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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百三十三話 暴走のベルセルク

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 アルバータドラゴンの子供が産まれた事で、皆がその赤ん坊に視線を移す。それはまだ可愛くて幼いが、背中には翼が生えているのだ。

「これが……アルバータドラゴンの赤ちゃん?」
「なんだか可愛らしくて癒されます……」
「うん……ドラゴンの赤ちゃんってこんな姿なんだね……実際は大きいのかと思っていたけど」

 アルバータドラゴンの赤ちゃんを見た日和、ジェニー、ヒカリが感想を述べていて、それに皆も同感する。
 ドラゴンの赤ん坊は人間の肩に乗るぐらいの大きさとなっていて、成長する毎に先程の大きさになる仕組みとなっている。後は育て方でどう成長するかだが、親は誰なのか気になるだろう。

「あ、目が覚めた?」
「キュル?」

 アルバータドラゴンの赤ん坊は倫子に視線を移し、そのまま彼女の胸に抱き着く。この様子だと倫子を親と認識しているみたいだ。
 産まれた子供は初めて見た人に視線を合わすと、その人を親として認識する様になる。それをインプリンティングと呼ばれているのだ。今回の件についても、倫子を中心にアルバータドラゴンの赤ん坊が産まれる瞬間を見ていた。その結果、彼女が親として認識される様になったのである。

「すっかり藍原さんに懐いちゃいましたね」
「うん。元はと言えば私の責任だから、私が面倒見て育てないとね」

 日和と倫子は苦笑いしながらも、産まれたアルバータドラゴンの赤ん坊の面倒を見る事に。倫子が保護者となっていて、日和はサポートを担当となるだろう。

「名前については……ガブがピッタリかもね」
「倫子さん、どうせならいい名前の方が合うんじゃないですか。例えばゼロ、ストライク、アンセムとか」

 倫子の名付けに零夜が指摘し、それに皆も納得する。確かにドラゴンに対してこんな名前を付けられたら、恥ずかしさで笑われるとしか思えないだろう。それに倫子も同感し、すぐに名前を考え始める。

「そうなると……これはどうかな?エアロ。格好良い名前でしょ?」
「確かにそれはありね。それにこの子、男の子だし」

 倫子の名前の提案にアミリス達も同意。更に彼女はドラゴンの赤ん坊が男の子だという事を確認していて、それに皆が驚きを隠せずにいたのだ。

「そうだったんだ……てっきり女の子だと……」
「まあ、確認しなければ分からない事もありますからね。残るはベルセルクとヒューラーの二人だけ。取り敢えずは休みましょう」
「そうだな……今は疲れを癒やす為に休むとするか……あちこち身体が痛いし」
「ですね」

 ミミの提案に全員が頷き、彼女達は疲れを癒やす為にエルフの森に戻り始めた。しかし、油断は禁物。ヒューラーとベルセルクがいる限りは、エルフの森の危機が終わる事はないだろう。



「失敗したか……選ばれし戦士達を甘く見ていたな」

 アルフェリア支部基地にある研究室では、ヒューラーが苦虫を噛み潰したような表情をしていた。アルバータドラゴンはソニア達によって消滅してしまい、兵士達も金貨にされてしまった。捕獲作戦が失敗に終わった以上、融合する事はできないだろう。

「くそっ!忌々しいにも程がある!こうなったらベルセルクだけでも強化せねば!全てはアークスレイヤーの為にも!」

 ヒューラーは怒りの状態で目の前にいるベルセルクを強化しようとしたその時、ベルセルクが自らの力で檻を破壊してしまった。鋼鉄の檻を破壊できるのは規格外であり、ベルセルクはかなりの怪力と言えるだろう。

「お、檻が……破壊された……いくらなんでもあり得ないじゃないか……」

 ヒューラーが驚きを隠せずに呆然とする中、ベルセルクは彼を片手で身体ごと掴んで持ち上げ始めた。

「おい……誰に対してこんな仕打ちしてんだテメェは……あ゙?」
「し、喋った!?」

 ベルセルクは自らの声で喋っていて、それにヒューラーは驚きを隠せずにいた。今までは喋っていなかったが、ヒューラーがベルセルクを復活させた事でようやく喋る事ができたのだろう。

「お前がここのボスであろうがなかろうが、俺は俺のやりたいようにやるんだよ。文句あっか?」
「大有りだ!貴様はこの私が復活したんだぞ!反抗するのか!」

 ヒューラーはベルセルクに握りつぶされながらも反論するが、徐々に体の骨が破壊されようとしていた。ベルセルクは大型モンスターなので握力がとても高く、下手したら基地や村を破壊してしまうパワーも持っているのだ。下手に彼に反抗すれば、最後に待ち受けているのは悲惨な運命になるだろう。

「そうだ……お前なんかに復活されなくても……俺は俺のやりたいようにやるだけだ!永久に死んでもらうぜ!」
「ぐわああああああ!!こ、こんな奴に……私が死ぬなんて……」

 ヒューラーはベルセルクに身体をにぎりつぶされてしまい、悲鳴を上げながらダメージを受けてしまう。そのまま彼は頭をガクッと下げながら死んでしまい、大量の金貨になってしまったのだ。

「ヒューラー様が……」
「やられた……」

 兵士達はヒューラーの死に呆然としてしまい、中には持っていた武器を落としてしまっている者もいた。あまりの残酷な展開に頭が追いつけなかったのだろう。
 するとベルセルクは呆然としている兵士達に視線を移し、そのまま彼等に襲い掛かってきた。

「次はテメェ等だ!」
「うげっ!」
「ぐはっ!」

 ベルセルクは兵士達を次々とパンチで殴り飛ばし、彼等は壁に激突して金貨になってしまった。この光景に兵士達は全力で逃げてしまうが、次々とベルセルクに捕まって握り潰されてしまう。その内の一人は見事脱出したと同時に、鍵を持ちながらとある部屋へと向かい出す。

(何が何でも奴隷だけは逃さなくては!)

 兵士は奴隷のいる部屋に辿り着き、急いで鍵を開け始める。そのまま扉を開けると、部屋の中には五十人の奴隷達がいた。どれも見事で美人ばかりだが、兵士が来た事に驚きを隠せずにいた。

「全員逃げるぞ!化物が来る!」
「「「化物!?」」」

 兵士からの命令に奴隷達は一斉に驚きを隠せず、彼は彼女達の足元に強制転移魔法を発動させる。突然の展開に奴隷達は驚きを隠せずにいたが、兵士は真剣に魔術を唱えていたのだ。

「エルフの森に選ばれし戦士達がいる!彼等がお前達を助けてくれるぞ!」
「分かったわ!けど、なんで助けてくれるの?」

 奴隷達は兵士からの命令に頷く中、一人の奴隷が気になる事を質問する。敵なのになんで助けてくれるのか気になっているのは勿論、兵士の突然の行動は予想外と実感したからだ。
 それを聞いた兵士はニッコリと微笑む。

「ただお前達を助けたかった。それだけさ」

 兵士がニッコリと微笑んだ直後、奴隷達はその場から強制転移されてしまった。この部屋には兵士一人だけとなってしまい、彼は寂しそうな表情を浮かべながらその場から移動したのだった……
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