ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第五章 ハルバータの姫君

第百六十四話 夢幻の如く

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 それはハインが十五歳の頃、彼はボリスと共に、城の外で城下町の様子を眺めていた。そこでは人々が賑わっていて、平和そうな雰囲気を漂わせていたのだ。

「これが……現在の城下町の姿ですか?」

 ハインは気になる表情でボリスに質問し、彼は冷静にコクリと頷く。彼は国民が豊かになる生活を志していて、それが今に繋がるのだ。

「そうだ。わしはこの国を豊かにしたい。住民達が無事に暮らせる為にも、色々な策を用いながら精一杯頑張るのみ。それがわしの夢であり、目標だからだ」

 ボリスの話を聞いたハインは納得の表情をしつつも、ある事が気になっていた。それは軍事力の事で、当時の戦力は僅か二万。下手したら攻め落とされる可能性もあるのだ。

「確かに納得できます。しかし、戦力が低いとなると攻め落とされてしまう事もあり得ます!こうなると戦力補強が必須となるので、私としては戦力補強を第一に考えなければ……」

 ハインが危機感を感じながら言い切ろうとするが、ボリスは冷静に首を横に振る。確かに戦力補強するのは良い事かも知れないが、国民を危険な目に合わせる理由にはいかないのだ。

「気持ちは分かる。だが、今は他の国も攻めて来ない。今だからこそ、平和な時にしかできない事を全うするべきだ。勿論戦力を補強するが、平和が第一。それを忘れていては、王にはならないぞ」
「はい……」

 ボリスからの教えにハインは頷くしかなかったが、心の奥底では諦めない思いが強くなった。自身が王になれば、軍事力も強化できるのは勿論、更にはボリスにさえ果たせなかった事もできる。ここから彼の王になる道が始まりを告げられたのだった。



 そして現在、ハインはヴィリアン、ネコブ、李舜臣と共に紅蓮丸に立ち向かっている。彼等はここで倒れる理由にはいかないだけでなく、紅蓮丸を倒さなければ王にはなれないと実感しているのだ。だが、相手はかなりの強敵。どう打ち崩すかが重要になるだろう。

「ネコブは魔術援護を!私はヴィリアンと共に紅蓮丸に立ち向かう!李舜臣はネコブの護衛を頼む!何が何でも奴を倒すぞ!」
「「「了解!」」」

 ハインの指示と同時に、彼等はそれぞれの配置に移動。そのまま紅蓮丸と対峙しながら、彼を倒す為に立ち向かおうとしていた。ここからが正念場である以上、覚悟を決めなければ殺されるからだ。

「敵も覚悟を決めたか。なら、容赦なく殺すのみだ!覚悟しろ!」
「そうはさせるか!ここで死んでたまるかよ!」

 紅蓮丸は百鬼夜行を構えながらヴィリアンに襲い掛かるが、彼は剣を構えながら攻撃を弾き返した。そのまま剣と刀がぶつかり合い、火花散らす激しい接戦へと変化したのだ。
 二人の実力差には差があるが、戦いは互角の展開と言える。一発隙を与えればチャンスが巡る可能性もあり得るので、集中力を高める必要があるだろう。

「そこだ!」
「おっと!危なかった!」 

 紅蓮丸が横一閃の斬撃を繰り出そうとするが、ヴィリアンは身体を後ろに曲げながら見事回避する。彼は身体が柔らかいので、この様な動きはお手の物である。其の為、横一閃の攻撃も簡単に回避できるのだ。

「私がいる事も忘れては困る!ブラッドプレイヤー!」
「ごはっ!」

 すると、ハインがロングソードから血の波動斬撃を繰り出し、紅蓮丸に斬撃のダメージを与えた。その衝撃で紅蓮丸は勢いよく横に飛ばされ、地面に激突して倒れてしまった。

「今の一撃はやったのか?」
「いや、まだだ!奴はここで終わる輩ではない!気を付けろ!」

 李舜臣が勝利を感じ取るが、ハインはそれを否定。紅蓮丸はこの程度で倒れるとは思えず、更に強くなると危機感を募らせる。
 その予感は見事当たり、紅蓮丸はすぐに起き上がって百鬼夜行を再び構える。更に戦闘力も上昇してしまい、手が付けられない状態になっていく。倒せば倒す程ピンチが続き、更に手強くなってしまうのだ。

「よくもやってくれたな……本気で殺してくれる……」
「おのれ!更に強くなるとは……!なんて化物だ……!」

 ハインがワナワナと震え出した直後、紅蓮丸はすかさずヴィリアンに襲い掛かってきた。同時に強烈な斬撃を彼に浴びせ、絶命級の大ダメージを与えてしまった。

「がは……!俺が……ここでやられるなんて……!すまない……!」
「ヴィリアン!」

 ハインがヴィリアンに向けて叫ぶが、彼はそのまま塵となって消滅。残ったのは彼の武器であるソードのみとなり、地面に落ちてしまったのだ。

「ヴィリアンさんまでやられるなんて……嘘だ……こんな事ってあり得ない……」

 ネコブが信じられない表情をしたその時、紅蓮丸がヴィリアンに対して素早く襲い掛かってきた。ネコブはすかさずロッドで防ごうとしたが、百鬼夜行の刃はロッドを真っ二つに切断してしまった。
 その刃はまさに流れる水の様な素早さで、ロッドの切断などお手の物と言えるだろう。しかし、ロッドを切断されたネコブにとっては、大災難としか言えない。

「そんな!ロッドが破壊されるなんて……!」
「油断は禁物だ!ブラッドスラッシュ!」
「ぐはっ!(す、すいません……ハイン様……こんな私を……お許しください……)」

 ネコブが冷や汗を大量に流したその時、紅蓮丸がすかさず彼を横一閃に斬り裂いてしまう。ネコブは口から大量の血を吐いてしまい、そのまま倒れて消滅してしまった。

「残りは二人だ!何が何でも始末してくれる!」
「くそっ!私が相手だ!李氏朝鮮の将軍の名にかけて、貴様を倒す!」
「やれるものならやってみろ!」

 李舜臣は中華刀を構えながら紅蓮丸と対峙し、剣と刀をぶつけ合いながら激しい戦いを繰り広げる。戦いの行方は接戦となっているが、紅蓮丸に絶大なダメージをどう与えるかがカギとなるだろう。

「このまま終わらせる!エンペラーソード!」

 李舜臣は刃から強烈な波動斬を発射し、紅蓮丸に向けて放っていた。しかし、彼は回避したと同時に、口に息を吸い込んで顔を上に向けていた。

「まさかこの様な技を使うとはな……ブラッドミスト!」
「「な!?」」

 紅蓮丸の口から赤い血の霧が発射され、辺り一面が赤い霧となってしまった。しかも血の霧となっている為、あっという間に濃い霧となっているのだ。

「くそっ!まさかこの様な卑怯な戦法を使うとは……奴はとんでもない卑怯者だ!」
「その言葉、同感するな……戦士としての風上にも置けない……!」

 視界を遮られた李舜臣とハインが辺りを見回す中、紅蓮丸は李舜臣の背後に回って襲い掛かろうとしていたのだ。

「これが貴様の最期だ!はっ!」
「がはっ!」

 なんと紅蓮丸は百鬼夜行を駆使し、李舜臣の背中から腹へと刃を貫通させたのだ。しかも、心臓部分を貫いている為、即死となるのは確定だ。

「この私が……こんなところでやられるなんて……ここまでか……」

 李舜臣は頭を項垂れながら死んでしまい、そのまま塵となって消滅した。残ったのはハインだけとなり、仲間を失った彼はガタガタと震えながらも戦おうとしていた。

「まだだ……まだ、私がいる……自身の夢を諦めてたまるか……!」

 ハインは最後まで諦めずに戦おうとするが、紅蓮丸はすぐに終わらせようと百鬼夜行の柄を強く握り締める。同時に刃に闇のオーラと威力が増幅し始め、そのまま止めを刺そうと駆け出し始めた。

「終わりだ!この偽物が!」

 紅蓮丸は素早い横一閃の斬撃を駆使し、そのままハインの首を刈り取ってしまった。首と胴体が別れてしまったハインは、悲鳴を上げる事なく死んでしまったのだ。
 そのまま紅蓮丸が百鬼夜行を鞘に収めた直後、ハインは塵となって消滅。同時にハイン達は全滅という結果になったのだ。

「偽物の末路はこの方が相応しい。哀れとしか言えないな」

 紅蓮丸は死んでしまったハイン達に対し、残酷な笑みを浮かべながらその場から歩き去る。同時にハインはヴァルムント王国の王位継承を巡る戦いに、死亡という形で脱落したのだった……
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