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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百四十話 バーサークの第2形態

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 バーサークによって衣装を変えられる羽目になったヒカリは、真剣な表情で魔術を唱え始める。すると上空に光の槍が次々と召喚され、そのままバーサークに狙いを定める。

「喰らいなさい!ホーリーランス!」
「あがっ!」

 光の槍がバーサークに襲い掛かり、彼の両肩と脳天に直撃する。特に脳天に光の槍をを喰らってしまったとなると、その効果は抜群と言えるだろう。
 バーサークはフラフラ状態になってしまい、思わず片膝を地面についてしまう。

「フラフラになっておる!今がチャンスじゃ!」

 そこに天狐が駆け出したと同時に、両手から炎を出し始める。炎は前よりも大きくなり、温度も上がっている。火傷だけでは済まされない威力を持っているのだ。

「こいつは強烈じゃ!炎呪曼荼羅えんじゅまんだら!」
「ぐわああああ!」

 炎の魔術はバーサークを焦がし始め、大ダメージを与える事に成功する。

「私も負けられないわ!ここで立ち向かわなければ、女が廃る!」

 それを見たセリアは柄の長い斧を両手で構え、炎を纏わせながら跳躍した。

「この一撃は重いわよ!フレイムアックス!」
「あがっ!」

 縦一閃の炎の斧の斬撃が、バーサークの顔面を切り裂く事に成功。そのまま結合崩壊を起こさせ、追加のダメージも与えたのだ。

「ほう。炎を使っての攻撃は考えたのう」
「斧の使い手はこんな者じゃないからね。舐めてると痛い目に遭うわよ?」

 セリアがバーサークにウインクしながら挑発したその時、彼が怒りで活性化する。散々馬鹿にされた怒りはとても大きく、そのままセリアに襲い掛かってきた。

「馬鹿にすんじゃねえ!」
「おっと!」

 セリアが宙回転しながら、間一髪でバーサークのクロー攻撃を回避。そのまま上空からアルビダが銃を構えていて、バーサークに狙いを定める。

「私もいる事を忘れるな!ダイナマイトショット!」

 銃から放たれた弾丸は、BB弾に突如変化。そのままバーサークの頭の角に直撃してしまい、爆発と同時に見事折る事に成功したのだ。

「しまった!角が!」
「よし!命中!」

 アルビダが笑顔で指を鳴らした直後、突如バーサークの身体から紫色の煙が出始める。その煙を感じ取ったアミリスは、冷や汗を流しながら危機感を感じていた。

「アミリス、あの煙分かるの?」
「気を付けて!バーサークは新たな姿に変わるわ!追い詰められた以上、彼は進化していくわ!」
「「「ええっ!?」」」

 アミリスの忠告に全員が驚いたその時、バーサークの身体に煙が纏わり始めた。身体は銀色の鎧が装着され、折れていた角や顔の傷も元に戻る。どうやらこの煙は進化だけでなく、傷まで回復する厄介な煙と言えるだろう。

「鎧を纏っただけでなく、体力や傷を全快に回復した様だ!」
「こいつは厄介にも程があるな!」
「それだけじゃない!」
「「「?」」」

 するとバーサークの鎧の肩部分からミサイルランチャーの様な物が飛び出し、更には腕部分にレーザーガンが装備される。まさにSFの武器其の物だが、これに零夜達は唖然としてしまう。

「待て待て待て待て!世界観をぶち壊す気か!」 
「ごちゃごちゃうるせー!勝つ為には何でもありなんだよ!」
「うわっ!話を聞けよ!」

 零夜のツッコミにバーサークが叫んだと同時に、肩部分からミサイルが次々と発射される。ミサイルはそのまま零夜達に襲い掛かるが、ルリカ、ヒカリ、マリー、ポーラが前に出て盾を構え始める。

「「「カウンターシールド!」」」

 次々とミサイルの雨あられをカウンターシールドで弾き返し、そのままバーサークに直撃させる。しかし、ミサイルは彼には効果なく、ただ身体を掻いていたのだ。

「全然効いてない……」
「まあ、彼自身の事だから当然の事だけど……」
「油断は禁物だ!」
「「「うわっ!」」」

 コーネリアが苦笑いしながら頬を掻いたその時、バーサークの腕部分のレーザーガンが発射される。レーザーガンは地面に当たるが、当たった跡には煙付きの焦げ目の跡が付いていたのだ。

(レーザーガンとミサイルが厄介となると、この戦いは長期戦の傾向になってしまう。このままだとまずいかも知れない。となると……ここはこの策略で!)

 日和は心の中でこの状況を真剣に考え、すぐに全員に対して視線を移し始める。

「皆さん、怯んではダメです!確かにバーサークは手強いですが、倒す方法が一つあります!あの武装を破壊するしか方法はありません!」

 日和がバーサークを指さしながら全員に声を掛け、全員が敵に視線を移す。ミサイルランチャーとレーザーガンを破壊すれば勝機はあるが、どう破壊するのかが問題と言えるだろう。
 
「破壊するってどうやって!?いくらなんでも不可能としか言えないし、どう破壊するのか分からないわ」
「強烈な一撃を放てば倒す事ができるわ。カギとなるのは武器の視点。何処かにある筈よ!」

 コーネリアが日和に気になる事を質問し、それに彼女は冷静に答える。ミサイルランチャーとレーザーガンは視点となる物に支えられている為、持たなくても攻撃する事が可能なのだ。それを破壊するにはその支店を破壊する事がカギとなるだろう。

「ここは私が行くわ!今のアドバイスを聞いて支点の位置が分かったから!」
「セリアさん、お願いします!」
「任せなさい!ドワーフを舐めると痛いわよ!」

 セリアは斧を構えながら素早い動きで駆け出し、バーサークの身体を登り始める。ドワーフ族でありながらその素早さはとても高く、まさにバランスファイター其の物である。

「貴様!勝手に触るな!」
「おっと!嫌よ!」

 バーサークは腕を振り回しながらセリアを振り払おうとするが、彼女はジャンプしながら回避していた。そのまま斧に風のオーラを纏わせ、強烈な一撃を放とうとする。

「支点を破壊すればこっちの物!ウインドアックス!」

 風の斬撃と同時に、バーサークの肩の部分にある左ランチャーの支点を切り裂く事に成功。左ランチャーはそのまま外れてしまい、地面に落ちてしまった。

「よくやった、セリア!右は私が行く!」

 風子は村雨を構えながら跳躍し、右ランチャーの視点に狙いを定める。そのまま村雨の刀身に水のオーラを纏わせ、一撃必殺の構えで斬り裂こうとしていた。

水神斬すいじんざん!」

 強烈な水神斬が右ランチャーの視点を斬り裂き、そのまま地面に落下してしまう。これでミサイルは撃てなくなり、弱体化してしまったのだ。

「ランチャーが落とされた……なら、レーザーガンで破壊してやる!」

 バーサークの両腕に装着されているレーザーガンから光線が発射され、零夜達は次々と攻撃を回避していく。すると、レーザーガンのリロードランプが点滅し、バーサークは仕方がなくリロードボタンを押す事になった。
 レーザーガンや銃は弾切れやエネルギー切れとなると、補充や充電などのリロードが必須となる。其の為、動き出すには時間がかかってしまうのだ。
 
「それなら私に任せろ!奴がリロードしているのなら、好都合だ!チェーンストライク!」

 アルビダは魔術で二本のチェーンを放出し、そのままレーザーガンの銃口に向かって突撃していく。しかもチェーンの先には小さな錨があり、金と銀のデザインをしていた。
 そのまま小さな錨がレーザーガンの銃口に入り、アルビダはチャンスとばかりに指を鳴らそうとする。

「決まりだ!」

 すると二つの小さな錨が大きくなり始め、そのままレーザーガンを内部崩壊して爆発させてしまった。錨が大きくなる事は想定外であり、それに耐え切れずに破壊されたのは言うまでもないだろう。

「しまった!レーザーガンが破壊された!そんな馬鹿な事って……」

 バーサークはレーザーガンまで破壊された事に動揺してしまい、残るは身に纏っている鎧となってしまった。余裕の展開からピンチの展開となってしまい、バーサークは大量の冷や汗を流してしまったのだった。
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