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第五章 ハルバータの姫君
第百五十三話 ヴァルムント王国での騒動
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零夜達はアメリアとレジーの案内でヴァルムント王国に到着。そこは寒冷の国と言われているので、暖かい物が多く売られている。更にはマトリョーシカなどの文化品も多くあるので、北欧文化が強いと言えるだろう。
「ここがヴァルムント王国……まるで北国だな……」
零夜は王国の様子を見ながら辺りを見回していて、倫子達もその様子に驚きを隠せずにいた。この様な国に行くのは初めてで、見た事のない物ばかりである。
現実世界でも海外に行く事は殆どなく、国内での活動がメインとなっている。何時になったら国外に行けるのか気になるところだ。
「ええ。ヴァルムント王国は寒い国の為、魚やお肉を食べる習慣が流行っています。其の為、野菜はビニールハウスで育てていますので」
「そうなんだ……寒冷だからこそ、風習や文化も違うんだね……」
アメリアの説明に倫子が納得していたその時、何処からかざわつきが聞こえ始める。住民達が大型水晶スクリーンの前に立っていて、とある映像を見ていたのだ。
「何かあったのかしら?」
「さあ……」
突然の展開にヒカリ達が疑問に感じる中、映像に全員が視線を移す。それはロイヤルグリズリーズが全滅したとの速報であり、六人が谷底に落ちて死亡という結果になったのだ。だが、シナモンとジャミラは峰打ちで生存していた為、救助隊に運ばれているとの事だ。
「零夜……もしかして……」
「ああ……あれは死亡事故じゃない。紅蓮丸が動き出したんだ!」
ミミは零夜に耳打ちし、彼は声を上げながら推測する。その様子に誰もが気になる表情で零夜達に視線を移し、一気に注目の的となってしまったのだ。この事態に零夜達は驚きを隠せずにいたが、すぐに冷静に対処して住民達に視線を移す。
「なんでそんな事を言えるんだ?」
「今回、谷底に落ちたのは不慮の事故なんかじゃない。死体が映像で映されていたが、首を切断、斬り裂かれて死亡、それに刀での傷がある。普通に考えればマギアスの仕業ではない事は明らかだ」
零夜の説明に人々は再びざわついてしまい、中にはガタガタと震える者もいた。あのロイヤルグリズリーズが別の誰かにやられたとなると、とんでもない展開になると考えた方が良いだろう。
「マジなのか……じゃあ、このまま放っておけば……」
「明らかに俺達おしまいとなりそうだ……」
「私、まだ死にたくない!」
人々は混乱しながらパニック状態となってしまい、中には発狂する者もいた。仕舞にはブレイクダンス、壁に頭を打ち付けたり、木に登って鼻で啄木鳥の様に木をつついたり、逆立ちしながら逆走するバカも続出してしまった。
これには零夜達も唖然としてしまい、ただ呆れるしかなかった。
「ヴァルムントって……混乱するとこんな人が続出するのか?」
「普通はしません。ですが、マギアスだけでなく紅蓮丸まで出るとなると……恐らくこの国の波乱は止まらないでしょう」
アメリアは真剣な表情で今後の事を推測する中、メルトが慌てながら駆け付けてきた。まさかロイヤルグリズリーズが壊滅してしまったのは、想定外としか思えないからだ。
「メルト王子!」
「すまないが、シナモンとジャミラは何処にいるのか教えてくれないか?」
「それならあそこにおられます!」
住民の一人が指差す方を見ると、シナモンとジャミラは治療を終えてその場をトボトボと歩いていた。それを見たメルトは彼女達の元に駆け寄り、無事である事に安堵していた。
「メルト様……私達……」
「もういい。お前達が無事であっただけでも良い。これ以上の犠牲は勘弁して欲しい。それだけだ……」
シナモンが代表して謝罪しようとするが、メルトは彼女の身体に顔を埋めながら泣いていた。何よりも仲間が戻ってきた事が、とても嬉しかったのだろう。
「メルト、仲間の事を心配していたのね……」
「ええ……ですが……」
アメリアがこの光景に目に涙を浮かべていて、レジーも同意していたが……彼が指差す方には王国の兵士達が姿を現したのだ。どうやらこの様子だと、かなり厳しい表情をしている。
「メルト様、陛下から召集命令です。なお、アメリア様も来てくださる様に」
「ああ……」
「はい。私達も参ります」
メルト、シナモン、ジャミラ、アメリア、レジーの五人が兵士達と共に連行される中、アメリアがある事に気付いて足を止める。
「でしたら、こちらの方達も連れて宜しいでしょうか?私を助けてくれた人達です」
アメリアは零夜達を指さしながら説明し、彼等も連れて行く様説得する。それを見た兵士達は確認したと同時に、零夜達に接近する。
「姫様を助けてくれたことに感謝する。案内するから付いてきてくれ」
「はい」
兵士の説明に零夜達も同意し、そのまま城へと向かい始めた。住民達がこの様子にざわついてしまい、特にメルトを見ながらヒソヒソと話をしていた。
「なんか住民達が怪しいが……」
零夜がこの様子に疑問に感じる中、兵士の一人が彼等に対して説明をしようとする。どうやら深刻な様子である事に違いないからだ。
「どうやらメルト様は部下の多くを失ってしまった事で、その責任を取らされる事になるだろう。だが、こうなった以上は俺達でもどうする事もできないからな……」
兵士の説明を聞いた零夜達は何も言えず、そのまま頷くしかなかった。ここまで任務に失敗するとなると、上司の責任としてその罪を償わなければならない。今回の件も同様であり、メルトは多くの部下を失ってしまった責任を取らなければならないのだ。
更に今回の件はそれだけではない。ヒーローズエイトを目指すには、選ばれし仲間が全員生きている事を条件としている。しかし、一人でも死んでしまえばその道は閉ざされる事になり、神は責任を取ってその戦いから離脱されてしまうのだ。
(本当に哀れとしか思えないぜ……メルトだけでなく、ロイヤルグリズリーズも……)
零夜は心から思いながら、ロイヤルグリズリーズとメルトを哀れな目で見るしかなかった。そして、非情なルールがメルト達を待ち受けている事を、この時の零夜達はまだ知らなかったのだった。
「ここがヴァルムント王国……まるで北国だな……」
零夜は王国の様子を見ながら辺りを見回していて、倫子達もその様子に驚きを隠せずにいた。この様な国に行くのは初めてで、見た事のない物ばかりである。
現実世界でも海外に行く事は殆どなく、国内での活動がメインとなっている。何時になったら国外に行けるのか気になるところだ。
「ええ。ヴァルムント王国は寒い国の為、魚やお肉を食べる習慣が流行っています。其の為、野菜はビニールハウスで育てていますので」
「そうなんだ……寒冷だからこそ、風習や文化も違うんだね……」
アメリアの説明に倫子が納得していたその時、何処からかざわつきが聞こえ始める。住民達が大型水晶スクリーンの前に立っていて、とある映像を見ていたのだ。
「何かあったのかしら?」
「さあ……」
突然の展開にヒカリ達が疑問に感じる中、映像に全員が視線を移す。それはロイヤルグリズリーズが全滅したとの速報であり、六人が谷底に落ちて死亡という結果になったのだ。だが、シナモンとジャミラは峰打ちで生存していた為、救助隊に運ばれているとの事だ。
「零夜……もしかして……」
「ああ……あれは死亡事故じゃない。紅蓮丸が動き出したんだ!」
ミミは零夜に耳打ちし、彼は声を上げながら推測する。その様子に誰もが気になる表情で零夜達に視線を移し、一気に注目の的となってしまったのだ。この事態に零夜達は驚きを隠せずにいたが、すぐに冷静に対処して住民達に視線を移す。
「なんでそんな事を言えるんだ?」
「今回、谷底に落ちたのは不慮の事故なんかじゃない。死体が映像で映されていたが、首を切断、斬り裂かれて死亡、それに刀での傷がある。普通に考えればマギアスの仕業ではない事は明らかだ」
零夜の説明に人々は再びざわついてしまい、中にはガタガタと震える者もいた。あのロイヤルグリズリーズが別の誰かにやられたとなると、とんでもない展開になると考えた方が良いだろう。
「マジなのか……じゃあ、このまま放っておけば……」
「明らかに俺達おしまいとなりそうだ……」
「私、まだ死にたくない!」
人々は混乱しながらパニック状態となってしまい、中には発狂する者もいた。仕舞にはブレイクダンス、壁に頭を打ち付けたり、木に登って鼻で啄木鳥の様に木をつついたり、逆立ちしながら逆走するバカも続出してしまった。
これには零夜達も唖然としてしまい、ただ呆れるしかなかった。
「ヴァルムントって……混乱するとこんな人が続出するのか?」
「普通はしません。ですが、マギアスだけでなく紅蓮丸まで出るとなると……恐らくこの国の波乱は止まらないでしょう」
アメリアは真剣な表情で今後の事を推測する中、メルトが慌てながら駆け付けてきた。まさかロイヤルグリズリーズが壊滅してしまったのは、想定外としか思えないからだ。
「メルト王子!」
「すまないが、シナモンとジャミラは何処にいるのか教えてくれないか?」
「それならあそこにおられます!」
住民の一人が指差す方を見ると、シナモンとジャミラは治療を終えてその場をトボトボと歩いていた。それを見たメルトは彼女達の元に駆け寄り、無事である事に安堵していた。
「メルト様……私達……」
「もういい。お前達が無事であっただけでも良い。これ以上の犠牲は勘弁して欲しい。それだけだ……」
シナモンが代表して謝罪しようとするが、メルトは彼女の身体に顔を埋めながら泣いていた。何よりも仲間が戻ってきた事が、とても嬉しかったのだろう。
「メルト、仲間の事を心配していたのね……」
「ええ……ですが……」
アメリアがこの光景に目に涙を浮かべていて、レジーも同意していたが……彼が指差す方には王国の兵士達が姿を現したのだ。どうやらこの様子だと、かなり厳しい表情をしている。
「メルト様、陛下から召集命令です。なお、アメリア様も来てくださる様に」
「ああ……」
「はい。私達も参ります」
メルト、シナモン、ジャミラ、アメリア、レジーの五人が兵士達と共に連行される中、アメリアがある事に気付いて足を止める。
「でしたら、こちらの方達も連れて宜しいでしょうか?私を助けてくれた人達です」
アメリアは零夜達を指さしながら説明し、彼等も連れて行く様説得する。それを見た兵士達は確認したと同時に、零夜達に接近する。
「姫様を助けてくれたことに感謝する。案内するから付いてきてくれ」
「はい」
兵士の説明に零夜達も同意し、そのまま城へと向かい始めた。住民達がこの様子にざわついてしまい、特にメルトを見ながらヒソヒソと話をしていた。
「なんか住民達が怪しいが……」
零夜がこの様子に疑問に感じる中、兵士の一人が彼等に対して説明をしようとする。どうやら深刻な様子である事に違いないからだ。
「どうやらメルト様は部下の多くを失ってしまった事で、その責任を取らされる事になるだろう。だが、こうなった以上は俺達でもどうする事もできないからな……」
兵士の説明を聞いた零夜達は何も言えず、そのまま頷くしかなかった。ここまで任務に失敗するとなると、上司の責任としてその罪を償わなければならない。今回の件も同様であり、メルトは多くの部下を失ってしまった責任を取らなければならないのだ。
更に今回の件はそれだけではない。ヒーローズエイトを目指すには、選ばれし仲間が全員生きている事を条件としている。しかし、一人でも死んでしまえばその道は閉ざされる事になり、神は責任を取ってその戦いから離脱されてしまうのだ。
(本当に哀れとしか思えないぜ……メルトだけでなく、ロイヤルグリズリーズも……)
零夜は心から思いながら、ロイヤルグリズリーズとメルトを哀れな目で見るしかなかった。そして、非情なルールがメルト達を待ち受けている事を、この時の零夜達はまだ知らなかったのだった。
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