラを全身から放ち始め、そのまま零夜達に襲い掛かってくる。彼の怒りは想像を遥かに超えているだけでなく、憎しみまでも含まれている。そるによって怒りも限界を超えているのだ。

「憎しみがここまで響き渡ったとなると、倒すしか方法はありません!各自警戒しながら倒しに向かいましょう!」
「「「了解!」」」

 アメリアの合図と同時に零夜達が一斉攻撃を仕掛けようとするが、紅蓮丸は跳躍したと同時に魔術を唱え始める。すると地面から次々と赤い球が飛び出し、そのまま零夜達に狙いを定めて発射してきた。

「ブラッドサーチボム!」

 紅蓮丸の合図と同時に、ブラッドサーチボムは次々と爆発を起こして零夜達に爆風のダメージを与えまくる。すると、その内の一つがシオンに直撃してしまい、彼女に爆発の大ダメージを与えたのだ。

「うわっ!」
「シオン!」

 爆発を喰らったシオンは仰向けに倒れてしまい、シナモン、ジャミラ、ゲルダも爆風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまう。

「「「キャアアアアアアア!!」」」
「シナモン!ジャミラ!ゲルダ!」

 シオンに続いてシナモン達も倒れてしまい、残るはあと三人となってしまった。今の攻撃で一気に不利になったとなると、ピンチになる事には変わりないだろう。

「こうなったら立ち向かうしかないが、まずはあの爆弾をどうにかしないとな!」

 零夜は次々と苦無を構え、そのままブラッドサーチボムに当てて破壊しまくる。破壊する事に爆発してしまうが、その威力と大きさを最小限に留める事ができたのだ。

「そのまま真空波動斬しんくうはどうざん!」

 村雨の刀身から波動の斬撃が発動し、紅蓮丸へと襲い掛かっていく。しかし、彼は跳躍しながら回避したと同時に、零夜に接近して斬撃を繰り出そうとしているのだ。

「馬鹿め!煉獄斬撃れんごくざんげき!」
「ガハ……!!」
「「零夜(様、さん)!」」

 零夜は紅蓮丸の炎の斬撃をまともに喰らってしまい、大ダメージを受けて倒れてしまう。傷はとても深く、立ち上がるにも時間は掛かってしまうのは確定だ。

「どうやらお前もここまでだな。最期は楽にしてくれる!」

 紅蓮丸は百鬼夜行を構えながら、零夜にとどめを刺しに向かう。しかし、彼の前にアメリアとルリカが立ちはだかった。これ以上倒れる者達を黙ってみていられないのは勿論、紅蓮丸を倒そうとする覚悟で挑もうとしているのだ。

「邪魔をする気か!」
「当たり前です!今度は私達が相手です!」
「零夜様を傷つけた罪、絶対許しません!」

 アメリアとルリカは紅蓮丸にそのまま襲い掛かるが、彼は百鬼夜行を強く構えながら次々と攻撃を弾き返していく。更に強烈な蹴りを二人の腹に当てまくり、強烈な斬撃を浴びせたのだ。

「「あうっ……!」」

 アメリアとルリカも片膝をついてしまい、万全に戦えるのは誰もいなくなった。紅蓮丸はチャンスとばかりに、零夜にとどめを刺そうとし始める。

「これで全て終わらせてやる!覚悟!」

 紅蓮丸は跳躍しながら急降下し始めた、百鬼夜行を下に向けながら零夜の心臓を突き刺そうとしたのだ。彼が動けなくなっている以上、もう回避する事さえできない。まさに絶体絶命だ。

「駄目ーーーー!!」

 アメリアが涙ながらに叫んだその時、彼女の身体が発光し始め、その光は広範囲に広がってしまった。

「うわっ!」

 紅蓮丸は強烈な光を喰らってしまい、バランスを崩して地面に激突してしまう。更には能力も弱体化してしまい、鉄仮面も破壊されてしまったのだ。

「馬鹿な!俺の鉄仮面が……」

 素顔の状態となった紅蓮丸は驚きを隠せずにいた直後、零夜達の傷が高速で回復し始めていく。倒れていた彼等は次々と立ち上がり、万全の状態となってしまったのだ。

「い、今のスキルは一体……」
「傷も回復したし、万全に戦える……アメリア姫、今の技は……?」
「さあ……」

 零夜達が予想外の展開に戸惑う中、ルリカは未だに発光しているアメリアに質問する。しかし彼女もキョトンとしていて、分からないみたいだ。

「今のスキルはプリンセスミラクル!アメリア様の固有スキルですぞ!」
「レジーさん!?」

 なんとレジーがいつの間にか姿を現した事で、零夜達はビックリしながら驚いてしまった。彼等はネオマギアスを討伐していた筈だが、その様子だと終わっていたのか気になるところだ。

「こちらは既に終わりましたぞ!倫子さんがエアロというドラゴンを召喚し、止めを刺しましたからな」
「「「?」」」

 レジーが指差す方を見ると、そこにはネオマギアスの姿はなく、ミミ達が敵を倒した事を喜び合っていた。特に倫子は小さなドラゴンであるエアロを抱きながら、満面の笑みを浮かべていたのだ。

「そうだったのですね。それで、今のスキルは……」

 ルリカは苦笑いしながらも納得の表情をしていて、気になる事をレジーに質問する。ネオマギアスの事で突然脱線していた為、今の現象について改めて質問したのだ。

「プリンセスミラクルは自身から強烈な光を発光させ、敵を弱体化する事が可能。更に自身や味方は高速回復するだけでなく、最大限まで強化できる。アメリア様にしかできない固有スキルでありますぞ!」
「じゃあ……アメリア姫も選ばれし戦士の一人となっているのか!」

 レジーの説明に零夜とルリカは納得する中、アメリアは自らの胸に手を当てていた。自らの固有スキルが判明された以上、選ばれし戦士として最後まで戦う決意を固めているのだ。

(私にも固有スキルを発動する事が出来た……なら、選ばれし戦士として恥じない為にも、必ず紅蓮丸を倒すのみ!)

 アメリアは心の中で決意したと同時に、真剣な表情で紅蓮丸を睨みつける。彼は弱体化しているが、戦う意志はまだあるのだ。

「よくもやってくれたな……こうなったらお前を倒してやる!」
「あなたの野望は……私が止める!」

 紅蓮丸とアメリアは同時に飛び出し、戦いは最終局面に入り始めたのだった。
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